姉妹のゲームはケンカの種
「ああーー嫌ーーやめてーー!!」
コントローラーを握り締め、テレビ画面を恨みがましく見ている姉、鈴香。ドラゴンが気味の悪い敵に見事に追撃されていく。
「お姉ちゃん・・・ちょっとは静かにしてよ、もう夜中だよ?一般家庭はもう就寝時だよ?」
「だったら寝ればいいでしょ、あたしは今日中に先に進まないと死ぬの。あたしが死んだら瞳も悲しいでしょ?」
「・・・お姉ちゃんの言う今日は1時間前に終わってるよ」
「屁理屈言うんじゃないわよ、倒すわよ」
「生憎この世界で暴力行為は犯罪とみなされて、私は警察に保護されてお姉ちゃんは刑務所行きよ」
「ああ!あんたが小姑みたいにうるさいから!また!またーー!!」
同じ光景に鈴香は嘆きの声をあげた。
鈴香がプレイ中のゲームはかなり残酷な表現が多い。血飛沫は当然だし、敵には赤ちゃんがいる。その赤ちゃんがやけに強いしえぐいのだ。鈴香はやっと終盤を迎えており、そこをクリアすれば後はエンディングを見るだけとなっていた。
しかしはっきり言って、鈴香は下手なのだ。ここまで進めただけでもある種奇跡なのだ。だから瞳も少なからず興味を抱いて見学しているのだが、そこからなかなか進まない。当然といえば当然だが、瞳はあまりのじれったさに疲れ果てた鈴香からコントローラーを奪い取った。
「な、何すんのよ!このあたしから神器を奪うだなんて!!」
「埒があかないのよ、さっさと寝ないと明日・・・今日も学校だしね」
「だから先に寝ろって言ってんでしょーが!!」
「お姉ちゃんうるさい、もうちょっとで・・・あ」
「あーーーーーーーー!!」
姉よりかは得意だとひそかに自負していた瞳は、あっさりとドラゴンを目的地にやってしまった。鈴香が3時間も粘ったことは、瞳の手によって約2分で片がついてしまった。
「や、やっとエンディングだねー!わー楽しみー!」
目的地に着き、セーブの上書きを催促する画面を呆然と見詰める鈴香。その両手は掌で、小刻みに震えているのが瞳からもわかった。
「72時間もプレイして・・・他人によって最後を迎えるなんて・・・とんだ茶番ね・・・」
ぼそぼそと聞こえる鈴香の呪いにも似た声が瞳の背中を撫でた。クーラーのおかげで快適だったはずの室温も、もはや北極あたりの気温並となっていた。
「魔法使ってくるやつとか・・・弓持ってる敵って厄介だったのよね・・・ドラゴンに乗ってたら落とされるし・・・それにでかいくせに妙に素早いやつも腹立たしかったわ・・・どんな鍛え方してんのかしらね・・・ああ・・・盾持ったまま突撃する馬鹿なやつもいたわね・・・前後にいたときほど歯がゆいものはなかったわ・・・ごめんね・・・最後の最後・・・あなたたちを裏切ってしまって・・・一緒に戦えなくて・・・」
「ごめんってーーーー!!お姉ちゃーーーーーん!!」
それから鈴香の恨み節はとどまることを知らず、そのまま朝を迎えた。
「お、姉ちゃん・・・お願いします・・・ゆ、許して・・・」
「これに懲りたら二度とあんな真似すんじゃないわよ!」
「は、はい、神に誓って」
「あの世界は言わばもうひとつの日常・・・そう、戦いこそがあの人と私をつなぐ唯一の手段!」
「はい、もうしません」
「これからはあたしがゲームをしてるときはお茶とお菓子を用意すること!もちろん実費で!」
「はい、喜んで」
「新作のゲームが出たら半額は出すこと!そして一番にプレイする!」
「はい、どうぞお先に」
「でも・・・せっかくエンディング見れるから見るわね!」
「・・・」
鈴香は夜からつけっぱなしの画面の前に座り込んだ。うれしそうに、とてもすがすがしい様子であった。
それを見た瞳はふらりと立ち上がり、おもむろにコードを引っこ抜いた。
「あーーーーーー?!」
「うるさいよ、お姉ちゃん」
「うるさいって!うるさいってー?!あんた何をー!!」
「今日ほど無駄な時間を過ごしたことはないよ。だからそのお返しね」
「あ、あんたって子は・・・!ふっ、で、でもセーブしてんだからね!コード抜いたくらいじゃ」
その瞬間、瞳はメモリーカードを抜き窓を開け放ち大きく振りかぶった。そして、見事なフォームでそれをお星様にした。
瞳は気が済んだのか、目の下に盛大なクマを作ったまま部屋から静かに出て行った。一連の作業に鈴香は動けずにいたが、しばらくして全身を震わし始めた。
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
鈴香の悲鳴が、というか断末魔が瞳の鼓膜を揺るがすとき、瞳は手にしたメモリーカードを握り締めほそく笑んだ。
「これぐらいのいたずらは許されないと割に合わないっての」
いつか返す気の瞳は、酷い睡魔に逆らわずそのまま眠りにつくのであった。
ええ・・・内容はあれですよ。わかる方がいればぜひお話したいですね。ちなみに私は4つ目までは見れました。でももう無理です!なんで全部集めなきゃいけないの!?無理だからー!!
・・・っと、取り乱してすみません。ここまで読んでいただきありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いします。
それでは。