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「」を二つ重ねることが誤りだということは知っているのですが、しかしこれ以外に声が重なったことをどう表現すればいいのかがわからない・・・

 その日の夜、私の部屋にお母さんとお父さんが来てくれた。これは非常に珍しいことだ。


 私が生まれてから両親がこの部屋に来たのはお父さんが8回、お母さんは18回だ。お母さんの方が多いのはお父さんが仕事が忙しくて来られないからだろう。お父さんが私の部屋に来るときは、いつも疲れた顔をしていた。

 なので二人そろってこの部屋に来たのは私の知る限り非常に珍しい。というか初めての経験である。


 そうな二人の表情は真反対だ。お父さんは疲れと困っ多様な表情が混ざってどことなく辛気臭い顔をしているが、お母さんの方はその美少女っぷりに拍車をかけるほどキラキラした笑顔をしている。


「あう~、きゃっきゃ」

「クラちゃんは元気ね~。抱っこするわよ~」


 お母さんが私を抱き上げてくれる。温かい。私のことを大切に思ってくれているんだとわかる。

 この人の子に生まれて、本当に良かった。


「う~」

「ふふ、くすぐったいわよクラちゃん。お眠なのかしら?」


 あとお母様、見た目に反して結構ご立派なものをお持ちであった。こうして顔をうずめるとわかる。とてもふわふわしている。

 私も期待しておこう。前世の私はないとは言えないがあるとも言えない絶妙なラインだったのだ。


 持たざる者には「あるだろ」と言われるが、持つ者には「ないね」と言われる中途半端な人間、それが私だった。

 しかし今世は違いそうだ。これならば更衣室で非常に居心地の悪い思いをすることもあるまい。


「ほらペイン。あなたもちゃんと抱いてあげなさい」

「う、俺もか?」

「当たり前でしょ。このままじゃ、時々会いに来るおじさんにしかならないわよ」

「そうか・・・いや、しかしな。俺は何度もアウリクラを泣かせてしまっているし」


 だって下手くそなんだもん。赤ちゃんの体はデリケートなのだ。強く抱きしめられると、息が詰まって苦しいし肌も痛い。


 ただ表情を見る限り、お父さんも私を抱きしめたくないわけじゃないみたいだ。

 むしろその逆で、私を抱けるなら抱きたいみたい。それでも素直に抱きしめようとしないのは、お父さんに自分が力加減が下手だという自覚があるのと、それで被害を受けるのがお父さんではなく私だからだろう。


 全く、仕方のないお父さんである。練習しなければ成長などできやしないのだ。


「うぅ~」

「ほら、クラちゃんも抱いてほしいって手を伸ばしているわよ」

「・・・わかった」


 優しく、優しくね。


「こ、こうか?」

「それじゃあ首がぐらぐらして危ないわ。まだ首が据わっていないから、首をちゃんと支えてあげて?」

「こうだな」

「ええ、上手よ。ほら、クラちゃんも笑っているわ」


 うんうん、ちょっと抱きしめる力は強いけど、今までと比べたらいい感じだ。

 お母さんとは違う温かさ。守ってくれる温かさだ。


「きゃっきゃっ」

「おお・・・!見てくれエリシア!初めて泣かれずに抱っこができたぞ!」

「あ、だめよペイン。大声をあげちゃうとクラちゃんがびっくりしちゃうわ」

「うぅ~、おぎゃあ!おぎゃあ!」

「「あ・・・」」


 いや、私だって泣きたくて泣いてるわけじゃないのよ。でも体が大声に反応しちゃうの。こればっかりは許してほしい。


「あぁ、よしよし。ごめんねクラちゃん、驚かせちゃったわね」

「すまない・・・」

「私は大丈夫だから、ペインもあやすのを手伝ってちょうだい」

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

「わかった。・・・エリシア、あやすとはどうすれば・・・?」

「・・・変顔でもしていて頂戴」

「へ、変顔・・・こ、こうか?」


 う~ん素晴らしいひょっとこ顔。お父さん見た目に反して結構ノリいいな。流石に面白くて笑っちゃう。


「きゃっきゃっ」

「む、笑った。笑ったぞエリシア!ほれ、こんなのはどうだ!?」

「う~」

「はいはい、大声は控えてね」

「ああ!」


 ダメじゃん。全く、仕方ないお父さんだなぁ。

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