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病気なんかに負けません!  作者: あるにゃとら
闘病記

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 決闘が始まり、怒りのまま飛び込んでくることを警戒して少し下がる。どうせ決めるときは一瞬で、空いた距離を詰めるのもまた一瞬だ。

 多少距離が開いたところで、私の身体強化の前では意味はない。家の人間以外の戦い方も知りたいし。


 だが彼は私と同じように下がった。私を子供と侮って飛び込んできてもいいものを、存外冷静だったらしい。腐っても成績優秀者という事か。


 私と同じように身体強化を使って下がった彼の体を纏う光は淡い茶色。土の適性持ちらしい。


 対人戦において、相手にしたくない属性というのが二つある。一つは風で、もう一つが土だ。何故かというとこちらのリズムを崩しやすいから。


 私の戦闘経験は4人しかいないし、その全員が魔法を使わず戦ってくれていたが、それでも魔法を使った戦闘というものが知りたかった私は全員にお願いした。一度だけでいいから魔法を使って戦ってほしいと。


 そうして戦って気づいたのだ。火属性で直接攻撃されるより、風や土で妨害された方が厄介なのだと。


 例えば土属性は走っている最中に足元に土を隆起させて転ばせてくる。それだけで戦っている私はつらいというのに、空中に極小の土塊を置いてこちらの集中を削いでくるし、そちらに気を取られたら背後を取られて負ける。


 風の場合は土ほど直接的じゃないが、私が動くことで同時に動く風を感知してこちらの動きに対応してくる。どれだけ早く動こうとも関係ないのだ。さらに走る私自身に風を当てて動きを遅くしたり、目に見えないのをいいことに目潰しまで仕掛けてくる。


 なので私は、この戦いにおいて土によって似たような妨害をされることを警戒しなければならない。そして隙ができない限り、こちらから飛び込むことはできない。


 高速で動き回って攪乱してから飛び込んでもいい、と考えていたらここで彼の口が動いた。魔法が来る。


「『 ꯃꯜꯇꯤꯄꯜ ꯑꯥꯔꯊ ꯄꯥꯔꯇꯤꯀꯂꯁꯤꯡꯅꯥ ꯌꯦꯛꯅꯕꯥ ꯑꯗꯨꯕꯨ ꯁꯣꯀꯍꯜꯂꯤ꯫』」


 瞬きの間に彼の周囲に発生した土塊が私めがけて突撃してくる。数はおよそ20といったところ。私ができる選択は躱すか迎撃するかの2択だ。


 だが私がとる選択は第3の選択肢。突撃しながらの迎撃だ。なぜかって、これはチャンスだからだ。一度魔法を使ったら、発動中はイメージを固めていないとブレてしまうので、私を止める別の魔法を使うことは難しい。今この瞬間の吶喊を防ぐ手段を彼は持っていない。


 刀は本来、打ち合うような武器じゃない。刃が薄いからかけてしまうのだ。だがこの世界はファンタジー世界、前世の世界に存在しない鉄がある。


 それがとある魔物から取れる鉄だ。その魔物は鉱物を食べて育ち、体内に食べた鉱物より優れたものを生成する。この刀はその鉄を用いて作られた。


 名をエッセンクロコディール。洞窟にすみ、群れを作り他と争わずむやみやたらに他を害さないが、一度気分を害すと地の底まででも追いかけてきてかみちぎられると襲われる、20mほどある巨大なワニの魔物である。


 なので多少打ち合う程度問題じゃない。ましてただ飛んでくるだけの土塊なら、簡単に切り払うことができる。


「ふうっ!」

「突っ込んでくる気か!馬鹿が!」


 走りながら飛んでくる土塊をよく見る。手のひらほどのサイズの土塊だ。身体強化もあれば十分切り払える。

 私の道を邪魔する土塊だけを、よく見て、最低限の動作で切り払う。


「『破邪桃葉』」


 一つ、二つ。私の身体に当たりそうな数個を切り払い、彼の懐に向かって吶喊する。

 そこまで距離が離れていたわけじゃないからもう目の前だ。私のあまりの速さに見失い、何もできずただ持たれていただけの槍がすぐ目の前にある。


 その槍の柄の部分を上に向かって弾きながら、空いた股の間を潜り抜ける。彼は弾かれた衝撃で後ろに回った私に対応できない。後は簡単だ。


 勢いそのまま踏み込み背中に突撃する。完全な不意の一撃、彼は何の抵抗もできず地面にうつぶせに倒れた。


「『ꯄ꯭ꯔ꯭ꯏꯊꯤꯕꯤ, ꯅꯍꯥꯛꯀꯤ ꯁꯔꯨꯁꯤꯡ ꯑꯗꯨ ꯀꯅꯈꯠꯍꯅꯕꯤꯌꯨ꯫』」


 初めておじい様に勝った時の魔法を応用した魔法。あの時は自分の足だったが、いま止めるのは彼の四肢だ。


 地面から膨れ上がった土が彼の四肢をきつく締めあげる。やはり土属性を使うならもとからある土を利用できた方がイメージしやすい。空中に土塊を浮遊させるとか、あれはどんなイメージで使っているのだろうか。あれは土どころか重力を操っているのではないかと思うのだ。


 と、最後に関係ないことを考えてしまったがチェックメイトだ。いくら身体強化があっても、1mmも動かすことのできない状況から拘束を外すことはできない。


「何が・・・」

「私の勝ちです。降参、していただけますね?」

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