1-2 二度目の
すれ違い。とは、結構身近な言葉である。
実際使う機会は少なくとも、すれ違うことは少なくともどこか共感できる響きがある。
のは俺だけかな?
あの時まっ先に家に帰っていたら、すれ違うこともなく別世界で彼女とバラバラになることもなかった。
のかもしれない。
だが、帰っていたら彼女と談笑し次の日シンと談笑するだけだった、のかもしれない。
誰にも真相は分からないが、どれが正解か、じゃなく、今はこういう状況に置かれている。って考えるほうが前向きでいいと思う。
ただ、彼らと彼女の運命の分岐は殆ど完了していた。と言っても差し支えないだろう。
―☆―★―☆―
彼は普段滅多に通らない道で家に帰還しようとしていた。
当然だろう。叶の家と悠一の家と学校は三角形を作るから、
学校
叶 悠一
普段:学校―悠一
今日:叶―悠一
だからだ。
ひんやりとした道、というよりは冷ややかな道、といったほうが似合うだろう。
去年は結構この道を通っていたので迷子にはならないが。
狭い道なので夕日も入らず(もう夕暮れ)、もうそろそろで広めの路地に出る・・・・・・
危険地帯は、去った。通り魔とかこの頃怖いからね。
「ふう、何か怖かった☆」
と、彼の顔は急に硬直した。青ざめた、といったほうが分かりやすいかもしれない。
悠一は思い切り駆け出した。
シンに・・・・・・さっき通った狭い道からこっちに駆けてくるシンにトラックが迫っている。
向こうも何か叫んでいるが、そんな場合ではない。
悠一も負けずに叫び返す。
「おい!!シン!トラックが!!後ろにっ!っ―――、全く聞いてねぇ。」
なんか別のことでパニックになってるらしく、聞こえていない。
おまけにトラックは電気を点けず(狭い道なので真っ暗)走っている。
悠一でもギリギリで視認出来たくらいだ。
シンに思いきり走り寄りながらあらん限りに叫びまくる。
たぶん―――近所迷惑だろう。
このトラックよく見えなかったけど、あんな安っぽいもんじゃない。
この巨大さは―――
と、ここでシンの声がハッキリと聞こえた。
「叶が、叶が車に轢かれてた!!」
「―――!?」
その時には悠一はシンを突き飛ばそうと飛びついていた。
だが、そのとき悠一とシンとトラックの影が重なった。
地が揺れたかのような巨大なドラム音と
ブレーキの音がすべてを飲み込んでいた。
きっと近所の人はすぐ駆けつけたに変わりない。
俺とシンの体はタイヤに巻き込まれ、見るも無残な姿になっているはずだ。
だが、俺はそんな事考え得ない。一つ言えるのは、死んだらどうでもよくなるということ。
はぁ?死んだって死んでなくたって変わんねぇだろ?だってこの世はどうせ闇。
叶、あいつだって今ではどうでもいい。シンが轢かれたって言うんならそうなんだろ。で?
大型トラックの運転手もアタフタしてるか轢き逃げか。どっちでも大差ねぇな。
シンは無事だったろうか。俺が命を賭したんだが。まあ、どっちでも変わんねぇか。
父さん、母さんは死んだって知ったらどう思うだろうか。
悲しむだろうか。死んでても生きてても大差はないが、悲しみは巨大な感情だから。
いや、それ以前に俺は生きているのだろうか。死んでいるのだろうか。
生きているのなら皆に会いたい。
「いや、お前は確かに死んだ。即死だったぞ?」
さっきまでは目を閉じていたような感じだったのに今では業火絢爛なホール。
マジで業火絢爛としか形容できない。辺りが灼熱の炎で埋めつくされ、それでいて煌びやかで美しい。
その中に、一人の少年が突っ立っていた。
傲然とした面持ちの同い年くらいの少年。そういう印象だ。
真っ赤というより紅蓮の髪としたほうがよく似合う。
目も光の加減で紅蓮がキラリと光り膝が震えてしまいそうな程だった。
「くくく、はっはっはっはっは!お前ら俺様の恐ろしさに震えが止まらぬか!ついでに教えてやろう。俺はどんなことでもすることが出来る。死神だ。」
あと、傲岸不遜、アホもプラスね。
つーか、死神って陰気なイメージがあったんだけど、微塵も陰気じゃない。
アホだし。
今となってはどうでもいい気持ちになっているので普通人のような反応ができない悠一でも、この存在感。
虚言ではないだろう。
ところで、お前らということは他にも!?
そこで心を読んでいたようでアホチビ死神は説く。
「ああ。お前消滅したいかァァァッァ!クソォ!俺様をアホチビ呼ばわりしよって、消してやるッゥゥゥッゥゥ。」
かなりの憤怒に二、三歩後ずさったが、ここで思いとどまった慈悲深い死神様。
「チッ、お前らじゃなければ消しているところだ。今度ふざけた事抜かしおったら誰であれ容赦しぇん!」
空白の二分間。ただ、気まずかった。
「何故か、本調子がでん。お前彼奴に似ておるな。くく。まあ良い。お前が来る前に二人きた。」
叶にシンか!?
「死んだら絶対ここへ来るのか?」
即答。
「いいや、普通は獄界へ素通りだ。一々見ていたのではキリがないからな。ここへ来るのは稀有な能力を持つ開花していない奴だけだ。才能の浪費、勿体ないからな。」
「んで、俺がその稀有な能力を持つってか。で、俺はどこ行くんだ。」
「偉そうな奴め。まあ、お前の能力は稀有じゃ語れないから、俺様はお前を隣界へつれていくだけだ。無理やりにでもなァ。こい。」
「待ってくれ、俺は、その、家族の元には戻れないのか?」
「当たり前だ。お前は死んだ身だからな。クソが。何故俺様がこんなことをしなければならないのだ!早くしろ!」
そうか、ただ、悲しい顔だけは嫌だから。
ふぅ、まあ、どうでもいいか。
「おい!早よぉ連れてけっ!誘拐犯!」
そのとき急に視界がホワイトアウトした。