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ああ、うん。なんとなくわかってはいたよ。
だって私は覚えてる。
意識を失う直前の恐怖も。
横に置かれていた機械から聞こえる音がどんどん小さくなっていったことも。
「眠い」と伝えたときに、家族が「逝くな」と叫んでいた声も。
自分という存在が消えていくかのような、心の奥底からくる寒気も。
つまりはそういう事で。
あの瞬間、私は死んだのだ。
***
どうやら寝てしまっていたようだ。赤ちゃんの体は体力がない。ちょっと泣いてお乳を飲んだら眠くなってしまう。
私が赤ちゃんになって2週間がたった。最初は現実逃避気味に体が動くことを喜んでたくさん泣いていたが、その喜びはすぐに消えた。
現実を見なければならないことに気付いたからだ。
だってそうだろう?病気で死んで次の瞬間には赤ちゃんになって大声をあげて泣いているのだ。意味が分からない。
けれど、わかることもあった。まず一つ、言語。
話している言葉が日本語じゃないのだ。ふにゃふにゃしていてよくわからないけど、少なくとも日本語じゃない。だけども不思議なことに、私は言語が理解できる。私が話せる言語なんて日本語だけなのに。
あいあむじゃぱにーず。
それと、私の今世の家族。
まず推定お父さん。金髪碧眼の超イケメン。クラスメイトがよく「メロい」って言ってた顔をしている。ちなみに私はよく知らない。全身引き締まっていて、力加減がわからないのか抱かれるとちょっと痛い。しかもその痛みに反応して体が勝手に泣き出してしまうから、よくおろおろして困っている。ごめんなさい。
タヌキ腹のお父さんとは大違いだ。なんとなく感じる優しい雰囲気は変わらないのに。
・・・好き嫌いしないで野菜も食べてるかな、お父さん。私が叱らないと、お肉しか食べないから・・・
次、こちらも推定お母さん。推定お父さんと同じ金髪だけど、目は黒色だ。「エリシア様」と呼ばれていたので、おそらく名前はエリシアなのだろう。ちなみに推定お父さんは「ご当主様」とか「旦那様」としか呼ばれないので名前は知らない。
外見はというと、これまで生きてきた中で見たこともないくらいの美少女っぷりをしている。AIの生成画像より可愛い。美と可愛いという概念を詰めて詰めて詰めまくったらこうなるのではないだろうか。
そして私の母親がエリシア様だった場合、私も同じ遺伝子があるということで。これはとんでもない美人になるのでは?前世はお母さんの遺伝で切れ目だったから怖いと時々言われたので、今世は可愛い寄りだと嬉しい。
それと、メイドさん?家政婦さん?のような人たちがたくさんいる。とても両手足の指では足りないくらいだ。正直名前も全然覚えていない。よく私のお世話をしてくれるカリーナという人くらい。
そう、今世の私はお金持ちの家に生まれたらしい。漏れてくる声を聴くに、私たちが今住んでいる家の他に別邸もあるらしく。そこに行けるのが楽しみである。
ま、それよりも先にこのおうちを探索するのが優先だけどね。
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