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気まぐれ短編集

ヤンデレ姉

作者: 之雪


 うちの姉貴はヤンデレだ。本人がそう言っているのだからそうなのだろう。


 夜、風呂に入ろうと思い、俺は浴室の隣にある洗面所に入った。

 真っ暗だった浴室の明かりをつけ、服を脱ぎ、浴室のドアを開ける。

 するとそこには、浴槽に浸かっている姉貴の姿があった。


「いやん、エッチ」

「な、何してるんだよ! 入ってるんなら電気つけとけよ!」

「暗闇の中でお風呂に浸かるのって楽しいのよ……ククク」


 暗い顔で不気味な含み笑いを漏らしながら、姉貴は俺の股間を凝視していた。


「……ポークビッツ?」

「うるせえな! そこまで小さくないよ!」


 せめてフランクフルトと言え。弟をいじめて楽しいのか?

 うちの姉貴はいつもこんな調子なので参る。ヤンデレというか、普通に変人だよな。

 そもそもデレがないじゃないか。いや、姉貴にデレられても気持ち悪いだけだけど。



 夜、何か飲み物はないかと思いダイニングをのぞいてみると、冷蔵庫の前に座り込んでいる姉貴の姿に気付いた。

 姉貴は何かを一心不乱に食べていた。その手が真っ赤な液体にまみれているのを見て、冷や汗をかく。


「お、おい。何してるんだよ……」

「……」


 姐貴の動きが止まり、ゆっくりと顔を向けてくる。その口元には鮮やかな赤い液体が大量に付着していた。


「お腹が空いてね。ホットドッグを食べてたの。ケチャップを大量にかけて」


 赤いのがケチャップだと知り、胸をなで下ろす。まぎらわしい真似しやがって……。


「手も口もケチャップまみれじゃないか。どんだけケチャップ好きなんだよ」

「血に飢えているというアピール。あと、粘液まみれによるエロス的な効果を狙って……」

「何がエロスだ! 子供にしか見えねえよ!」

「ああん、私にケチャップをかけてええ、汚してえええええ! ほら、エロいでしょ?」

「うるさい! さっさと食べて寝ろ!」


 身内にこういう馬鹿がいると疲れる。あんなのと血が繋がってるなんて悪夢以外の何物でもないよな……。


「お姉ちゃんにムラムラしてポークビッツを反応させちゃだめだぞ?」

「ムラムラなんてしねえよ! あとポークビッツを引っ張るな!」

「……引っ張って欲しいの?」

「そういう意味じゃねえよ!」


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