M:miss
――どんまい、俺
ようやく雨が上がったのは月曜日の早朝だった。ちゅんちゅんと鳥が鳴き、タラタラと日が昇る。いい加減にまともな白米を食べたいし、制服を脱ぎたいし、風呂に入って体中洗いたいし、なにより自分が天然ボケだと気付いていないアホに会いたい。くるくると変わるあの顔も、突拍子も無い行動の数々も、俺にはなくてはならないものらしい。どうやら。
とっとと登校時間にならないものか。そしてグランドよさっさと乾いてくれ。
一面が、降り続いた雨のせいで巨大な鏡のようになったグランド。薄っすらと明るくなった空を映して輝き始める。遠くから眺める分には、何てことは無いんだ。水溜りなんて。
ぽけ~っと二つの空を眺めていたら、黒い影がスカートをはためかせて駆けて来る。バシャバシャと水溜りを蹴散らして、波紋を幾百も広げながら、セーラー服に真っ黒なロングスカートという奇妙ないでたち。長髪の、美女。
おいおい、普段の三つ編みはどうした、ビン底眼鏡はどこいった?
黒い髪がなびく。黒いスカートがはためく。赤い太陽が、彼女にスポットライトを当てる。にやり、と唇を持ち上げて、妖しく微笑む物語のヒロイン。
あぁ、俺ってば、とっくの昔からどうしようもないほど惚れてんだな。まるで奇妙な魔女といった出で立ちの美女は目敏くも一目で俺を発見し、ビシッと人差し指を俺に突き立てて叫んだ。
「出て来い! バカアホトンチンカンデクノボウのアホンダラスットコドッコイ変態野郎!」
中身は微塵も変わってなかった。どんまい、俺。
2007.10.15
※字下げと空行の追加を行ったメモ。2026.1.11




