優しい温もり
人が恋に落ちる瞬間ってこんな感じではないでしょうか?
恋したい人、恋してる人。
皆様に読んでほしいです。
肌が寒さで奮い立つ季節がきた。この季節がくる度にもういない君の事を思いだす。
優しく、温かく、俺のそばにいてくれた君の事を。
俺は、まだ君以外に隣にいてほしいと思う人には会えてない。
「はい、今年もお疲れ様でした!来年も頑張りましょう!メリークリスマス!」
「「「メリークリスマス!!」」」
なんて締めの言葉で忘年会は締めくくられた。
元々、他部署の人と関わる気もなく夕飯代が浮けばいいかなといった軽い考えで出たので愛想笑いだけを繰り返かえして酒を飲んで時間だけが過ぎていった。
二次会に移る話をしている人々から離れ、店の外に出て酔い覚ましにタバコを取り出すと火をつける。
煙を吸い込んで吐き出すと少し、胸の中にあるつかえが取れた。
「こら、武。こんな店の前でタバコ吸うな。」
思わず振り返るとすでに帰り支度を済ませている、同じ部署の粕谷先輩がいた。
この人はちょっと苦手だ。誰に対しても優しくておせっかいなイメージしかない。
「あ、すいません」と謝って火を消す。残りも後で吸おうと耳にタバコかけた。
「そんなに萎縮しないでいいよ。」と少し笑われた。
「先輩は何してるんですか?」
「ん?コレ」と斜めしたを指さした。視線を向けると酔いつぶれている同期がいる。
「さすがに寒空の夜、女の子一人はまずいからね。」と言いながらどこで買ってきたのかペットボトルの水を持っていた。
いやいや、あんただって女じゃないか。と心で呟くと「それ、俺の同期ですね。。。」と苦笑した。
「まぁ、初めての忘年会でテンション上がってたからね。楽しめたならいいさ。」と優しく同期の頭を撫でる。
なんでか少し羨ましくて「俺も撫でて下さい。」と唐突に言葉が出た。
しまった!
と後悔しても遅かった。先輩は少し首をかしげている。
このままだとただの変なヤツだ。「あ、なんでもないっす。」と言うのと同時にフワッと温かい手が触れた。
「武も頑張ってるもんね。」と頭を撫でられる。
正直、もういい歳なので頭を撫でられる事に抵抗があったが、悪くない。
心地よさに浸っていたがふと、温かみが消えた。
それと同時に「あー!いた!粕谷先輩達、二次会行きましょうよ!」と酔った顔の先輩方から声をかけられた。
「そうだなぁ。。。」少し困ったように粕谷先輩が微笑んでいる。
急に何かを思いついたような顔をすると俺を見て「この酔っ払いもつれて二次会に行くよ。ね、武。」と微笑んだ。
じゃぁ、店の中にある上着とってきますと告げて店に戻る。店のガラスに映る自分の顔が赤い事に気が付いた。
酒のせいか?対して飲んでないはずだけどなぁ。と思いガラス越しの自分を見てから、少し急ぎ足で店の外に向かった。
「先輩」と声をかけると、さっきまで煩いぐらいだった人達と酔いつぶれた俺の同期の姿ががない。
「あんなに酔っ払ってたのに、すごい速さで店に行っちゃったよ。」と笑った。
「あれ、待っててくれたんすか?」
「だって、二次会の店わからないでしょ?まぁ、案内するよ。私、行かないから。」というと歩き出す。
寒いのに、俺だけを待っててくれたんだと思うと少しだけ心が踊った。その気持ちを悟られないようにタバコを出すと先輩が呆れた顔をしている。
「・・・なんすか?」とライターに火をつける。
「武、そんなに酔ってる?」と先輩は自分の耳を指した。
その姿は俺が過去に失った君の姿その物だった。もう、会えないと思った君だった。
「おーい、どーしたー?」首を傾げて先輩方が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
慌てて、耳からタバコをとる。
「粕谷先輩、名前なんて言うんすか?」と火を付けながら聞く。
「名前?同じ部署の先輩の名前ぐらい覚えてなよ。雪奈だよ。」と笑いながら返す。笑顔を見ると心が少しだけ温まるのがわかった。
「雪奈先輩・・・・」心が浮かれていくのがわかる。
「俺、前の彼女に良くさっきの仕草されてたんですよね。」
「そうなんだ。」
「だから、これからは雪奈先輩が教えて下さい。」
「え、やだ。」
「これからも、宜しくお願いしますね、雪奈先輩」俺は年甲斐もなくワクワクしている自分に気が付いた。
「武、会話が成立してない事に気が付いて」
「いや、俺は雪奈先輩に教えて欲しいです」
寒い、とても寒いけど、俺はなんだかいいプレゼントをもらった気がした。
今ならさっきの締めの言葉も大声で言えそうだった。