N:nobody
――誰もいない場所で
雨の間中ずっと校舎にいるだなんて、どうしようもないほど不器用な生き方ね。警報装置の一つでもわざと鳴らせばいいのに、そういうことは決してしない頑固頭。昔からそう、どこまでもカッコつけ。
あの時だって、カッコつけて川に落ちた私の宝ものを拾おうとしなければ、溺れたりなんかしなかったのに。きっと私のこと、恨んでるよね。溺れたのを助けることは出来たけど、厄介なトラウマが残って今もこうして苦しんでいるんだから。
校舎を見上げれば、私たちの教室には少し疲れた顔が見える。目を見開いて、驚いてるみたい。私の雄姿にビビッているのね。普段の三つ編みも眼鏡もないし、なんたって今の私は、伝説の延長だから。むん。
次第に日が昇って明るくなる。水はけが悪いこのグランドでも、お昼までには乾きそうな強い日差しの予感。今日は、雲ひとつない快晴だ。決着を付けるのにはこれ以上の舞台はない。
夜明けの校舎、誰も邪魔するものがいない。純粋に二人きり。私とアイツだけの世界。
「勝負よ! もはや私たちの決着は拳でしかつけられない!」
かんっぺきな宣戦布告だわ。引け目も負い目も、貸しも借りも、みんな終わりにしましょう。
2007.10.15
※字下げと空行の追加を行ったメモ。2026.1.11




