第68話 実力の違い
第二階層。
討伐隊の面々は、第一階層より速いペースで進んでいた。
《超越級》よりも実力がある、という事実を突き付けながら。
この事実に、《超越級》の面々は少なからずショックを受けていた。
まずは《竜槍穿》の斥候エリーとリュートが先行し、分かれ道があったら走りながら石を投げて、エリーのスキル《エコーロケート》を発動させる。
しかもこの二人は見事な程息がぴったりで、目線だけで分かれ道のどちらに石を投げるかを決めていた。
その為、一度も足を止める事無く、分かれ道であろうと迷わず進めた。
だが、リュートと目線が合う度に頬が赤くなっているエリーであった。
戦闘においても非常に効率的だ。
ショウマが提案した作戦で、先に魔法使いが広範囲魔法を使う。
広い場所に出ると、百匹以上いるオークに対して先制で魔法を使う。
最初はウォーバキン。
「『風の精霊よ、安らげる風を荒ぶる者に届けたまえ』、行くぜ! 《極上の安らぎの風》」
ウォーバキンが唱えた《極上の安らぎの風》は、複数の相手の心を落ち着かせ、そして眠らせるという魔法だ。
魔力の消費も少ない為、集団戦においては大活躍する魔法だ。
ただし、魔物の中にはこういった状態異常に強い者も存在しているので、果たして効果はあるのだろうか、と若干不安に感じていた。
しかしそんな心配を他所に、オーク全員が眠りに落ちた。
魔物が寝た事を確認すると、魔法使い以外の面々が前線に飛び出してくる。
ハリーは《ステイタス》で強化された腕力をフルに活かし、大剣を横に薙いで複数の敵を切り裂き絶命させる。
役割が補助役であるニーナも前線に出て、手に持ったメイスで頭を叩き、撲殺している。
エリーはダガーを使って首を掻き斬り、派手な血の華を咲かせて殺していた。
そしてヨシュアは、後方待機である。
誰一人として《ステイタス》を持っていないパーティ《鮮血の牙》は、足手纏いどころか技量で活躍をしていた。
ウォーバキンは剣を巧みに操り、効率的にオークの首を跳ねていく。
リュートやハリー達のパーティ、ショウマ達のパーティとの合同訓練のおかげで、自身に足りないものを理解したのだ。そこからはひたすら訓練をして技巧を身に付けつつある。
カルラのクロスボウによる射撃も的確だ。
リュートと訓練を行った事により、命中率が遥かに上がったのである。
だが、積極的に掃討には参加しない。
クロスボウの矢を温存する為と、仲間が怪我をしていないかを判断する為であった。
一線後ろに引き、常に仲間の安全を考えて指示するのが、補助役である彼女の役割だ。
盾役のガイは、大きな盾の角をオークの頭にめり込ませて殺していた。
寡黙な彼は、黙々と作業するかのようにオークを排除する様は、まるでホラー映画に出てくる殺人鬼そのものだった。
白銀の鎧が、オークの返り血によって赤く染まっていく。
そして以前まで戦闘力皆無であった回復役のリゥムも、スリングショットによる遠距離射撃を行えるようになっていた。
打ち出す弾は四方手裏剣で、スリングショットも強力な反発力を備えた武器だ。
しかし、リゥムの腕力では長距離射撃が行えないので、今は至近距離でスリングショットを放っている。
四方手裏剣が眉間に深く刺さりオークを絶命させ、手裏剣を引き抜いて再利用していた。
最後にレイリ。
彼女の刀捌きは芸術的であった。
レイリは歩きながら、剣舞と思わせる美しい動作で刀を振るう。
すると、彼女がオークの横を通って一拍置くと、オークの首がずれてゆっくりと落ちるのだ。
歩きながらまるで抵抗がないように思わせる程、骨も両断して首を斬っていたのだ。
美しい。
後方に控えているチエとヨシュアは、彼女の所作にそのような感想を覚えていた。
《ジャパニーズ》のメンバーも負けてはいない。
戦う事もない平和な世界から、いきなり命のやり取りが当たり前の異世界に飛ばされた彼等は、生き延びる為に《ステイタス》の恩恵をフル活用していた。
ショウマは《縮地》を使って、目にも止まらぬ速さでオークを屠っていく。
《剣豪》のスキルの恩恵もあり、彼の剣技は一流のそれだ。
次々とオークは、ショウマの剣によって眠りに付いたまま死ぬ。
斬っては《縮地》を使って次へ、それを繰り返す。
《念動力》を持っているリョウコは、地面に落ちている石を自身の周囲に漂わせ、敵の頭目掛けて射出する。
彼女の念動力で目にも止まらぬ速さで飛ぶ石は、オークの頭蓋骨を軽々と破壊し貫通する。
「おおおおおお、やっぱファンネルだよな、格好いいなぁ!!」
ショウマのテンションが上がる。
ファンネルが何の事を指すのかわからないが、好きな人に褒められて満更でもない様子だ。
彼女は一歩もその場から動かず、石を飛ばして敵を確実に屠っていた。
そしてタツオミ。
本来は彼も非戦闘員だったのだが、今は剣とスモールシールドを持って前線に出ていた。
《剣豪》スキルのおかげで一流の剣士となっているショウマに訓練をしてもらい、何とか戦えるレベルにまで剣術を上達させたタツオミは、まだ不慣れさはあるものの一振りで敵を殺せていた。
訓練の成果は、間違いなく出ていた。
剣の動作はショウマのそれとそっくりで、彼を師匠として見様見真似で型を覚えたのだった。
チエは後方待機中である。
そして最後にリュート。
リュートは自作した粗末な木の矢で、次々と敵を射殺す。
さも当たり前のように次々に矢を射っており、まさに屠殺場の作業員みたいであった。
当然ながら彼の矢は百発百中。
しかも全て眉間に刺さって脳を貫いていた。
近接が得意なメンバーが手前側の敵を処理していたので、リュートは奥から排除をしていく。
全てを排除した後、またエリーとリュートを先頭にして走り出す。
次の接敵の際、今度はチエが先頭に出て魔法を放つ。
「『灼熱の息吹よ、立ちはだかる愚か者に、汝の力を思い知らせよ』 行くよ、《灼熱の大息吹》!!」
チエが放った《灼熱の大息吹》は、密集している敵の中心部から炎の竜巻が発生する。
これは《灼熱の貴公子 ラ・バラディク=ディル》の力を借りたもので、非常に燃費が良くて威力も十分な広範囲魔法だ。
弱点としては発生した炎の竜巻から離れれば離れる程、威力は下がっていく点だろうか。
それでも半分のオークは焼き殺せていたし、生き延びたとしても大なり小なり火傷を負って悶えていた。
後は先程と同様に、火傷の痛みに悶えて攻撃してこないオークを屠るだけであった。
次の接敵では、ヨシュアが前に出る。
「『さあさあ遊べや遊べ。立ちはだかる者は汝の遊び相手ぞ、命尽きるまで遊び尽くせ』、さぁて行っておいで! 《風の子供の大虐殺》!」
ヨシュアは《無垢なる風の子 レイ・ド=バルシュ》の力を借りた《風の子供の大虐殺》を放った。
この魔法は見えない空気の刃によって、敵を切り裂いていく魔法だ。
しかし致命的な弱点があり、この魔法の威力は全て《無垢なる風の子 レイ・ド=バルシュ》の気分次第であり、全員を屠ってくれる場合もあるが、最悪の場合は敵に適当に切り傷を負わせておしまい、という時もあるのだ。
だが、流石にここまで敵が密集していると効果は絶大で、魔法で死ぬオークもいれば、大きく膨れた腹を切り裂かれて内臓が漏れ出て苦しんでいるオークもいた。
結果、敵全員が何らかの大怪我を負っていたのだ。
これを目の当たりにした《超越級》達は、流石に《超越級》以外の彼等の実力を認めざるを得なかった。
ある者は悔しさから涙するが、プライドが高い者は未だに心の中で認めていなかった。
ここで改心していればよかったのだが、肥大したプライドという物は簡単に捨てられない。
彼等 《超越級》には、この先悲劇しか待っていなかったのだった。
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