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ローズちゃんを探しに行ってもらっていたら、呼びに行ったメイドさんに「何か問題が起きているようです」と言われたのでやってきた。
そうしたら恐らく15歳程度の男性がローズちゃんの腕をつかんで恫喝しているではないか。しかも詳しく話を聞いてみれば、男性は意味の分からない理由でローズちゃんに求婚を始める。
さすがの私も腹が立って売り言葉に買い言葉。流れでそのまま『決闘』を始めることになってしまった。
ただ私に負けるつもりはない。負けるとはイコール貴族としての死が近づくという事でもあるから、負けるわけにはいかないのだ。
それにローズちゃんに言ったこともある。彼からは死の気配を全く感じない。
これまで私が訓練で戦ったことがあるのは4人。
おじい様、お父様、ブルーム侯爵騎士団団長、ブルーム侯爵騎士団副団長の4人だ。この4人は私では魔法を禁止にしてもらわないとまともに戦うことができないくらい強いのだが、この4人には私から見て一つ共通点があるのだ。
それが先ほどローズちゃんにも話していた死の気配というもの。一度死んだからかそれともこの身体はそういうのを感じやすいのかわからないが、とにかく私は死の気配というものに敏感なのだ。
そして先ほど出した4人というのは、もれなく全員その死の気配というものが強い。
特にすごいのがおじい様。知れば知るほどとんでもないのが伝わってきて、今まで出会ってきた人の中で一番死の気配というのが凄まじい。本気の敵意を向けられると一瞬死を幻想するレベル。
その次にすごいのがお父様と騎士団長。本気の敵意を向けられると体中鳥肌が立つ。
最後が副団長。背中の冷や汗が止まらなくなる。
こう比べてみるとおじい様が凄まじい。すでに隠居しているというのに、現役で戦闘を行う騎士団長よりも上だ。騎士団長も副団長もおじい様に対しては雇い主以上の敬意があるように感じるし、おじい様に稽古をつけてもらっている私を「羨ましい」とずっと言っていた。
その点で比べてみれば、目の前の男は死の気配などかけらもない。あれほど激しい怒気と敵意を向けられたというのに、私は彼に危機感というものを全く覚えない。
とはいえ油断も慢心もする気はない。そもそも彼が学園で成績優秀だということが正しいなら、経験という面で私は絶対的に負けている。なぜなら私は彼の半分ほどのせいしか生きていなくて、対人戦で戦ったのは訓練で戦った4人だけ。
おまけに全員魔法を禁止しており、かつ私を殺すような攻撃もできないのだから、枷に枷を重ねてやっと私が足元に立てるというレベルだ。
なので私は経験という差を埋めるため、経験という値が関与しない土俵で戦闘をしなければならない。経験が関与しない土俵とは何か?私が考えるに、それは認識外からの一撃だ。
いくら経験があっても、認識して対応できなければどうしようもない。
おじい様のように一部対応してくる人外もいるが、あの人たちは経験した数が違いすぎるので今この場においては考慮しないものとする。
「ふぅ」
刀に触れ心を落ち着かせる。男が体をほぐして戦闘準備をしているのが見えるが、それ以上に目を引くのは立会人の老人だ。
この人、やばい。話しかけられて初めて認識できたくらい影が薄いのと反対に、纏っている死の気配が尋常じゃない。死とはもっと冷たく残酷なものだとこの身で実感している私ですら気配だけで死がすぐそこにあると錯覚してしまう。
今この場にいる人は老人に何も感じていないのか?私は老人と目が合うだけで身体中が震えるというのに。
「ふん。威勢のいい言葉を吐いておいて震えているではないか。今更怖気づいたか?」
「はい?」
何を言っているのだこの男は。誰があなた程度で怯えると?私が意識しているのはすでにあなたではなく、私たちを見ているそこの老人だ。
「何か勘違いしていらっしゃるようですが。すでにあなたは眼中にありませんので」
「・・・そうか。おいお前。開始の合図をしろ」
「ええ」
たがいに武器を持ち構える、私は日本刀、相手は一般的な形状の槍。射程で言えば私の方が不利と言えるだろう。だが、射程が長いほうが勝負に勝つなどという道理はない。
「どちらかの降参、もしくは死亡するまで決闘は行われます。魔法、武器の使用は構いません。見物人に危害を加えるような魔法の使用は避けるように。双方、名を」
「グリーン・ライライ・ピーピン。意義ある決闘を行うことを誓う」
「アウリクラ・アリア・ブルーム。意義ある決闘を行うことを誓います」
「では、初め!」
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