表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章完結】異世界からの言葉  作者: クサフグ侍
第1章 異世界のライバル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/26

7.問いかけ

 やはり放置した方が良いかも知れない。ただの冗談だった事にして、異常な事に近寄らない方が賢明だろう。

 だけど、異常な事が確認出来てしまったと同時に、それは日記の内容が真実だと思えてしまう。最初は異世界に喜んでいたかも知れない、今は困難に直面してる日記の主。

 見なかった事にして、アプリの事は忘れる。もしくは、このまま日記の更新を追いかけて推移を見守る。

 これなら、危険は少ないかも知れない。だが、見捨てた事を後悔しそうだった。


「そういえば、最初にあのアプリ見つけた日に、ネットで関係する情報は無いか調べたんだ」


 俺はスマホを手に取りながら話し始めた。

真美が真剣な表情で聞く。


「で、どうだったの?」


「似たような体験をした人が掲示板にいたんだ。誰かの書いた日記が見えて、それが助けを求めてる内容だったって。そこから気になって、俺も確認してみようって思ったんだよ。」


 真美が興味を持って、上半身を乗り出してくる。


「その日記の内容。どんな事が書いてあるの?」


 俺は日記アプリが真美には見えないことを思い出し、最初の日記の文章を読み上げた。


「最初は7月10日、『いやっほー!異世界に来たーーー!!』」


 真美は声を漏らす。


「え、たったそれだけ?短っ!」


「だろ?意味わかんなくて最初は俺も笑ったよ」


 そう言いながらも、続きを読み上げ始めた。


「7月12日の日記は、『360度地平線で何も無い。とてつもない広さの平原だ。水も食料も見つからず、行き倒れ直前になった。キャラバンに拾われ助かった。道っぽい所を歩いていたのが良かった様だ。キャラバンの馬は、馬じゃなくて痩せたサイみたいな生き物だった』」


「いきなり遭難してるんだ。キャラバンって馬車とかで移動して商売してる人達の事だよね? 馬じゃないみたいだけど」


 真美が笑いながらコメントした。


「15日は『ひたすら退屈な景色だったけど、途中で丘を通った!丘は景色がよくて風が涼しかった。涼しいの最高!遠くまで見えても何も見えないのは絶望だったけどね。キャラバンの人達との話が唯一の娯楽。色々聞いたけど、魔法もモンスターも居るっぽい。自分の事は殆ど覚えて無いって事にしている』」


「本当に広い場所みたいね。それに魔法にモンスターってゲームみたい」


 真美はRPGも好きだもんな。興味ありますって顔してる。


「16日、『キャラバンが集落に到着。取り引きしてる。このキャラバンは、どんな周期で集落を回って居るのだろう? 唯一の物流みたいだし、この平原の外の国に所属しているキャラバンらしい。キャラバンの人達と違って、この集落の人、身体が小さい。草原の民と呼ぶ種族らしい』小人族なのかな、草原の民って?」


「どの程度の身長かな。小人サイズから、小柄な成人、幼い子供ぐらい。物語だと色々居るよね」


 真美が想像して頷いている。真司は続きを読み上げていく。


「19日、『集落に残る事にした。力仕事とか手伝えば住処と食事をもらえる約束。ここでは俺も一番の大男となる。昼飯はパンとスープ。肉が入っててうまかった!キャラバンは数ヶ月で回っているらしい。延々と移動する生活は辛かった』」


「キャラバンと別れるんだ。住処ってサイズ小さそうだよね?」


「22日、『不思議な二人組が集落を訪れた。食料を補充したら、すぐに旅立ったが森の民らしい女の人と、記憶喪失な男性。女性はエルフに見える!エルフきたーー!なら、男性は主人公役だな!』」


「エルフと記憶喪失の男。確かに物語みたい。ちょっと盛り上がってきたね!」


 真美が目を輝かせて言う。


「そして24日、『集落が襲われた!怪我人だらけ。命を落とした人も。集落にいなかったから助かったけど、お世話になってる人達が酷い目に。異世界に来て初めて怖いと感じている』」


「一気にシリアスになったね」


「25日は、『また襲われるかと警戒しつつ、出来る手伝いを行う。埋葬や瓦礫の片付け。何が目的だったのだろう。食料が目的なのか?怒りと恐怖を感じる!チートが欲しい!』だな」


 俺は一息吐く。真美の反応が面白くもあるが、改めて読んでも本当に相手は異世界に居ると感じる。


「チートを求めてるのって、もしかして切実かも?」


「そうかも。危険に対する力が欲しいのは理解できる。次が最後で26日、『昨日の午後、大きな揺れで気絶した。目が覚めたら、また転移したのか?集落ごと?周囲が全部森に囲まれてて、元の平原じゃない!』ってところで止まってる。」


「なんか凄い事になってるね。集落ごと転移?」


 真美は深く息をついて、頷く。


「たしかに引き込まれるけど。これ、本当に誰かの実体験だと思ってるの?」


 真美にそう尋ねられて、俺は少し考え込んだけど、結局は小さく頷いた。


「うん、多分本物なんじゃないかなと。もし本当に、誰かが異世界とか訳分かんないとこに飛ばされてて、それで俺と、この日記アプリを通して繋がってるんだとしたら。そう考えたら、どうしたら良いかわからなくなってさ」


 真美は真剣な顔で俺を見つめる。


「じゃあさ、もしそれが本物だったとして。真司はどうしたいの?」


 言われて、俺はすぐに答えにつまる。


「そこが分からないんだ。相手が困ってるなら、助けたい気持ちもある。でも変なことに深入りして、逆に巻き込まれたりするのも怖いし。現状で自分に何ができるのか、正直わからない。それで、真美に相談したくて」


 部屋の空気が少し重くなる。二人でしばらく黙りこくっていたが、真美がふと思いついたようにこちらを見た。


「それさ、真司は書き込めないの?」


「え?」


 言われて初めて気づいた。俺はずっと日記を『読む』だけのアプリだと思い込んでいた。でも、普通日記アプリって『書く』のが当たり前だよな。

 慌ててアプリの画面を確認してみると、確かに下の方に「書き込み」のボタンがちゃんとあった。


「ある。書き込む機能、ちゃんとある」


 それを伝えると、真美も驚きながら続ける。


「じゃあ、真司が書いた日記も、相手に届くかもしれないってことだよね?」


 そうか。もしそうなら、この日記アプリは、一方的に眺めるだけのものじゃなく、やりとりするための窓口なのかもしれない。

 一気に胸の鼓動が早くなっていくのを感じながら、俺は真美と顔を見合わせた。


 スマホの画面を前に、俺と真美は顔を突き合わせて相談した。

 もし本当に相手に言葉が届くなら、何を伝えるべきなのか。


「まずは相手の名前、状況、望み。色々知りたいけど、いきなりこっちが名乗るのも考えどころだよね」


 真美は腕を組みながら言う。


「でも、こっちに手助けの意思があるって伝えれば、警戒されないんじゃない?」


 俺は頷きながら、アプリの書き込み欄をタップした。画面の右上には『0/200』という小さな表示がある。


「これ、文字数制限かな?」


 不思議に思って少し文字数を調整しつつ、わざと長めに入力してみたが、どうも単なる文字数とは感触が違う。

 真美が「データ量の表示かもよ」と気軽に言う。俺も納得して、表示内に収めるよう慎重に文章を整える。


『初めまして。私は日本の高校生です。この日記アプリは何ですか?貴方は本当に異世界に居るのですか?何が出来るか不明ですが、助けが必要なら力になれるかも知れません。この文章が届くなら返事をお願いします』


 見直しながら、二人で少し興奮して話す。


「もしかして、本当に返事が来たりしたら。やばいよな」


「こんな非現実、普通なら絶対ありえないって」


 入力が終わり、俺は指先に少しだけ力を込めて、送信ボタンを押した。

画面が軽く一瞬だけ暗転し、送信完了の表示が出る。


 さて、返事は来るのか。

 俺も真美も、現実離れした状況に心がざわついていた。ふたりきりの部屋が、まるで物語の序章みたいな空気に包まれているようだった。





最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

★やブックマーク、感想などで応援いただけると、とても嬉しいです。次の更新もがんばれます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ