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prologue

頭が、ズキズキと痛んだ。

目を開けると、いつも通りの天井が見える。

僕は、ゆっくりと思い出す。

嗚呼、そうだ。僕は、頭を打ったんだ。





デイヴィッド・フォスター

それが、僕の名前。この国の第一王子だ。

しかし、僕に味方はいない。

母様は僕を産んですぐに亡くなった。

父様は母様の命を奪った僕を憎んでいる。

姉様も父様と同じように僕を憎み、嫌っている。

二人で仲良く談笑していても、僕が傍へ寄ると途端に黙ってしまうのが、その証拠だ。

使用人達は、僕とは距離をとっている。


寂しくない、と言ったら嘘になる。

でも、それを言う相手すらいなかったら、どうしようも無いじゃないか?


最後に、婚約者のギアナ。オルティス公爵家の長女だ。

彼女は僕をとても嫌悪しているようで、いつもいつも嫌味を言う。ギアナは優しく、美しく、賢いと評判だから、僕みたいな男じゃ釣り合わないから、仕方ないと思う。彼女は、婚約が決まった時も、驚いて固まっていた。「なんで私がこんな婚約をしなくてはならないの?」そんな顔をしていた。

でも、父様が決めた婚約を、憎んでいる僕がどう喚いたって変更されるわけがない。これは、政略結婚だった。


せめて、僕はなるべくみんなの迷惑にならないように、視界に入らないよう、空気のように生きていた。





今日、この日までは。



いつも通り、部屋をこっそり出て散歩をする。

腕のいい庭師のお陰で、宮廷の庭には美しい花々が咲き誇っている。

僕は、自然の移ろいに気付けるのが嬉しくって、毎朝早起きをして、庭園を歩き回るのが好きだった。

今日は、いつもより足を伸ばして温室まで行く。

やはり、白いベゴニアの花が咲いていた。

そろそろ咲くかもしれない、と思っていたのだ。

僕は、それに駆け寄る。

その時。

あ、転ぶ。

そう思った。

花が何故か床に散らばっていて、僕はそれを踏んでしまったのだ。

最後に見えたのは、淡い紫のスターチスの花弁だった。

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