五話
最近、僕はあの不思議な声のことについて考えていた。
ギアナと会ってからはもう聞いていない。
でも、とても気になる。
もしかしたら、僕は幻聴が聞こえるような恐ろしい病にかかっているのかもしれない。そう考えてから、他に理由を探すけれど、他に、なんて無さそうな気がしてきて、そろそろ焦ってきたところだった。相談するような相手もいないし、一人で悩んでいるのも辛い。でも、考えずにはいられない。
そんな日々が続いていたある日、僕は父様に呼び出された。
「失礼します。」
父様の執務室は、なんだか空気が凍っているように感じる。つまり、とても緊張する。
「デイヴィッド。」
「は、はい!」
父様は、僕が部屋に入ってから一度もこちらを向かない。
「……」
沈黙が落ちる。
な、なんだろう。
「デイヴィッド。」
「はい。」
「エヴァンズ家の長男が来る。」
「はい。」
「明日だ。」
「はい。」
「わかったな?」
「はい。」
ん?
流れではい。って言ってしまったけれど、何もわからない。
「じゃあ、もうよい。」
僕は部屋を出る。
意味がわからなかった。
翌日。
「初めまして、殿下。私アダム・エヴァンズと申します。よろしくお願いします。」
美しく礼をした彼は、銀髪の美しい少年だった。
エヴァンズ家は、元傭兵が武功を立て上位貴族になったという特殊な家で、少し目立つ髪色をしているのである。
「初めまして。宜しく。」
僕は、同年代の少年に会うのが初めてで、どうすればいいのか分からない。まず、アンに連れられて、応接間に行くと、アダムがいたのだ。状況すら分かっていない。
「これから、殿下の良きご友人になれたら良いと思っています。」
アダムは、そう微笑んだ。
「友人?」
「はい。」
僕は、とっても嬉しかった。友人なんて、空気のように生きている僕には無縁のものだと思っていたから。
それに、アダムは僕と会ってから一度も目をそらさず、真っ直ぐに僕の目を見て話してくれていた。
今までそうしてくれる人はいなかった。僕は、彼みたいな友人がいたら、きっと楽しいだろうと思った。
「宜しく、アダム。」
僕は微笑んで手を差し出す。
アダムは目を逸らし、手を出さず、もじもじとしていた。
やはり、僕は初対面の人にも嫌われるのかもしれない。