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その後も私の元へは多くのパーティー参加者がやってきた。そのほとんどはお父様の知り合いがほとんどなので私のことも好意的に見てくれている。
ただ話す人が毎回私のことを「文武両道の神童」と過剰に褒めてくることだけは困った。私は実際のところそんな人間ではないが、かといって否定するのもせっかく褒めてくれた方のメンツを潰す様で申し訳ない。
アイン様のように子供の方が言ってくるならまだ否定してこれを機に友人になってほしいと距離を縮めることができたが、大人だとそうもいかないのだ。
なので私は噂通り神童を演じることとなってしまった。といっても初めに見せた魔法だけで神童だともてはやしてくれるので、あとはさらっと挨拶と少しの会話をするだけなのはよかった。
ただなぜ少し会話をしただけで「噂にたがわぬ神童っぷりだ」と評価されるのはなぜなのか。そう過剰に褒められては申し訳なさよりも気恥ずかしさがやってくる。
これ以上に困るのはその褒めてくださった方に息子さんがいたときだ。話の流れでさらっと息子を紹介しそのまま婚約を進めてくる。私はまだ7歳だ。あなたの紹介したその人も7歳だよ。
たまにいる酷いのはまだ3歳の男の子との婚約を進めてくることもある。いくらお父様が参加する人を厳選しているといってもそういう人は現れる。
前世基準なら7歳での婚約などまずありえないといえる。ならそもそも7歳など小学校2年生、人を好きになるとかそんな感情などかけらもない。あの頃は明日のことだけが楽しみで将来のことなど考えることはない。
ならば今世の婚約事情はどうか。正解はこちらの世界基準でも早すぎる、だ。ローズちゃんに一目ぼれして求婚している彼は個人で求婚しているらしいが、親がかかわってくるとさすがに子供の軽い約束ではなくなって話が違ってくる。
この世界での婚約は基本的に学園に入ってから結ぶ。何故かというと、学園生活を通して実力を知ることができるからだ。実力至上主義のこの国らしく、婚約にも1に強さが優先される。
なので実力を知る機会がない子供のころは基本的に婚約の話はしない。今回婚約を進めてきた人たちは先ほどの魔法を見てイケると思って申し込もうと思っているのだろうが、正直それだけで判断するのは早計だと思うのだが。
「ふぅ」
そんなわけで、私は非常に疲れていた。だがここで、待ち望んでいた人が来たことで疲れを忘れることができた。
「やぁ、きたよアウリクラ。誕生日おめでとう」
「アンカー!久しぶり、待ってたの!」
「まってた?何の用さ」
彼の名はアンカー・フォン。赤髪黒目の30代男性で、ブルーム侯爵家の専属鍛冶師をやっている。30代という比較的若い年齢で鍛冶場をまとめ上げる凄腕の男性だ。例にもれず顔がよく、鍛冶場に事前連絡なしで行ったときはよく事務員の女性に口説かれている。本人は毎回丁重にお断りしているが。
そして、私とある秘密を共有している中でもある。
「『こっちでも言っておくな。おめでとうアウリクラ。』・・・久しぶりに使うと変な感じだ。あんなに使っていた言語だってのにな」
「『ありがと、アンカー。』仕方ないわよ。こちらで話していたら異常者だわ」
そう、いま日本語を話していたことを聞いていれば分かる通り。彼も私と同じだ。前世を日本で過ごし、この世界に生まれ変わった転生者なのである。
最初にあった時は驚いた。「俺の勘違いかもしれないが」と前置きしたうえで、急に日本語で「『こんにちは。・・・この言葉の意味が分かるか?』」と聞かれた。
日本刀を私のおぼろげな知識だけで数か月で完成させた時点で疑問に思うべきだったのだ。そんな芸当、完成形を知らない人間にできるわけがない。まして日本刀は現代においても再現できていなかったロストテクノロジーだったのだから。
そこからはついてきていたお父様には引いてもらったうえでたくさん話をした。聞けば彼は交通事故で死に、この世界に転生してきたらしい。魔力を持っていないので、魔力持ちの私をうらやましいと言っていた。
日本刀を作れたのは彼がもともと日本で鍛冶師の家に生まれたからだそうだ。日本刀の作り方自体はほとんど知っていて、知らなかった部分を私の知識が一部穴埋めしたことと、この世界の魔物素材が意味不明なほど有用だったおかげで日本刀を作ることに成功したらしい。
その後は定期的に話し合う機会を設けて、サスペンションなどの前世知識の再現に成功している。いわばビジネスパートナーともいえる人なのだ。
「『さっきの魔法には顎が外れるかと思ったね。まさかドラゴンを出すとは。何か参考にしたのか?』」
「『してないなぁ。私の中のドラゴンのイメージがあれだったの』」
「『ならよ、今度格好いいドラゴンの模型を作って渡すから、それで魔法を通ってくれねぇか?』」
「『それくらいならいいけど。変なのはやめてね』」
「『しねぇよ。いやー狩りゲーしてた甲斐があったぜ。ゴマ・アブラでも作って送るからな』」
「『なにそれ。調味料みたいな名前ね、っとそうだ。アンカーに紹介したい人がいるの。サスペンション付き馬車の使用者。使用者の意見は聞けた方がいいでしょ?』」
「『まじか?そりゃ助かる。こういうのは実際に乗ってみた人の意見が一番参考になるからな』」
よーし、ローズちゃんはどこかなーっと。
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