表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病気なんかに負けません!  作者: あるにゃとら
闘病記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/76

32

 扉を開けてもらいパーティー会場へ。

 纏うドレスはお母様の目と同じ色の黒。鏡で見た感じ、金髪と合わさって可愛いというよりは格好いい感じだった。


 技に名前を付けてから格好いいも好きになった自覚がある。最近では魔法のディティールにも結構凝っているし。戦闘でも結構意味があると思うのよ、見た目が格好いいって。相手の魔法が格好良かったら怯えてしまう人もいるから。


 主催者側の席からお父様の開催の合図を待つ。今日このパーティーに来てくれた方はお父様と同じ派閥の人がほとんどで、あとは私が生まれてきてからお世話になってきた平民の人たちが少し。


 この国には2つの派閥がある。お母様の実家であるフルヒト公爵家が中心となっている力こそパワーの実力至上主義と、お父様が中心の人権主義。ちなみにお父様の方は私が名付けた。強さだけでなく、人が人として尊厳と生活を守るようにするべきだという主張だから人権主義。


 ちなみにお母様の実家であるフルヒト公爵家の人はここにきていない。派閥が違うからというのもあるけど、一番はあそこはお母様を勘当しているから。


 学生時代のお母様がどんな目にあっていたかはお父様とお母様から聞いた。細部は濁して話されたけど、話している最中のお母様の何も映していない瞳を見ると、私が思っていたよりもずっとお母様はひどい状況で、私は危うい場所に生まれたんだなと思う。悔やんだことは一度もないが。私はこの家族のもとに生まれてよかった。


 そんな家だからこないのは当然だしむしろ来ないでくれとも思う。お母様の元家族を見かけたら男女問わずついうっかり急所を潰しに行きかねない。


 だが会う機会というのは必ずある。来年王都で行われるパーティーでは高位貴族どうしのあいさつ回りで必ず話すだろうし、あそこは子供もいるから学園でも話す機会があるだろう。その時までに自制心を鍛えておかないとと思うと、いろいろな感情が混ざってつい難しい顔になってしまう。


 魔物という絶対的な脅威を滅ぼせない以上、貴族に強さが必要なことは事実だ。魔物があふれたときに何とかするのはその土地を収める貴族なのだから。だから強さが必要なことはわかるし、戦闘が得意ではなかったお母様がよくない目で見られていたことはまだ理解できる。

 ただだからと言って中身が18歳の私にすら濁さなければならないようなことをし、その上勘当までするのはやり過ぎではないか?

 それとも、前世を平和な日本で過ごした私の考えの方がおかしいのか?平和ボケしているだけなの?


 ちなみに国を治める王族は人権主義寄りだけどうまく動けないらしい。下手に動けば内乱が起こってしまうから、王族寄りの貴族と進行を深めるのが精一杯。

 何年も前に理不尽な理由で他国に侵略戦争を仕掛けたことのあるこの国は結構な恨みを買っているので、下手に国内でいざこざが起きるとそのすきに他国から侵略されかねないらしい。


「緊張しているの?アウリクラなら大丈夫よ」

「お母様・・・」


 相当難しい顔をしていたらしい。お母様が声をかけてくれる。緊張していたわけではないけど、お母様と話すと心が軽くなるのは事実だ。愛されているとわかるから。


「もうアウリクラの出番みたいよ。お母様が見ていますからね」

「ありがとうございます。お母様・・・」


 席を立ちお父様の横へ向かう。このパーティーは私のお披露目だから私のあいさつで始まるのだ。


「紹介しよう。私の娘であるアウリクラだ。・・・アウリクラ、後ろで見ているからな」

「ありがとうございます、お父様」


 お父様もお母様もよく似ている。私を深く愛してくれて、同じ考えをしていて、私にかける言葉まで一緒。頑張ります、お父様。


「アウリクラ・アリア・ブルームです。本日より私は、貴族社会に足を一歩踏み入れます。皆様方、どうぞよろしくお願いします」


 話をしながら魔法のイメージを固める。

 この国の子供は伝統的に、パーティーで魔法をお披露目するのだ。


 これは魔法が貴族であることの証明であることの一つだから。それに、ここで大きな魔法を出せるということは子供であっても実力があるという事にもなる。だから貴族の子供はここで大きな魔法を出す。もちろん攻撃性のない魔法である。


 そしてこれは実際に見せるまで誰にも教えてはいけない。両親にすら言ってはダメ。なぜならこれが初めて貴族が一人で行う作業だから。ここで誰かに伝えたりアドバイスをもらったりすると、一人だと何もできない人だとレッテルを張られてしまう。


 正直形だけだと思うけどね。両親に言っても両親が言わなかったらばれないし、両親は子供にそんなレッテル張られたら困るから意地でもばれないようにするし。

 私はもちろん誰にも言ってない。練習も夜中に一人でした。


 イメージするのはドラゴンだ。見た目は派手な方がいいと考えてこれにした、4属性全部乗せのドラゴンだ。

 この世界、ドラゴンは魔物として実際に存在する。ドラゴンが住むといわれる森では周辺を飛び回っている姿が目撃されるらしい。戦闘力もかなりのもので、人里に出てきたら国が騎士団を動かさなければならないほど。

 そんな存在のドラゴンを魔法で出せたら、強さの証明には十分だと思わない?


「『ꯄ꯭ꯔ꯭ꯏꯊꯤꯕꯤ, ꯗ꯭ꯔꯒ ꯑꯗꯨ ꯃꯑꯣꯡ ꯁꯦꯝꯃꯨ꯫』」


 土属性で体を作る。爪の先まで、鱗の一枚まで丁寧に。大きさは20mもあれば十分だろう。


「『ꯏꯁꯤꯡ, ꯃꯁꯤ ꯃꯉꯥꯜ ꯄꯤꯌꯨ꯫』」


 水属性で光沢をつける。目がきらりと光る方が畏怖を見いだせる。

 

「『ꯅꯨꯡꯁꯤꯠ, ꯑꯩꯕꯨ ꯅꯨꯡꯁꯤꯠꯇꯥ ꯊꯝꯃꯨ꯫』」


 風属性で今作ったドラゴンを宙に浮かせる。参加者の目線が下から上に全員移動するのが面白い。


「『ꯃꯩꯁꯥ ꯑꯗꯨ ꯐꯨꯃꯖꯤꯜꯂꯨ꯫』」


 仕上げに空いている口から炎を吹かせる。全長20m、体高5mほどの立派なドラゴン。


 火が噴き終わると同時、静かだった会場から大きな拍手が起こる。大盛況だ、良かった。


「それでは、パーティーをお楽しみください」

少しでも面白いと持っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から作品の応援とブックマークの方をお願いします。

正直に感じた評価で構いません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ