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教会と聞いて思いつくイメージは真っ白でステンドグラスがきれいでかなり大きいというのがわつぃの思いつくイメージなのだが、今目の前にある教会は私のイメージとほとんど変わらないものだ。
全体が真っ白で、時々あるステンドグラスにはおそらく初代の聖女を模しているであろう女性が大きく描かれている。日の光の当たり方と合わさってとても幻想的な光景だ。
この国の教会は、教会といっても神様を信仰しているわけではない。他の国では神を信仰しているがこの国は建国から勇者の威光を集めたからか、神という存在はあまり重要視されていない。
とはいえ神様が信仰されていないのかと問われるとそれは否で、土地によっては普通に土地神を信仰していたりする。この辺りは前世の日本に近いかもしれない。絶対的な1柱の神がいるのではなく、様々な事象に神の存在を感じ、土地ごとにその神を信仰している。
ならば各町にある教会は何を信仰しているのか?それは簡単で、この国を興した勇者と共にいた聖女様を信仰している。
これは過去の聖女様が王家が絶対だと不測の事態があったとき、もしくは王家が愚物の集まりになった時、緩やかに滅びを待つだけという状況にならないように、自らの威光を用いて王家に対抗できる組織として教会を作り上げたと伝えられている。
なのでこの国の教会はかなり権力が強い。町によっては2つ3つあったりするし、辺境のたどり着くことすら難しい村にすら教会がある。
財力も並みの貴族では太刀打ちできないくらい持っているし、その材を蓄えるだけではなく『氾濫』の時などはいの一番に食料をもって救援に向かうというのだからすさまじい。
彼らはほとんどが平民で魔力が無いから、戦闘になれば命の危険すらあるというのに。
そんな教会の入り口でやってきた私たちを出迎えてくれたのは、白いおひげを豊かに生やした老齢のおじいさんだった。
杖をつき線も細く今にも倒れてしまいそうだが、その目にまだまだ現役だということを示すように生命力があふれている。
「ようこそお越しくださいました、ブルーム侯爵閣下」
「うむ。突然の訪問で申し訳ないが、聖女殿以外に頼るものがないのだ。聖女殿には迷惑をかけるが・・・」
「構いませんとも。聖女様は心優しいお方、必ず治してくれましょう。それに、子を想う親の気持ちは私も存じております。・・・そちらの座られているお嬢様が?」
「ああ、娘のアウリクラだ」
「お初にお目にかかります。アウリクラ・アリア・ブルームと申します」
体が満足に動かないので首だけのあいさつだ。学んだカーテシーも全く役に立たせることができないが、今私にできる最大限の礼儀がこれだった。
「これはご丁寧に。ラーゼル・フォンと申します。司教の位をいただいております。さぁ、立ち話もなんでしょう。お部屋に案内します」
「助かる。聖女殿はどちらに?」
「先ほど重症患者が運ばれてきまして、そちらを治癒してからこちらに来る予定です。ご覧になられますか?」
「よいのか?」
「ただ待つのは退屈でしょう。病人に大切なのは刺激ですよ。生きる希望は少しでも大きいほうがいいのです」
「・・・アウリクラはどうしたい?」
お父様の問いかけ。貴族令嬢としてはおとなしく待っているべきだと思う。本人が動き回るというのは、余裕がないと感じられてしまうのであまり良いことではない。
ただ、私個人としては見られるなら見たいと思う。貴族として相対する聖女と平素の聖女は違うだろう。今後貴族としてしか会えないなら、平素の聖女のことを知ってみたいと思う。
「ぜひお願いしたいです」
「わかった。ラーゼル司教、案内を頼めるだろうか?」
「もちろんです。ではこちらに」
「お嬢様、失礼します」
「お願いね、カリーナ」
歩き出した司教の後ろをついていく。一緒に行くのは私の家族と騎士団長、それにブルーム侯爵家の護衛が数人。貸してもらった護衛はここに置いていく。一般の人も多くいるのに、鎧をガチャガチャさせた騎士がたくさんいたら何かあったのかと警戒させてしまう。
内装としては、教会の中に入ってみて分かったが天井がかなり高い。
色合いとしては外観と同じように白を基調とした色合いをしている。
時々飾られている肖像画は歴代の司教だろうか。ほとんどが男性でお年を感じさせる白いおひげを装備している。
ラーゼル司教も白いおひげを装備しているし、教会の偉い人は白いおひげを装備しなければならないというルールでもあるんだろうか。
「聖女様はこちらにいらっしゃいます」
そうして連れてこられたのは病室だと思われる場所。その中心に、求めていた彼女がいた。
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