男女平等ディストピア
フェミニストの方々の活躍により、日本は世界で最も男女平等の国となった。
企業における代表者の数も、社員数も、家庭における家事労働の比率も。そして、人口比率も。
〈総理官邸にて〉
「昨日の死者は?」
「男性1623名、女性1412名です」
「昨日の出生者数は?」
「男性514名、女性702名です」
「では、いつも通り人口比率が同じになるように、高齢者からくじ引きで間引きをお願いします」
〈翌日〉
「今回呼び出した理由はわかっていますか?」
「はい。間引きの対象選択に、一部の特権階級者を除外せず、平等に行ったからですよね」
「あなたのせいで、国にどれだけの被害が出て、我が党の支援者からどれだけの批判があったか、政権の基盤が揺らいだかわかってますか?」
「平等な国を目指すのに、特権階級があるのはおかしくありませんか?それとも、日本初の女性総理の名前が対象者に入っているのが問題でしょうか?」
「確信犯という訳ですね。わかりました。第一秘書のあなたは昨日亡くなった事にします。第二秘書以降は繰り上げ、昨日の死亡者に誤りがあった為、間引き対象者は再抽選として下さい。急いで取り掛かりなさい」
第一秘書は保安要員に連れられ、連行されて行く。
そして、元第二秘書は慌ただしく、各部署に指示を出しに行く。
「これだから、男性は駄目なのよ。理性ではなく、感情で動いて。組織を維持するには、後援者に甘い汁を吸わせるくらいしょうがないじゃない。あなたもそう思わない?」
急に同意を求められ、元第三秘書の女性は曖昧に同意する。『男女平等を達成しても、その他の平等を捨てている。この政権も長くないだろうから、次の仕事を探さないと』と決意しながら。