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A:aqua
――水にはいい思い出がない
何を語れって言うのさ。水なんて関わりたくないんだ。知っての通り、俺は根っからのカナヅチだ。近所の川で遊んでいて溺れたの、覚えているだろ?
あれ以来、もう水という水が好きじゃあないんだ。まるで吸血鬼さ。お風呂も、湯船には浸からずにシャワーしか浴びなくなったよ。川や池は当然として、水溜りだって怖いんだ。
水溜りを覗き込んだことはあるかって?
そんなことあるはずないだろう。俺が思うに、水溜りってのは異世界への入り口に違いないよ。そう、雨上がりの水溜り。一番透き通ったやつさ。あの向こう側には、別世界が広がっているんだ。きっと綺麗で、怖しい世界が。ま、覗き込むなんて死んでも御免だから、俺には関係のない話だけれど。
でも、気をつけろよ。ただでさえ空ばっかり見上げて、しょっちゅう転んだり電柱にぶつかったりしているんだから。タダの幼馴染とはいえ、いきなりいなくなられたら……困る。
いや、なんでもない。別に深い意味は無い。全く無い。無いったら、ない。その緩みきった顔で俺の顔を覗き込んでくるな!
2007.10.15
※字下げと空行の追加を行ったメモ。2026.1.11




