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夢だと思ってた。  作者: アイリス
序章
6/13

第5話 「青い果実」

「そう‥‥異世界から‥‥地球? から来たのね。」

「はい‥‥信じられないですよね‥‥?」

「そんなことないわ、こんな辺境の森に、子供が倒れているなんてあり得ないんだから。信じるわよ。」


 泣いては泣き止んでを繰り返し、その間ずっと抱きしめてくれていた女性は、私の言う事を信じてくれた。

 にわかには信じがたい話でも、真剣に聞いてくれた彼女。

 私は、不幸なのかと思ってたけれど、そうでもないのだと思えた。


「これさっき取って来たの、地球にはこんな木の実はある?」

「うーん‥‥見た事ないですね。」

「そうなんだ、これはね、ここら辺一体でしか実を付けないのよ。甘くておいしいの。」


 ブルーベリーのような青黒い色を持つリンゴのような果実。

 一見すれば、不気味な果実だが、美味しいらしい。


「食べてみて。元気が出るわ。」


 丸ごと差し出され、恐る恐る噛り付いてみる。

 すると、口の中には桃のような甘さと香りが広がる。

 それでいて歯ごたえがあり、とても美味しい。


「ふふっ、笑顔が見れてよかったわ。」


 顔に出ていたようで、母親のような目で私を見て居る。

 少し気恥ずかしかったが、優しさを感じて、胸が温かくなった。


「そういえば自己紹介をしていなかったわね、私はルーティ・セリア。エルフよ。」

「私は、小林こばやし ゆいと言います、助けてくれて‥‥ありがとうございます。ルーティさん。」

「ルーティでいいわよ、ユイって呼ばせてもらうわね。」

「はい‥‥」


 それからしばらく、私が地球に居た頃の話をした。

 ルーティさんはとても興味津々で、トイレの話をしたときが一番羨ましがっていた。

 水洗トイレの説明をしたら、「魔法でどうにかできるかしら‥‥」そう言いながらニコニコと聞いていた。


「ユイの住んでいたところはとても文明が進んでいて、魔法がないけれどその代わりに科学が進歩していたのね。」

「はい‥‥魔法、物語の中だけの存在でした。」

「ふふっ‥‥素敵なところね、地球ってところは。」


 終始、お母さんのような顔をしていたルーティさんは、私の今の見た目について話してくれた。


「今はここに鏡がないから、口伝いになってしまうけれど、あなたは人間とは違う存在ね。」

「‥‥なんとなく、そんな気はしてました。」

「私はエルフなんだけど、エルフだけが持つ特徴をあなたも持っているから、”多分”エルフだと思うわ」

「多分‥‥?」


 エルフという種族だけが持つ特徴?

 

「私達エルフは皆、金髪と緑の眼を持つの、深緑しんりょくと呼ばれていてね、魔力の流れや風の動きがわかるのよ、人間は魔眼まがんと呼ぶ人も居るわね。」

深緑しんりょく‥‥。」

「魔力の流れが見えるということは、魔法に高い適正あるという証拠でね、魔力の流れの”色”でその人がどの系統を使うかなんてこともわかってしまうのよ」


 私も恐らくはエルフという種族になっている、先ほど教えてくれたエルフの特徴には当てはまるらしいが、多分と言ってた。


「ユイの髪の毛の色が見た事もないくらい真っ黒で、毛先だけが金髪だし、目の色も左右で違うのよ。片方は赤い、片方は私達と同じ緑の眼なのよね。」

「オッドアイなんですね‥‥川の水だとあまりよくわからなくて。教えてくれてありがとうございます。」

「いいのよ、今は自分の状況を分析して、慌てない様にしないとね、魔法については食事をしてから話しましょうか、お腹は空いた?」


 青い実をお腹に居れたというのに、またすぐお腹が鳴った。

 その様子だと空いてるようね、待っててねと言い、ルーティさんはクスクスと笑いながら、キッチンでリズムを奏でる様に料理を始めた。

 その後ろ姿が、いつか見た母の後ろ姿と重なって見えた。

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