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――俺
俺には、どうやら好きなやつがいる。幼馴染みで、命の恩人だ。
俺にはくだらないプライドがある。例えばそれは女の子を守ってあげるのが男の仕事であるとか、告白は男からとか、贈り物はダイヤの指輪で給料三か月分とか、そういうプライドだ。世の中にありふれている安っぽいプライドだ。
それがどうだ。いくら幼かったとはいうものの、川に流されたところを救われ、水恐怖症になってからはとことん守られて、俺は何一つできやしない。
今だって、全ては意味不明なアイツのダイヤ砕きが原因だが、ガキの様に腹を立てて、拗ねているだけなんじゃないか、俺は。
もっと素直になろう。
悪友連中は「邪魔しちゃ悪いよな、ははははは」などと言って雨の日に傘を貸してくれた試しがない。つまり、もうすでにこの瞬間、幸か不幸か俺にとってアイツはかけがえのない存在というやつなのだ。家に帰るにはアイツの傘に入れてもらい、気を紛らせる馬鹿話で盛り上がるしかない。
雨が止んだら謝りに行こう。いや、告白しに行こう。いやいや、もうこの際だからプロポーズしよう。もう指輪も渡したから問題ないだろう。名案だ。
俺は、そう心に誓うと降りしきる雨に背を向けて校舎の中で夜を越えるための寝床を求めて保健室を目指す。
2007.10.15
※字下げと空行の追加を行ったメモ。2026.1.11




