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六話

エミリア・ローズ。

それは、私の大好きな乙女ゲームの主人公の名前だった。




エミリアは、孤児院で育てられた、健気で可愛らしく、心優しい少女だ。しかし、ある日、ローズ伯爵家から使いが来る。「エミリアという名の少女はいませんか。」と。


実は、エミリアはローズ伯爵の弟が隣国の侯爵令嬢と駆け落ちしたときにできた娘で、ふたりはエミリアが生まれて直ぐに事故により命を落としていた。死の直前、エミリアの父親はローズ伯爵に“エミリアという娘がいる”と手紙を送ったそうだ。


ふたりの忘れ形見であるエミリアを、伯爵はずっと探していた。エミリアがローズ伯爵家の家紋がついた時計を持っていたことで、ローズ伯爵はエミリアを義娘として引き取ることを決める。


15になったばかりのエミリアは、貴族としての教養を身につける為、学園へ送られる。

そこが、乙女ゲームの舞台だった。




私が好きなのはメインヒーローのデイヴィッド王子。様々なすれ違いにより、自分は愛されていない、と思い込む孤独な王子。しかし、心優しく愛情深く、美しい。

顔面も、性格も、全てタイプ。もう、どストライク。

何周やりこんだことか。

彼のスチルは全て手に入れた。デイヴィッドグッズで溢れた部屋を見て母に何度ため息をつかれただろう。

幸せだった。彼のおかげで。


しかし、私は命を落とした。

デイヴィッドの絵がかかれた抱き枕が発売されるため、予約していた店に急いでいた。店は、目の前にあった。青信号で走り出した私に、車が突っ込んできたのだった。


あの抱き枕を抱きしめられなかったことはとても悔しい。でも、デイヴィッドルートを進めれば、いずれ実物をいくらでも抱きしめられる。だって、私はヒロインなのだから。




ぐふふ。と笑みが溢れる。

そろそろ伏線的なデイヴィッドとの出会いシーンがある。

祭りの日、お忍びで城下を歩いていたデイヴィッドが転んで足を怪我してしまう。それを見かけたエミリアは、ハンカチが汚れるのにも構わずデイヴィッドを手当する。そして、デイヴィッドが名前を聞く前に、エミリアは去っていくのだ。


学園で再会した後に、デイヴィッドは初めて優しくしてくれた少女がエミリアであると気付くのである。


「はぁ!楽しみ!」


祭りは明日に迫っていた。

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