第1話 歩き続ける男
またしても感覚が空いてしまいましたが投稿です。ほんとこんな感じに気が向いたらの更新になるので「気がついたら見る」ぐらいの感覚で気軽に読んでもらえたらなぁと思います。
歩いても歩いても辺りは平原、たまに木が生えている程度で風景は殆ど変わっていないと言っていいぐらい代わり映えしない。あまりにも変わらない背景にイライラも募る。
「せめて風景ぐらいは変わってくれよ……同じ所ぐるぐる回ってるわけじゃねぇんだからさぁ」
心底怠そうに怨嗟の声をあげながらも、その足取りはしっかりとしていて平原の中に点々としている丘陵の頂上を目指して丘を登り続けている少年が居た。
「取り敢えず、高い所から見れば人が住んでそうな地域ぐらいは見えるだろ。これだけ広いんだ、一箇所ぐらい見えてもいいじゃないか。て言うか見えてくれ、流石に野宿はマズい」
自分の薄っぺらい服装を見て夜を越えるのは無理と判断したのか、早急に人が住んでいるような建物がある場所を探そうとした所まではよかったのだが……あるのは小さな物置小屋ぐらいでとても一晩過ごすには不安しか無いボロ屋だった為諦めて歩き続けているというわけだ。
「ま、掘り出し物はあったわけだが。これで最小限の自衛は出来るだろう。少なくとも此処が俺のいた世界じゃないって事は分かった」
少年の腰にはボロ屋で見つけた刃渡り15cm程のナイフがナイフホルダーごと付けられていて、非常時でも最低限の自衛が出来る代物だ。錆びること無く残っていて使えそうなのはこれしか無かった。そして自分の居た世界じゃないと確認したのもそのボロ屋の中での話。明らかに刺股などではなく槍や弓、本当にゲームで見るような武器の壊れたものが小屋の中にいくつもあったからだ。初めはコスプレ道具なのかと思ったが、刃は錆びているとは言え潰されておらずサビを落とせば使えそうなものが幾つかあったのと、別の小屋でも似たような武器を見つけたからだ。元居た場所にこんな物があったらニュースになる。
「とは言っても、こいつを抜くような事にならないことを願うしか無いけどね」
腰のナイフをホルダーの上から触れながら再確認し、丘の頂上に到着すると同時に視界が開けた。と同時に感嘆の声が漏れる。
「すっげぇ……綺麗だ。凄い。これは、確かに……登ってよかったかもしれない」
本当にゲームで丘陵が点々とあり適度な起伏が続く平原がそのまま目の前にあるようで、リアルで、綺麗で、そんな簡単な言葉しか出ない程にその目の前にある景色は幻想的で美しかった。
「……ん?お?あれ建物か?」
暫く放心して景色を堪能している際に煙突?のような構造物が付いた建物の周りに家のような物が遠くに見える。かなり遠くではあるが、日没までには間に合いそうな距離だ。少し希望が見えてきた。人が居そうな地域ってことが分かれば後は行動するのみ。もし人が居なくてもあれだけの規模なら一夜安全に過ごせる事は出来るはず、どちらにせよ自分が得をする算段だ。
「よし、目標が決まれば歩くのみ。ちょっと景色見て目標も決まって元気出てきたぞ」
歩くぞぉ~、と身体を伸ばしながら登ってきた丘を下り始める。その足取りは先程より早くどこか嬉しそうであった。
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しかし嬉しそうな足音は1つではない。その足音は少年の位置からでは聞こえない程の距離にもう1つ増えていたのだから。
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