黒の口1紀 世界線
何もかもが赤子だった。
白の目から100世紀、
創星主たるビグヴァルたる由縁とは。
君は知っているかな?覚えていないだろう?そう、分からなかったのだ。
君が目を覚ましたそこは膜であり、“母”と呼ばれるものの“胎内”だったのだ。
君はね、前世で倒れていたんだよ。
『オーズ、お前はオーズ・ルクスだろう?』
『え?あなたは誰ですか?僕は・・・どうしてここに?』
いいえ、僕はあなたを知っています。だけどその笑顔がこちらへ振り向かないのでは、言葉を濁すだけなのです。教えてください、次の僕が誰なのかを。知っているのはあなた自身なんでしょう?
『マーズ、お前はマーズ・アイシュだろう?』
『え?あなたは誰?私は一体、何を言っていたのでしょう・・・』
勿論、私はあなたを知っています。でもね、時間が過ぎれば人は遠ざかるというわ。そんな日々を送るうちに目前の花を見失わないようにね、走り過ぎてはそこへ何が在るのかブレてしまうでしょう?
だから振り向かないで歩いていると、君たちは以前に離れていた存在に気付くんだね。
どうにでも振る舞えるから、時間が過ぎるのを見送るなんて、生きているって証は時に惨いものなんだね。そうでもしないと君を見失いかねないから、宇宙へそっと箱舟に託したんだ。
『嘘を行っていては、嘘を言い出す。その嘘から産まれる者はずっと嘘吐きでなくなり始めるんだ』
『いい事言うと、それ以上の文句も増えないのだし、いいものを受け取れば誘いに討ち負けてしまうの』
創造的なのは良い。だが想像以上の事を見つけては物質に打ち負かされ砕け散るのだ。
最初で最後じゃ面白くもなんともないだろう。だけど君だったらいい加減に目を凝らすだろう。
ずっとそうして居たいように、自らに賭けに出るんだろう?
調子に乗るのもいい加減にしなさい。壊れて惨めになって翔ってくるだけじゃない。
話にならんな、いつも平気な顔をして嫌な思いをするのは分かってるはずだ。
―――ふぅ~~~『あぁ――』・・・ポツ・・・キラン!
このようにね、幾つもの世を潜り抜けてはイーシュル、ベーシス、ゴリューザいろいろと巡って来てね、君の意志だけが記憶されていたんだ。それを世界線と呼ぶのかな?その頭の中にある脳が線を張り巡らせていたんだよ。呼ぶ声がしたのを思い出せたのだろう?パチリと、開いただろう―――?
「私はビグヴァルに辿り着いた」
これまで幾つもの世を生き抜いていたのだね?勿論覚えているよ。それで忘れては思い出せば“涙”が出るのだ。それは痛みというものだと誰かが教えてくれたのだが、もう私一つしか居なかったのだよ。
「君は産まれたばかりの赤子だったのだよ」
私も生まれて間もなく、そこで出逢った。それは天使とも名語っていた。それも“母”の揺り籠に揺られてやって来たのだ。天使は私に伝えてきた。
「その意志を以って“父”になりなさい」とね。さぁ、温かくなってきたな。君はこれから多くの“魂”を創らなくてはならなくなったのだからね。
「たましい?その魂はどこかへ向かうのかね?」
私は分からないまま、突然の意志と記憶に驚いているのだ。とてもじゃないが私一つでは何も成し遂げられぬのだ。教えてくれニューファザーよ。私はこれからどのようにすればよいのだ?
ズドオオオォオオオ――――・・・キュウアアァ――――・・・
「君の音、君の声、たった一つのその意志、“迷い”が赤い線を打ったのだ」
見てみるのだ。その目が口となったことをその記憶から伝い、その手を入れてみたまえよ。抜けるのだ、それが“黒の口”と天使は呼んでいた。その“時”というものが白から黒へと向かってゆくのだ。数えてみよ、君たるビグヴァルの“霊体”を使ってこの宇宙全ての空間を解いてみせるのだ。
幾度と目覚めては倒れて、呼び覚まされたその光こそ“紀”の時を刻むのだろう?




