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夢だと思ってた。  作者: アイリス
序章
2/13

第1話 「自己紹介」

私なりに、丁寧に書いております。

「‥‥?」


 私は高校の入学式を控え、昨夜、早めに寝た。

 起きたらいつも寝ているはずのベッドではなく、硬い床の上だった。

 頭がまだ夢を見て居るからなのか、現状が上手く飲み込めない。


「起きたか、娘。」


 声が聞こえた方に顔を向ける。

 瞬間、言葉が出なかった。


「はっ‥‥」


 声の主は、いつも見て居た「人」ではなく、見た事もないような姿形をしていた。

 漫画やアニメに登場しそうな外見、本気のコスプレをした人という生易しい物ではなかった。


「どうした? 娘」


 どうした? などではない、寧ろこちらから問いたい。


「あぁ‥‥私に驚いているのか、その割に顔には出ていないから解らなかったぞ。」


 簡素とも繊細とも言えない椅子に腰かけ片肘を突き、何の感情も宿して居ない血のような赤い瞳でこちらを見つめる声の主。

 状況が分からず、下手に動くべきではないと本能が告げている。


「まぁよい、娘よ、名を何という?」


 名前を聞かれるが、答えない。

 人に名前を尋ねるときはまず自分からだと教わらなかったのだろうか?


「よかろう、先に名乗ろうではないか。」


 こちらの考えがわかるのだろうか? それとも私の顔に出ているのだろうか?

 そのどちらでも構わないが、現状の確認をしなければいけない。


「私の名は、シャ・ル・バルド。人間風に言うなら、「シャ」が苗字、「ル」が名、「バルド」が家名だ」


 名前とは別に、家名があるということは偉い人ということなのだろう。

 下手な事をすれば命に危険があるかもしれない。


「なんて呼べば、いいですか?」


 頭がだんだん目覚めて来た、状況を確認する前に、身の安全を確保するべきだ。

 目の前の人物は偉い人、失礼な事を言って怒らせるわけにはいかない。

 名前を伝えて、その後の反応を見よう。


「好きに呼ぶが良い。」

「‥‥周りの人達はなんて呼んでいるんですか?」

「周り‥‥? 私は常に一人なものでな、名を呼ばれたのは数百年前が最後だ。もう忘れてしまったよ。」


 困ってしまった。仰々しすぎる呼び名がある訳でもなく、覚えていないとなれば、なんて呼んでいいかわからない。

 幸いにも、好きに呼んでいいということなので、少しくらい失礼な事をしてしまっても許してくれそうな懐の大きさを感じる。


「えっと‥‥」

「なんだ? 娘よ。」


 こちらの言葉を待ってくれているが、まずは何を言うべきなのだろう。

 そうだ、自己紹介をしなければ。


「名前を言うのが遅れてすみません、私は小林こばやし ゆいと言います。唯とお呼びください」

「それが名か、よかろう、ユイと呼んでやる。」

「ありがとうございます。」


 自己紹介は済んだが、目の前の人物をどう呼んでいいか分からない。

 いきなり名前で呼ぶなんて事は馴れ馴れしすぎるので、無難に苗字で呼ぶのがいいかもしれない。


「それで‥‥質問をしてもいいですか?」

「良い。申してみろ。」


 気になることは多いが、まず一番にしなければならないことがある。


「お手洗いはどこですか?」

「お手洗いとはなんだ?」

「用を足す場所‥‥です‥‥」

「用とは何だ?」


 困ってしまった、通じない。

 この場所から逃げるのにうってつけだったが、通じないのであれば仕方が無い、別の手を考えよう。


「トイレです。」

「トイレとはなんだ?」

「‥‥」


 ストレートに言ってみてもダメ、逃げ道が塞がれてしまった。

 

「ユイ、私から質問がある。」

「はい。」


 一体どんな質問があるのだろうか。

 

「お前は人間か?」

「はい、人間です」

「そうか、では食事が必要だな。」


 椅子から立ち上がり、おもむろに手をかざした。

 瞬きをした瞬間、目の前にテーブルと椅子、テーブルの上には見た事のある食事達が並んでいた。

 どれも湯気が立っていることから察するに、出来立てなのだろうか?


「これは‥‥一体‥‥?」


 驚きのあまり、驚く事を忘れた私は純粋に思ったことを聞いてしまっていた。

誤字脱字のご報告、お待ちしております。

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