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病気なんかに負けません!  作者: あるにゃとら
0歳~

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「おとうしゃま!はやくきてくだしゃい!」

「アウリクラ、あまり急かしてはだめよ」

「今行く。ハイン、あちらに滞在する間家を頼むぞ」

「お任せください」


 この2か月私は頑張った。毎日ぎりぎりまで知識を詰め込み、魔法の制御を身に着け、木刀を握りおじいさまと戦った。


 さらに夜には自主練もした。隠れて部屋を抜け出すのはスパイみたいで楽しかったけど、結局1日でカリーナに見つかりカリーナ同伴で訓練することになってしまった。

 夜更かしさせてしまうことになったカリーナには申し訳ないけど、おじい様に一発当てたときはわがことのように手をたたいて喜んでくれたのがうれしい。


 練習したのは居合だ。抜刀と同時に速く振り抜く技術。あれ普通に振るのと何が違うのか試す前はわからなかったんだけど実際にやってみるとわかりやすかった。

 鞘で助走をつけられる分、居合のほうが何倍も速い。


 おじい様に一撃入れられたのも居合を練習したからという部分が大きい。

 最初は普通に戦って、一息ついたころおもむろに刀を納刀し不思議がっているところに一気に踏み込み今までの何倍の速度で刀を振る。

 これにはおじい様も反応できなかったみたいで初めて一発当てることができた。


 最も、それに喜んでいたら「一度攻撃を当てただけで訓練は終わらん」と蹴り飛ばされたけど。

 その後も何度かあてることはできたんだけど、次第に慣れてしまったみたいで後半はあてられなくなってしまった。おじい様は本当に強い。尊敬している。


 そんなわけで2か月がんばった私はこれから、約束の外出をするのだ。行先はグランお兄様、じゃなくグラン伯爵が領主をしているアンコート伯爵領。


 ここ数日は楽しみで夜も眠れなかった。なんと話を聞くに、グラン伯爵様のところには私と同い年の女の子がいるらしい。

 精神年齢が違うから仲良くお友達になれるかはわからないけど、それでも初めて関わる同年代の女の子だ。ついつい期待してしまう。


 向かう方法は馬車だ。異世界なら転移とかもあるのかと思ったけどそんなことはなかった。


 アンコート伯爵領までは大体3週間ほど。その間は盗賊が出たり魔物などがいるそうで、もし不慮の事態があり護衛の騎士だけで手が足りなくなったら、お父様や私が戦う可能性もあるらしい。


 万が一その時が来た時ようにと、お父様が私専用の武器である刀をプレゼントしてくれた。

 私が刀のことを伝えてからまだ1か月ほどしかたっていない。おまけに作り方もうろ覚えのまま伝えたにも関わらず、こうして形にしてくれた鍛冶師とお父様には頭が上がらない。

 

 特に鍛冶師の方には帰ってきたら何かお礼をした方がよいだろうか。鍛冶師の方からも私と話したいという話がお父様にあるみたいだし、一度話をしてみたほうがいいかもしれない。


 馬車に座り、もらった刀を見る。鞘の中には命を奪えるものがある。

 実際にもしもが起こった時、私は刀を抜いて戦えるだろうか。魔物なら殺せる気はしている。


 魔物の体は多くの特性がある。お肉がとてもおいしかったり、一部の魔物の毛が魔力をよく通す素材になったりだ。

 捨てる部位がないといっていい。


 だからこそ私は殺せる。日本は命をいただくときは『いただきます』と、神への感謝ではなく命への哀れみでもなく、自らの血肉となる者への感謝を伝える国だ。私にもその文化は受け継がれている。

 彼らを殺す。それが私たちのためとなるなら、私は哀れみではなく感謝をもって魔物を殺せる。


 ただ人は話が違う。前世から殺してはいけないと教えられて形成された価値観はそう簡単には変わらない。

 もちろんこの世界の人たちも人を殺していいと育てられたわけではないけど、日本と比べて魔物と横暴な貴族という生命の危機に瀕する頻度が違うので、誰かを殺すことへの抵抗が薄い。これは家族と前世の話をしていて感じたことだ。


「むぅ~!」

「あらアウリクラ、どうしたの?せっかくの可愛い顔が台無しよ?」

「おかあしゃま」


 む、いけない。せっかくの楽しい旅になる予定なのに、難しいことばかり考えていては楽しめない。

 盗賊がどうとかは出てきたときに考えるようにしよう。そもそも貴族だから護衛の人数もかなり多いので、出番になることもないはずだが。

 お父様も万が一のためにこの刀を渡してくれたんだし。


 うん、難しいことを考えるのはやめだ。それよりも3歳の女の子と友達になる方法を考えよう。貴族は友人も選ばなければならないらしいけど、家族は好きにしていいって言ってくれたし、ならば私は友人になりたい。お父様とグラン伯爵様も友人なんだし。


 子供と遊ぶとは何をしたらいいんだろうか。私が子供の時は何をしていたか思い出してみるが全くあてにならない。プリ〇ュアを見ていた記憶しかない。そもそも3歳のことなど覚えている子供の方が少ないか。


 おままごとでもしてみようか?楽しめるかわからないけど、その子が賢そうだったらチェスやトランプをしてもいい。この世界、チェスもトランプもあったから。

 もし無理ならそれよりルールの簡単なオセロでもやろう。あるかどうか知らないけど、チェスがあるならあるはずだ。


「さて、忘れ物はないね?アウリクラ」

「はい、おとうしゃま」

「それじゃあ行きましょうか。私もフランに合うのは久しぶりね」

「おかあしゃま、ふらんさんとはどのようなかたでしゅか?」

「ふふ、私とペインの友達よ。とっても素敵な方だから、アウリクラも仲良くなれると思うわ」

「それはたのしみでしゅ。おかあしゃま」

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