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香る、橙  作者: 真砂木
3/12

3話


「お前またソレかよ?」


 伊藤が素うどんを手に戻ってきた涼介に言った。

「美味いし、早い」

 涼介がそう言うと、「毎回よく飽きねーな、俺ムリ」と伊藤は考えられないとでも言うように首を振った。


 涼介にとってはごちそうの素うどんを否定するような態度には心外だったが、頂きます、と手をあわせた伊藤に続くように涼介と与恵も食べ始めた。


 しみわたる出汁に、涼介は温泉に浸かった様な声を出した。


 それに伊藤が「じじいかよ」

と言うので、「飲んでみろ」と涼介はお前も同じ声が出るから、と前置きして素うどんを伊藤の方まで滑らせた。


 伊藤は何も言わず目の前に来た器に口を付けてズズっと音をたてて飲むと、「ああ゛あ゛」と涼介の真似をした。

「ほらな」

「いや、流れだろ」

「うまかっただろ?」

「…うん」

 素直に認めると伊藤はさりげなく与恵の方に器を寄せた。

「……」

 与恵も目の前に来たそれを一口飲んで、伊藤と同じような声を出した。

「…じじいかよ」

 今度は涼介がつぶやいた。

「「お前がいうな」」

 伊藤と与恵が同時に突っ込む。


 トリオでコントを済ませると、黙々とそれぞれ食べ始め、あっという間に完食した。


 トレーを返却しようと立ち上がった与恵が確認するように椅子にふんぞり返る伊藤に言った。


「お前あれ出したか?レポート」

「あれ明後日までだろ」

「…これを見ろ」


 提出期限が提示されたスマホの画面を伊藤に見せた。


与恵のスマホを手に取ると咥えていた爪楊枝をプッと吐き出して、リュックを背負いスマホをやや乱暴に突っ返すと「早く言えよアホ恵!」となぜか与恵に当たりながら去って行った。


「…アホはお前だ」


 走って行く伊藤の後ろ姿にぼそっと与恵は言った。


 この二人は確か幼馴染だったか、高校が同じだったか忘れたが、涼介より付き合いが長い。


「仲いーな」

「よくねえよ。くされ縁なだけ」

「いーな」

「ヤメロ」

 雑談も程々に与恵は課題が残ってるとかで、もう行くと言うので涼介も図書館へ向かうことにした。

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