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「夫のせいで私の価値下がる」という人生相談を読んで

 先日、こんな人生相談投稿を読んだ。


「夫のせいで私の価値下がる」

 https://www.yomiuri.co.jp/jinsei/20210208-OYT8T50131/


 要約すると、


 ・夫の学歴と収入が低く、周りとの格差を感じる。


 ・離婚したら自分の生活レベルが下がり、助けてもらえる人がいなくなるから踏み切れない。


 ・夫のせいで私の価値が下がっていると思ってしまい、幸せを感じられない。


 とのことだが、申し訳ないがまるで子供のワガママのようで呆れてしまった。


「夫のせいで」というが、その夫を選んだのはあなた自身でしょうに。


 これに対し、回答者の最相葉月さんが、


 ・早く離婚した方がいい。


 ・夫もあなたのような価値観の人間を選んでしまったことを反省している。


 ・目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊される。


 と、ズバッと斬ってくれたのが爽快だった。




 思えば結婚て、生活スタイルも価値観も全く違う赤の他人同士が一緒に暮らす訳で、いざ一緒に暮らし出してからわかる相手の嫌な所や理解しがたい所、合わない所も沢山あるだろう。


 そこでふと思い出すのは、「美味しんぼ」という料理漫画作品だ。


 ネタバレになってしまうが……主人公の山岡士郎と同僚の栗田ゆう子が47巻で結婚する。


 その結婚までのエピソードには感動するものが多く、特に士郎の父である海原雄山氏の言動には心打たれた。


 夫婦関係を金平糖(作るのにとても手間暇がかかる)に例えたり、結婚披露宴に豪華絢爛なご馳走ではなく、ありふれた家庭料理(しかしとてつもなく美味しい)を振舞い、「みすぼらしさを送りたい」と語ったスピーチもとても素晴らしかった。


 47巻はまさに大団円とも言うべき感動を味わわせてくれた。


 しかし……。


 次の48巻、その感動を早々にぶち壊してくれたのは、ゆう子の手料理に対する士郎のイチャモンのつけ具合だ。


「味噌汁の具は多いと味が濁るから一種類に」「豆腐の切り方が小さい」「キュウリはオシャレに切ると掴みづらいから斜め切りに」「サンマの頭は蛇みたいだから落として焼け」


 ……。


 士郎のネチネチしたダメ出しにゆう子は「そう、ごめんなさい……」と、肩を落とす。


 そして翌日、ゆう子が改善を試みると今度は、


「味噌汁には山椒を振りたい」「豆腐の切り方が大きすぎ」「アジは頭がないと死体みたいで気持ち悪い」「カブは斜めに切らず八つ切りに」


 ……酷すぎる。


 ゆう子はもうカンカンに怒り、「あなたがこんな乱暴で残酷な人だなんて!」と泣いていた。


 ちなみに士郎は母を早くに亡くしているが、その原因は「雄山が母に対して厳しく接したストレス(本当は全て士郎の誤解)」だとずっと恨んでいた。


 その厳しさについて、「雄山が母の料理にケチをつけ、何度も作り直させた」と例に出し、怒っていたが、その士郎自身がゆう子の料理にイチャモンをつけまくるという……なんとも皮肉なエピソードだ。


 さらに次の話では食費の節約を決めたものの、士郎が買い物先で16万5千円もするしゃぶしゃぶ鍋をローンで購入してしまう。


 当然ゆう子は激怒する。


(そのくせ、ゆう子が数十万円で家具一式を買おうとしたら「高い」と言っていた)


 こう見ると山岡士郎のどうしようもなさが目につくが、士郎は卓越した味覚と専門職顔負けの料理の腕と知識を備え、雄山との「究極vs至高」対決の他にも、その料理への造詣の深さで多くの人や店を助けたり、仲を取り持ったりしてきた。


 ゆう子が結婚しようと思ったのも、「士郎は出世の見込みも何もない人間だけど、周りの人を幸せにする」という理由だったし、読者である自分も「寿司をCTスキャンにかけて寿司職人にシャリの固まり具合を説教する」などのトンデモ発想にたびたび仰天しつつも、それでも士郎には好感を持っている。


 色々ありつつも士郎たちは離婚することなく、三人の子供ももうけている。


 ということで新婚当初の士郎の言動にはちょっと呆れたのだが、最初に書いたように価値観は人によって全く違い、赤の他人同士が一緒に暮らし出すとそれがぶつかりあうことを、漫画として多少大げさに描写したのかなと思った。


 料理へのダメ出しや鍋の話もそれぞれ解決するので、ご興味のある方はぜひ漫画をご覧になっていただきたい。


 士郎が自分の変なこだわりやズレた金銭感覚を変えられずにいたり、士郎のイチャモンにゆう子が黙って従い続けていたら、ゆう子は本当にストレスで病んでしまったかもしれない。


 お互いに不満を言い合えたり、歩み寄ることが大事なのかなと感じる。


「おしどり夫婦」と呼ばれる夫婦でも、片方のワガママにもう片方がじっと我慢しているだけで、心の内は憎んでいる、そんなケースもあるらしい。


 では、冒頭の相談者はどうだろうか?


 あんな所に相談を投稿してないでもっと夫と話し合ったらと思うし、幸せになれないのは金銭面どうこうよりも、他人と比べて自分を不幸と決めつけるような、未熟な価値観からではないだろうか?


 世の中、どこに行っても上には上がいるんだから、比べ出したらキリがない。


 共働きで本人も公務員なのだから、経済的余裕は十分あるはずだ。


 幸せになれないのはお金ではなく、心が貧しいからだと思ってしまったのだが……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的にはあの記事は怪しいと思うんですよ 新聞のエッセイみたいな投稿物って出所が不明ですしネタに困った記者がデッチ挙げた感じかな~と まあ婚活ネタでアラフォー勘違い女さんのネタって盛り上が…
[良い点] 自分もそう思います。 お金で相手を判断したり、学歴で判断したり、周りと比べたりしたり。その人の価値観は全て他人で、自分の意思は?と考えてしまいます。
[良い点] なるほど、たしかにそういう方もいますね。 私としても、そういう考え方を持ちたくないなぁと、 とても共感しました。 仙道さんの文章は結論が分かりやすく、 考えさせられるものが多いので面白いで…
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