表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病気なんかに負けません!  作者: あるにゃとら
0歳~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/76

14

「次は魔物についてですね。魔物というのは、魔核を持った動物のことを指します。お嬢様は、このお屋敷でも飼っている馬を見たことがありますか?」

「ありましゅ。おとうしゃんがていれするときもちかくにいました」


 この広い屋敷には厩舎もある。私が3歳になる少し前に、お父さんに連れられて一度だけ行った。馬屋というらしい。


 そこにはぱっと見では数えきれないくらい多くの馬がいて、そのうちの一匹がお父さん専用の馬だったらしい。お父さんによくなついていて、私のことも気に入ってくれたようで鼻をこすりつけてくれた。


 なぜこれほど多くの馬がいるのかというと、移動と軍事目的に使うからだそうだ。車がないのか聞いたら、見たことも聞いたこともないといわれた。

 この世界の移動手段は基本徒歩で、貴族階級や裕福な平民になると馬を使うことができるらしい。この世界では、馬は一種の財なのだ。


 なお馬に乗る事、乗馬は貴族教育の一環で必ず行わなければならないようで、私も将来的には乗ることが確定している。

 前世では馬に関わったことが無く、知っていることというのは競馬の脚質くらいのものである。


 この世界には競馬など存在していないようなので、まったく意味のないことだが。

 それに競馬を普及させようとしても、私は競馬について何も知らないし、そもそも始めたところで参加する人もいないと思う。

 軍事目的に育てた馬を、わざわざ競って使いつぶす必要性がないのだ。もっと平和になれば可能性もあるかもしれないが。


「あの馬は魔物です。かつてこの国を興した王が乗っていた特別な馬だったのですが、時代が進むにつれ一般的になっていきました」

「まものなんでしゅか?」


 あの馬は魔物だったのか。だけど見て触れた感じ、前世の馬とほとんど変わらなかったと思う。


「はい。実際に乗ってみるとわかるのですが、彼らは風の魔法を扱うことで騎乗者を快適に乗れるようにしてくれます。どれだけ早く乗っても落ちるということがほとんどないのです」

「しゅごい」

「そうですね、初代王もその能力に惹かれて乗っていたそうですから。お嬢様は『勇者と聖女』という絵本をご存じですか?」

「しってましゅ。おかあしゃんがよんでくれました」


 その本なら私も知っている。この貴族の子供が小さいころに必ず読まされる昔話で、文字を教えるのに使われているらしい。私もこの本で文字を覚えた。ペンが握りずらいので書くことは厳しいが。


 内容としては、勇者と呼ばれたこの国の初代王が凶暴な動物が多く住む森を聖女と共に切り開き、国を興したという内容だ。


 王は武力を、聖女は癒しをもって森の危険な動物を倒し、小さな国を興した。その後、たまたま国に寄った商人によって噂がばらまかれ、いつしか人が集まりこの国は繁栄したという話だ。


 そういえば、本の中に『王は森で出会った友に跨り森を駆け抜けた』みたいな文があった覚えがある。もしやその子孫が馬屋で飼われていたあの馬なのかもしれない。


「素晴らしいです。その本の中で初代王が乗っていたとされる馬の子孫がお嬢様も見たことがある馬になります。種族名としてはフェアトラウトフェルトと言います」

「ふぇあとらうちょふぃると」

「ふふ、少し難しいですね」


 名前が難しすぎてこの体だと口が回らない。そもそも名前が長すぎるし。学名じゃないんだからさ、もうすこし簡単にしてほしかった。


「さて、魔物の特徴として、野生だと非常に凶暴なこと、倒すと魔石を落とすことが挙げられます」

「ましぇき?」


 また聞いたことが無い言葉が出てきた。結石みたいなものか?


「凶暴であることは特に説明することはありません。そのままですから。彼らは人間を見つけると憑りつかれたかのように攻撃してきます。そのような機会はないかと思いますが、野生の魔物に遭遇した場合は必ず避難するようにしてください。それが無理な状況なら逃げることだけを考えて、間違っても戦おうとは思わないように。」

「だめなんでしゅか?」


 いや私も積極的に戦おうとかは思わないけどさ。恐いし、そもそも自分が戦えると思ってないし。


「毎年、大丈夫だと慢心した子供が魔物の生息地に行き、帰ってこない子が多くいます。出かけるときは護衛のつく貴族ですら多いのです。お嬢様は大丈夫かと思いますが、どうかお気を付けて」

「はい」


 さすがにここは神妙に返事をしておく。また寿命以外で死ぬなんて冗談じゃない。

 私は死にたくないのだ。本当なら寿命でだって死にたくない。だけど不死は人であると言えなくなりそうなので考えないようにしている。


「もう一つの特徴は魔石を落とすことです。魔石とは死後に魔核が固まってできるもので、魔石には非常に多くの魔力が籠っています。これは人類にとって大切な資源です。お嬢様、この部屋についている明かりは何で点いているか知っていますか?」

「しりゃないでしゅ」


 部屋の天井には、前世のLEDライトを少しばかり大きくしたようなものがついている。これは私の部屋にもあって、夜になると部屋を照らしてくれていた。

 メイドさんがたまに何かを交換していたから、電池か何かを交換しているのかと思っていたけど、もしや話の流れ的に?


「あの明かりは魔力灯といいます。その名の通り魔力によって光を作り出すもので、その魔力を出しているのが先ほど話した魔石です。これ以外にも、例えばお手洗いの際に水を流す機構にも魔石は使われています。今の人類にとって必要不可欠と呼べるものの一つです」

「しょんなにたいせつならようしょくはできないでしゅか?」

「先ほども話した通り、魔物というのは非常に凶暴です。過去に人工的に育てようとした者は多くいましたが、皆失敗しました。そのため現在では、町にいる冒険者と呼ばれる人たちが定期的に魔物の生息地に行き間引きを行い、その際得る魔石を使っています」

「ぼうけんしゃ」


 冒険者とは、私でも聞いたことのある職業が出てきた。今のところ命を懸けて魔石を得る苦労人のイメージだけど。

 ただ先生の表情が苦々しいところを見るに、あまりいい職業ではなさそう。昔何かあったんだろうな。

少しでも面白いと持っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から作品の応援とブックマークの方をお願いします。

正直に感じた評価で構いません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ