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黄金の森の錬金術師

作者: 日々

「ずいぶん荒れてるが……」

 深い森の中を進みつづけてきて急に開けた視界に立ち止まる。古びた地図を広げた男。彼は錬金術師だ。

 都で見た闘技場よりも広いその場所だけ、まばらにしか木は生えておらず、あとはひとかかえほどの大きさの岩があちこちにごろごろと転がっているだけだった。

「間違いない、ここだ」

 求めていた伝説の黄金郷が眠る土地。師匠の蔵書や同業者の研究資料から盗み出した情報、それに怪しい言い伝えを頼りに何年も歩き回り、ようやく見つけたのだ。

 今いるこの場所こそが黄金を生み出す巨大な錬成魔法陣なのだ、と。

 偉大な発見を、男はもちろん誰にも教えるつもりは、ない。

 さて、大変なのはここからだった。

 邪魔な木はすべて切り倒し、定められた位置からずれている岩をもとに戻し、足りなければ遠くからでも運んだ。そこに刻まれている呪印が摩滅していれば打ちなおした。

 さらに、魔力を込めた小石を並べて描く錬成式図は、欠けた部分を復元しなくてはならなかった。自分の魔力が枯渇してあやうく衰弱死するところだった。

 とにかく、重労働である。

「ゴーレムを使役する魔法くらい覚えりゃよかった」

 額に流れる汗を拭いながら、男は沢で汲んだきた水を飲み干した。冷たさが疲労の溜まった体に染みわたるようだった。

 もう何日も森の中で過ごしている。過酷な作業は続くが、望むだけの黄金が手に入ると思えばなんてことはなかった。

「ま、『欲をかいて得た身は乞食、汗をかいて得た実は金色』ってな。やっぱり労働は尊いもんだ」

 さらに十数日が過ぎたが、しかし男はついにやりとげた。

 荒れ地は、伝説の土地へと生まれ変わったのだ。

 満月の夜。魔法の力が最も強まる日。

 魔法陣の中央に延べ板をかたどった粘土を置く。元の素材は何でもよいはずだ。

 そして男は、待った。

 不思議な力が魔法陣を満たしていく。

 やがて、粘土の延べ板に変化がおとずれた。少しずつ、月の光を反射しはじめていた。

「黄金郷の復活だ!」

 いまや粘土ではなくなったそれを持ち上げて、男は思わず叫んだ。

 ずしり、とした重さに酔いしれ、飽きることなく眺めていた。

 変化はまだ続いていた。



 とある深い森の中。一体の像が、人知れず立っている。像は黄金でできていた。仕草や表情など今にも動き出しそうな、いや、まるでたった今まで動いていたかのような……

 金色の輝きは褪せることなく、いつまでもいつまでも――

(改行含まず)空白含む1000字きっかりです。

段落の最初に1字下げ、といった小説スタイルでの1000字にするか、字下げ空白を使わず、段落で分離する書式で字数を稼ぐか迷いましたが、前者のスタイルで行くことにしました。

応募規約に合ってんのかイマイチわかってないんですが・・・


感想・批評などありましたら、ちょっとしたことでもかいていただけるとありがたいです。


余談ですが、錬金術師、錬成陣、このあたりの用語を解説無しで放り込めるようになったのは某漫画作品のおかげだと思います。

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