36 ローズ視点
「だから!お前は俺の女になれと言っている!」
「いえ、ですからそういう話は・・・」
「なぜ受けん!俺は強い!俺と結婚すれば安泰だ!」
なぜこうなったのだろう。アウリクラ様の誕生パーティーに呼ばれて久しぶりに会えて幸せだったのに。
私の目は可能性の未来が見える。人を色で判断できるお父様の遺伝らしい。初めて人の未来が見えたときは不思議な感覚だった。夢を見ているようで、驚愕もあってその場から動けなかった。
その後お父様と話をして、今では多少制御が効きむやみやたらに見ることはなくなっている。
だけど制御が完全ではないので、目の前の男性を見たときに彼に怒鳴られる未来が見えた瞬間、私はあわてて踵を返して別の席に行こうとした。
でも間に合わず、私を一目見た彼に「俺は強いから」と求婚されている。訳が分からない。強いからなんだというのか。それが大切なことは知っているけども、それだけが大切なわけではないのに。
なぜ私はいつもこう求婚されるのだ。先日も私に一目ぼれしたといって求婚してくる同世代の男の子がいた。それも正直嫌だったけど、この人のように怒りながら迫ってくる感じではなかった。彼はもっと優しかったし、強さ以外の自分を見せようとしていた。絵がうまいとか、領地の魚がおいしいとか。
すでに10分ほど言い争いをしているので、周りには何があったかと様子を見に来る人で埋まっている。せっかくのアウリクラ様のパーティーを台無しにしてしまって申し訳ない。
アウリクラ様はとてもやさしい人だ。初めて会ったときに見えた未来は白っぽい髪の色をした女性に抱き着いて泣いている様子だった。
当時の私はその女性が私に見えてなんだか気恥ずかしくなってしまい逃げ出したのだけど、それでもアウリクラ様は私に話しかけてくれて、そろばんという便利な道具を私に与えてくれた。
数字が苦手な私が逃げ出さずに勉強できたのはアウリクラ様のおかげだ。
「・・・わかった。こうなれば実力をもって受け入れてもらう。アンコート伯爵令嬢、あなたに『決闘』をも」
「何かございましたか?」
人込みを割ってアウリクラ様が様子を見に来てくださった。男性がかなり大きな声で話していたので、遠くにも届いていたのだろう。
「そちらの方はピーピン伯爵家の方ですね?何か問題でもございましたか?」
「アンコート伯爵令嬢に誓いを受け入れてもらえず、『決闘』の申し込みを。ブルーム侯爵令嬢様は彼女と友人なのですよね?どうでしょう。彼女に誓いを受け入れてもらえるよう説得してはくれませんか?」
「・・・誓いというのは婚約のことで間違いないでしょうか?」
「もちろんです。私は彼女に妻となってほしいのです。私は学園の戦闘実習でも優秀な成績を収めておりまして、必ず彼女を幸せにすることができます」
気持ち悪い。自分のために私の友達のアウリクラを利用しようとしている。
それに戦闘実習が優秀だから幸せにできるは意味が分からない。守る、ならわかるけど、ただ強いだけで幸せにできるわけないだろうに。それにすら彼は気づいていない。
「お断りさせていただきます。彼女をあなたが幸せにできるとは思いません」
「なぜです?先ほども言いましたが、私は戦闘実習で優秀な成績を収めておりまして、強さには自信があります」
「強ければ彼女を幸せにできると?」
「もちろんです」
「わかりました。やはりは私はローズ様を説得することはできません」
「・・・なぜ」
「あなたが強いだけだからです」
「・・・私が強いことに価値がないと?」
「そこまでは言いません。が、それ以外のあなたの魅力を私は理解できません」
「アウリクラ様」
アウリクラ様の横に移動し小声で話しかける。流石に言い過ぎだ。これではアウリクラ様が侮辱したとして決闘を申し込まれかねない。
「ね、ローズちゃん。私結構怒ってるの」
「アウリクラ様?」
「やっと見つかったと思ったらうちのパーティーで問題を起こされて、その間に紹介しようとした人はどこか行っちゃうし、しかもあの人は意味の分からない理由でローズちゃんを幸せにできると宣うし」
「でも、このままじゃ侮辱したとして決闘を申し込まれて・・・」
「上等よ。私、先日おじい様に勝って実力に関してはお墨付きをもらっているの。学園で優秀な成績を収めた程度じゃ負けないわ」
「でも、これでもし強かったら」
「大丈夫よ。だって、」
そう言いながら、アウリクラ様は男性に目を向ける。私も釣られて目を向けるが、彼は怒りのあまり病気かと思うほど顔が真っ赤だった。握りしめた拳は血管が破裂しそうなほど怒りで膨張している。
「・・・ブルーム侯爵令嬢!今この場で、あなたに『決闘』を申し込ませてもらう!」
「構いません。あなたが負けた場合、今後アンコート伯爵令嬢に近づくことを禁じます。私が負けた場合はどうしますか?億が一もないと思いますが」
「おっ、おまえぇぇぇっ!上等だ!お前が負けたら命をいただく!」
「どうぞご自由に。それでは外へ行きましょうか。立ち合い人は・・・」
「私がやりましょう」
そう言いながらこの場に出てきたのは、60代ほどの年齢のおじいさんだ。特筆すべきは目だろう。体全体の弱弱しい印象とは真逆の印象を持たせる、ギラギラした光を放っていた。
「・・・も、申し訳ありませんが、私はあなた様を存じておりません。お名前をうかがっても?」
「ほほ、それはこのパーティーが終わってから、おじい様にお聞きください。では行きましょうか」
そう言いながら老人が外に向かって歩いていくのを、私たちもついていく。その様子はお客とは思えないほどなじんでいて、この家の人間かと思うほど自然だった。
その後ろを男性もついていく。時折こちらを見ながら移動しているのは、私たちが逃げないか見張っているのだろう。
「アウリクラ様、お怪我をする前にどうか棄権なさってください!私は大丈夫ですから!」
「ダメ。それじゃローズちゃんが幸せになれないわ」
「でも・・・」
「さっきも言ったけど言ったけど、あの程度の男なら負けないわ。だって・・・彼からは、死の気配を全く感じないもの」
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