U:u
――君に伝えたいのは
近所で評判の歌姫。文化祭の女神。歌手にならないなんて勿体無い!
それが俺の決闘の相手だ。
普段は地味なカッコして、目立たないことこの上ないアキだが、祭り好きの性分か、事あるごとにその美声を披露しては、老若男女問わず、人気を集めてきた。
今だって、たかが高校の同級生の歌声に、何人も泣いている。オイオイ。
それに比べて俺は、カラオケ採点機能で八十点を越えたためしが無い。平凡そのものだ。コイントスで順番を決めたものの、アレを聞かされた後に俺の出番ってのは、正直酷すぎる。グランドが真っ赤に染まる光景が目に浮かぶ。誰も、俺のために団扇の白い面を挙げる奴はいないだろう。
この際、開き直るか。
そもそも、朝のうちに素直に好きだと告げておけば、とりあえず俺の目的は達成だったんだ。それを勢いに押されてここまで流された(嫌な言葉だ)のが間違いだった。こうなったら、全校生徒の前で砕けることになろうとも、華々しく散ってやるぜぃ。
鳴り止まない拍手とアンコールを背に、アキが朝礼台から降りてくる。入れ替わりに俺が上がる。アキの手をとって。
「ちょっと、ハル君?」
「一番傍で聞いててくれよ。そのまま集計まで出来て、いいだろ?」
覚悟は、決めた。
2007.10.15
※字下げと空行の追加を行ったメモ。2026.1.11




