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香る、橙  作者: 真砂木
17/17

17話

 「で、結局仲直りしたと」

 「おかげさまで……?」

 「つまんね」

 「おいお前な、」


 涼介は与恵と伊藤に挟まれて報告がてら、関係を無事修復出来た事を話していた。


 咎める様な顔で与恵が伊藤の発言に注意しようとした。

 「人としてそういう事を」

 「出ていかねーんだろ、弟」

 「おう」

 「聴けよ」

 「あ?何だよ、ナンカ言ったか…?聞こえなかったな」

 「ウソつくな」

 「うっさいんだよ、いちいち」

 「どこがだ、大体――」


 友人たちの言い合いが始まる。いつもの事なので涼介は傍観を決め込む。

 じゃれる二人の間で涼介は笑一太とのやりとりを思い出す。


 あのあと、改めて「これからも世話になる…けど、いいですか」と不器用に申し出てきた笑一太に、涼介は「おれも、ふつつかものだけど、よろしく」と言い合いなんとか二人の仲はもとに戻った。

 ご飯を時々一緒にとるという決まりをとりあえず作った涼介。

 …さっそく明日俺が飯つくる当番だけど何作ろ。そんなレパートリーないし、そもそもえーたって何でも食えるのかな

 …今日訊いてみるか

 

 物思いにふけっていると「涼介」と与恵に名を呼ばれた。


 「そういば…なんって言ったか、あいつ…高梨子。休んでたお前の事訊きに来てたぞ俺等のとこに」


 「そうなんだ…」


 …そういえば、高梨子からもお大事にって来てたっけ

 と涼介が思い出していると与恵が言った。


 「お前ってアイツと仲良かったんだな…確かどこかの大会社のご子息だっけ?」

 

 「え、高梨子が…?」

 …初耳だ


 「俺はそんな詳しくないけど結構知ってるヤツ多いぞ…同じ講義取ってるヤツが高級車で送り迎えされてるとこ見たっつってたし…ってか涼介」


 「…知らなかった」


 …今のを聞いて逆に納得した。時折垣間見える高梨子の落ち着いた印象。あれは身に付いた品の良さだ。

 …それがにじみ出てたのか。

 …たまに信じられないくらいキャピキャピしてるけど…


 …高梨子とは、見かけたら講義以外でも喋る。けどいつも課題内容とか、高梨子が振ってくる話題でそんなこと話したことなかった。


 「なんだ…仲良くしてると思ってたのは涼介だけか…」


 伊藤の大きなボヤキに与恵が突っ込む。


 「オイ、お前な…。…そう言うお前も全然知らなかったよな高梨子の事」

 

 そんな会話を聞き流しながら涼介はぼんやりと考えていた。

 正直知ろうと知るまいとどちらでもいい。しかし涼介以外、割と皆知っていることのようだ。

 情報に対しての自分の無沈着ぶりに涼介は危機感を覚えた。


 それに、今の伊藤の言葉はほんの少し突き刺さった。

 高梨子とはこの間遊んだばかりだし結構仲良くなったつもりでいた。

 …そう思ってるのは俺だけかも


 伊藤と目が合う。

 がすぐに目を背けられる。

 

 ?………というか

 「………お前は与恵と仲いいよな」

 …当たり前だけど

 ぼそりと言うと聴き取れなかった伊藤が眉を上げた。

 「あ?今なんかいったか…?」


 「何も」


 「涼介気にすんな。高梨子も心配だからわざわざ俺達の所に聴きに来たんだろ。…コイツ…涼介が知らないヤツと知らない内に仲良くなってて気に食わないだけだから」


 「勝手なこと言ってんなよ」


 「図星だろ」


 …そうだったんだ…

 「ごめん、言ってなくて」


 涼介が謝ると、伊藤が心外だとでも言うようにやや真顔で言い放った。

 「はっ?真に受けんなよ、アホ恵の言う事なんて」

 

 そんな伊藤に対して与恵はしょうがなさそうに言う。

 「聞いてなくて嫌だったんだろ」


 「アホらし、なんで俺がそんな事で拗ねなきゃなんねえんだよ」

 「ほう、拗ねてたのか」

 「…ごめん…。スネないで」

 「…ッ、…!っ…ダル、寝るわ」


 崩れた伊藤の顔が一瞬怒ったように紅く染まる。しかしさすがに二人相手は分が悪いと思ったのか、伊藤はバリケードを作るように腕の中へと顔を埋めた。

 そんな伊藤を「寝るなよ、なあ」と与恵と一緒に揺さぶる。最終的に「ウッぜえエエ…!」とキレた伊藤に、涼介は今度高梨子紹介していい?と訊いた。

 

 この二人に高梨子を引き合わせたらどうなるだろうか。どうなるのか見てみたい、気が合えば仲良くなるだろうし…なってほしいと涼介は思っていた。


 …まずは高梨子にも訊かないとだよな、と涼介は「おう…」と言った伊藤に与恵と笑みを浮かべながらそんな事を考えていた。

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