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「おそらくお嬢様が知っていることもあると思いますが、一度説明したいと思います」
「あい」
そうあらかじめ断ったうえで、先生は魔法についての解説を始めた。
先生は私が知っていることもあるというけど、実際のところほとんど知らない。せいぜい呪文によって使えること、属性がある事、使うのに本人の魔力を使う事、くらいだ。
ほとんど知らないといっていいだろう。どうやらこの世界、子供に魔法のことを教えるのはかなり気を付けられているらしい。
「魔法というのは、簡単に言えば魔力によって発現する現象のことを指します。主な使用用途は戦闘や日々の生活を豊かにする道具作りですね。そして魔力とは人や魔物によって生成され、それによって世界は魔力で満たされています」
「しぇんしぇい、まりょくってどこでつくられるんでしゅか?それに、まものってなんでしゅか?」
早速わからないことが出てきた。魔力は人の体で作られるらしいが、私は魔力の存在を感じたことが無い。そんな臓器の存在も知らない。
人の体についてはカリーナに聞いたことがあるけど、前世の人と全く同じような形だったと思うし、私の知らない臓器の名前が出てくることもなかった。
それに魔物。お父さんが時々口に出していることは覚えているけど、口に出す時は毎回深刻な顔をしているので聞くのが難しかった。
お父様の話を聞いて想像するなら、森で定期的に大量発生する上に凶暴で危険だから駆除しなければならない害獣ということになると思う。
「初めの質問から答えさせていただきますね。魔力は生物の体にある魔核という場所で作られます。この魔核というものは今でもよくわかっていないことが多いです。生物によって存在する場所がばらばらで、足にある人もいれば頭頂部にある人もいます。珍しい人では喉仏にある人もいましたよ」
「どうやってしらべるんでしゅか?」
「魔力を自覚すると自然と場所もわかります。自覚する方法は他者に魔力を少しだけ流してもらうことが一般的ですね。あ、先ほど魔核は今でもよくわかっていないといいましたが、実は数についてもバラバラなんです」
「かず?」
「はい。私は魔核を1つ持っていますが、私の友人は3つ持っています。お嬢様の御父上である侯爵閣下は2つ持っているそうです。このように、人によって数すらも規則性がないのです。王都の学者は属性や魔力量と関係があるのではないかと考えていますが、実際のところはよくわかっていません」
「ひー」
説明を聞くたびにわからないことが増えている。魔力を他者に流されても影響ないのとか、そんなよくわからないもの使っても大丈夫なのとか、なんで個体によってある場所が違うのか不明なの怖すぎるとか、場所によっては生活に支障が出そうとか。
私の魔核は邪魔にならない場所にあることを願う。もし仮に指の先にあったら成長と共に指の先だけどんどん大きくなっていくとか想像したくない。
「ちなみに魔核は魔物の場合目に見えて触れることができるので魔石として採取できますが、人の場合は目に見えず触れることもできないので採取できません。過去には・・・っと、血なまぐさいのでやめましょう」
あ、目に見えないし触れないのね。一瞬安心したけどまた謎が増えただけだな。魔物と人の違いとか言い淀んだ過去のこととか。
これ絶対魔石の養殖を人間でしようとした人がいるでしょ。私も思ったもん。魔物は凶暴で危険だから養殖できないだろうし、なら人から取れたら臓器売買みたいな感じでお金になるかもって。
非人道的が過ぎるけど。
っと、指先の仮定で一個思いついた疑問がある。ついでだから聞いてみよう。
「しぇんしぇい、まかくのあるばしょをじことかでなくしたら、どうなりましゅか?」
「いい質問ですね。答えは魔力を失う、です。なので魔法を使えるものは自分の魔核の位置を言いません。弱点になりえますから。伝える相手はよっぽど大切な人くらいですね。お嬢様のお父さんとお母さんのような夫婦などです。なのでお嬢様は、魔核の位置がわかっても誰にも言わないようにしてください。それを伝える時は、大切な人にだけです。良いですか?」
「おとうしゃんとおかあしゃんにもいっちゃだめでしゅか?」
「駄目とは言いません。ですが魔核の位置を伝えるというのは一種のプロポーズにもなっておりますので、のちの特別感は薄れてしまうかもしれませんね」
プロポーズとは、なんとロマンチックなことか。私はあなたになら何をされてもいい、みたいな意味になるのだろうか。
お父さんもお母さんにしたのかな?すごい気になる。魔核の場所は聞かないから、その時の雰囲気だけでも聞けないかな。
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