9 ペイン視点
「まぁ、辛気臭い話はここまででいいだろう。それよりペイン、儂はいい加減聞きたいことがあるのだが?」
「何のことで?」
夜も更けたところ、父さんと二人でワインを開けていると突然聞きたいことがあると言い出した。
俺は何か教えていないことでもあっただろうか?全く覚えていない。当主になってから家のことはすべて任されているから、何かするときに連絡することもなかった。
せいぜいたまに相談に乗ってもらうくらいだ。
「決まっておる。お前とエリシアの馴れ初めじゃ」
「んぐっ!?」
な、なにを急に聞いてくるのだこの男は。
「なんで今更!別に話すようなことじゃないだろ!?」
「いーや儂は聞くべきじゃ。ペイン、儂は昔、お前がエリシアを家に連れてきたときも同じことを聞いたな?その時なんといって断ったか覚えているか?」
「・・・確か、エリシアの前で話すようなことじゃないと。それにエリシアもまだトラウマを癒せていなかったから」
「そうじゃ。そのあとものらりくらりとかわす始末。だが今はどうじゃ。エリシアはこの場に居らんし、1年前にトラウマも克服しておろう」
確かにそうだ。エリシアはトラウマを克服している。
1年前、王都で開かれたパーティーでエリシアは自分を特にひどく虐めていた伯爵家のグループと遭遇してしまった。
このままではまずいと俺が割って入ろうとしたが、都合悪くその瞬間世話になっていた別の家の者に話しかけられ、気づいた時にはエリシアとそのグループはいなくなっていた。
それに気づいた俺は血相を変えて探し回ったが見つからず、結局エリシアと再会できたのはパーティーが終わる直前だった。
見つけた瞬間人目も憚らず抱きしめたが、心配していたエリシアはケロッとしていた。
何があったか聞くと、「それは話せないけれどもう大丈夫」とはぐらかされる始末。それでも心配だったのでしばらくの間はエリシアのことに注意していたが、それに気づいたエリシアに「仕事はしっかりなさい」と叱られた。
本当に問題なかったのだ。ただ、その伯爵家のグループの人間は俺かエリシアを見つけると脱兎のように逃げ出すようになってしまった。
おそらくエリシアが何か言ったのだろうが、何を言ったかはわからない。エリシアに聞いても「それを聞かれると、鶴のようにこの家から出ていかないといけなくなってしまう」と笑われながら言われてしまう。
ちなみに鶴のとは何のことか問いかけると、昔見た夢で「機織りをしていた鶴だったが同居していた男に見られ家を出ていくことになってしまう」という夢を見たらしい。
エリシア自身も何のことか理解できていなかったが、夢とはなんとも摩訶不思議なものだ。
「それにアウリクラのこともある。今のうちにエリシアとお前がどうであったか聞いていれば、アウリクラが危険な目に合わないよう対策も講じる時間ができるじゃろ?」
「むぅ・・・」
アウリクラのことを出されると弱ってしまう。アウリクラを守れるよう時間が欲しいのは事実だ。そして人手も。その点父さんが力になってくれれば一気に楽になる。
かつて『英雄』と呼ばれた父さんは、その人脈も凄まじい。
「・・・わかった、話す。ただその前にもう一本ワインを開けさせてくれ」
話すことは納得したが、到底素面で話せることではない。仕方がないのでもう一本ワインを開けさせてもらう。全く、あまり飲まないようにと部屋の隅に置いたがこういう時に不便だ。
「それくらい構わんわい。・・・全く、酒の力は偉大じゃのう。アウリクラとはほとんど関係ないというのに」
「ん?何か言ったか?」
「何でもないわい。ほれ、速くもってこい。儂も飲むぞ」
「少しは加減してくれ、父さん」
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