1/4
プロローグ
「……ねぇ……お願いがあるの……」
弱々しく、か細い声が暗い部屋の中で響いた。
その声を知っている少女はその声の主のそばへと近寄った。
その声の主は痩せこけた女性だった。
女性は少女が近くに来たことを確認すると、再びか細く響く声で言葉を紡いだ。
「これを……預かっててくれない……?」
持ち上げて見せたのは何かが嵌っていたであろう、丸い窪みのあるペンダントだった。少女はそれを受け取り、小さく、しかし力ずよく頷く。
「……クリムをお願いね……」
そして女性は力なく笑うと、静かに、そして少女以外に知られることなく息を引き取った。
女性の体温が下がっていく中、少女は受け取ったペンダントを強く握り締め、声を押し殺し、涙を流した。