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病気なんかに負けません!  作者: あるにゃとら
0歳~

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 これから講義を行うということで、やってきたのは屋敷の中にある会議室のような場所。

 この屋敷はそれはもう大きいので部屋が山ほどあるのだ。この部屋もその一つ。

 似たような部屋が少なくとも5個はあるのは確認している。一人で歩けるようになった時期に、メイドのカリーナさん、を連れて探検に行った。


 そのあたりからカリーナが私の専属のような立ち位置になったらしく、どこに行くときもついてくるようになった。今もこの部屋の後ろで控えている。


 この部屋にいるのは5人。メイドのカリーナ、先生のレルソンさん、私、お父さん、そしていつの間にか部屋にいた見知らぬお兄さん。

 お兄さんが部屋に入ってきたとき、お父さんが奇妙なものを見たような顔で話しかけに行ったのでどうやら知り合いらしい。

 挨拶をするべきか無視して先生の授業を受けるか悩んでいたところ、お父さんがそのお兄さんを連れて私の下へやってきた。


「アウリクラ、紹介する。俺の隣にいるこの男が、先ほど言っていた友人のグランだ。調子のいい男だから非常にうるさい。無視してもいいぞ」

「おとうしゃん・・・」

「ひどいなぁペイン。流石に僕も人の屋敷ではおとなしくするって。あ、無視しちゃってごめんねアウリクラちゃん。グラン・ピリヘル・アンコートだよ、よろしく」

「アウリクラ・アリア・ブルームでしゅ。よろしくおねがいしましゅ」


 どうやら先生を紹介してくれた人だったらしい。今では懐かしい黒髪黒目の男性で、お父さんとは違って骨しかないんじゃないかと思うほどに体が細い。でも顔は格好いい。

 身長も低く、お母さんよりちょっと高いくらいしかない。それでも、私からすれば見上げるほどに高いが。


「よろしくね。それにしてもアウリクラちゃんは可愛いなぁ。ね、今度僕の屋敷においでよ。妻は可愛いものが好きだからきっと気に入られるよ。それにちょうど同じくらいの子もいるしね。どう、ペイン?」

「行くにしても後の話だ。しばらくは学ぶことが多くて忙しくなるからな」

「そっかー、残念。アウリクラちゃんも残念だよねー?」

「ざんねん!」


 私は生まれてから一度もこの屋敷を出ていないので、外に出られるというなら非常にうれしい。

 それに同じくらいの子がいるとなれば友人になれるかもしれない。外に出たことが無いので友人もいないのだ。

 それと呼べるのは、庭の隅っこで隠れて飼っているリスくらいのもの。


「ほらペイン、アウリクラちゃんも残念だってさ。あんまり屋敷に閉じ込めて会う人を厳選していると、人間関係の構築が下手になっちゃうよ。それこそ学園時代のペインみたいに」

「おとうしゃんのむかしのはなし!ききたい!」

「はは、僕の屋敷に来れたら聞かせてあげるよ」

「おとうしゃん!アウリクラ、グランおにいさんのおやしきにいきたい!」


 うるうる、うるうる。赤ちゃんの体は感受性が高いので、ちょっとテンションが上がるとすぐ涙目になるのだ。

 これを利用して幼気な幼女のお願い感を演出する。


 実際お父さんの話が聞きたいことは事実だ。お父さんは学園のことはほとんど話してくれないし、お友達のことを話してくれたのも今日が初めて。

 お母さんに聞いてもはぐらかされるし、わからないことだらけなのである。


「・・・アウリクラの教育が順調なら、少しくらいなら構わん」

「わーい!アウリクラ、がんばる!グランおにいさん、やくそくね!」

「うん、もちろん。ちゃんと準備しておくからね」


 あまりの嬉しさに、思わずお兄さんに抱き着く。私の小さな身長ではいくらお兄さんが低くても足までしか届かないが、こういうのは気持ちが大事なのだ。


 そして抱き着いたことで初めて気づいた。お兄さんが震えていたことに。


「ん?アウリクラちゃん?」


 よく集中してみれば、からだが降るる得ているだけではなく汗もかいていた。触れているズボンがわかるほどに冷たいのだ。まだ冷房をつけるような時期ではないので、寒いということはないはずなのだが。

 もしや体調でも悪いのだろうか?


「グランおにいさん、もしかしてたいちょうがわるい?」

「・・・どうして、そう思うんだい?」

「あせ、いっぱいかいてるから」


 そう聞くと、お兄さんはひどく驚いた顔をした。まるで今初めて自分がその状態であることに気付いたかのようだった。

 そしてそれは間違っていなかったらしく、顔色がどんどん青くなっていく。


「グラン?どうした?」

「・・・あぁ、ペイン。どうやら僕は体調不良らしい。少し休んでもいいかい?」

「構わんが・・・わかった。俺も行く。アウリクラ、危ないことはしないようにな。レルソン殿、よろしく頼む」

「・・・うん、おにいさん、きをつけてね」

「承りました、侯爵様」


 お兄さんはお父さんに肩を貸されながら部屋を出ていった。

 心配だ。

 前世で死んだ理由が病気だったからか、体調の悪そうな人がいるとどうしようもない不安感に襲われることに、今初めて気づいた。


「心配ですか?お嬢様」

「・・・うん。でも、べんきょうもしなきゃだめだから、せんせい、よろしくおねがいします」

「はい。それではこれより、魔法について教えたいと思います」

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