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私が身体強化を覚えてから3週間がたった。この3週間は非常に大変だった。
何が大変だったかというと身体強化の訓練だ。
私は当初、あの爆発的な強度の身体強化を封印しようと考えていた。なぜならあれは簡単に人を殺しうるからだ。私は人殺しなんてしたくない。
私が味わった苦痛、恐怖、哀しみを誰かに私が与える。そんなこと文字通り死んでも嫌だった。
だがそれは先生とお父様の両方に止められた。
先生からは「これほど素早く身体強化を会得し強度も最高峰、これを伸ばさないのはもったいない」と。
お父様からは「優しさだけでは何かあった時何も守れない、いつかのために牙は研いでおくべきだ」と。
どちらの意見も一理あると思う。先生の言う通りせっかく学んだ技術を伸ばさないのはもったいないし、お父様の言う通り身を守る力は必要だ。
アウラ王国は実力こそが絶対の実力至上主義の国なのだから。
いつか大切なものができたとき、それを奪われないためにも私は力をつけなければならない。それが何であるかは、今の私には到底想像できないことだけど。
なので方針転換。身体強化を使うことにした。とはいえあのままでは無理だ。文字通り一瞬で100m以上を移動し、意思を軽く握っただけで砕き、軽く跳躍すれば屋敷以上に跳ぶことができた。
さすがにあの時は驚いた。先生に「ちょっと跳んでみましょうか」と言われたので一応用心しながら跳んだら屋敷以上に飛んでしまったのだから。
風に流されたり鳥に突っつかれたりしなくて良かったと地面に着地したときは思ったね。
それと跳んだとき、副産物として初めて屋敷以外の街並みを見ることができた。少しだったので詳しく見られたわけではないけど、街並みはヨーロッパに似ていたように思う。
家はレンガで作られていて、屋根はスペインでよくみられる赤いテラコッタの屋根が多かった。日本だと木造建築が多いので、見てるだけでなんとなく新鮮な気持ちになる。
その後もいろいろ動いてみて先生はすごいすごいと褒めてくれるのだが、私は内心で冷や汗を大量に書いていた。
この身体強化、強すぎて私が全く使えるようになれないと。
それからしばらくの間、私は意図的に強度を落とした身体強化を練習した。
やり方は簡単だ。細胞に浸透させる魔力を少なくすればいい。たとえるなら、今までコップ一杯分の魔力を浸透させていたのをスポイトの一滴分に絞って浸透させる、みたいな。
これにより私は100mを5秒で走れる程度には強度を落とすことができた。とはいえこれではせっかく強い身体強化を学んだことの意味をなくしてしまう。
なので100mを5秒で走れる強度の身体強化を理解した次は、100mを4秒で走れる程度の身体強化を連取するようにした。
なにがしたいかわかるだろうか。
そう、私は徐々に身体強化を強めることで体を慣らし、最大の身体強化を私自身が制御できるように身体改造することにしたのだ。
これは成功した。私は動きの制御が上手くなり、石を握っても数秒は砕かず済むようになった。尚ほかの部分は全く改善しなかった。
だが神は私を見捨てていなかった。湯舟に浮かぶ私の顔を見てふと疑問に思ったのだ。
身体強化は目とか爪にはかかっているのかと。
目や爪が自分の体で同じ細胞なのはなんとなくわかるが、しかしこれが肌かと言われると疑問が生まれる。
私の身体強化は細胞に浸透するイメージだ。血が細胞にいきわたるように。だが目や爪に血はいきわたっているか?
否だ。私のイメージの中では、目や爪には身体強化がかかっていない。
そこでイメージに目や爪も身体強化できるよう追加した。結果は大成功。自分の動きを目で追えるようになったのだ。
これにより最大の身体強化でも体の制御が可能になった。なんせ目の身体強化のおかげで自分の体の動きが知覚できるようになったのだから。
今までは脳だけが強化されていて目がそのままだったから動きを追えていなかったのだろう。だが両方を身体強化できるようになったおかげで私は自らの動きを理解できるようになった。
それからはもう身体強化の訓練は私の独壇場だった。
宿題として出された3時間身体強化を持続させるのは余裕だったし反対に3分だけ持続させるのも余裕だった。時間は使った魔力量で変わるので絞ればいいのだ。
そして石を投げれば外壁に埋め込み、馬と追いかけっこをした時も一瞬だった。相手が魔物でも関係なかった。決着は5秒でついた。もちろん私の勝ち。
そんなわけで、先生はもう問題ないだろうと私の身体強化に太鼓判を押してくれた。
これから始まるのは本格的な戦闘訓練、すなわち武器の扱い方と魔法の訓練だ。
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