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集え!異世界転生者たちよ!


 

 

「今の光景、見覚えあるもん! 私が前世で働いてたキャバクラだよ!」


 アルヴィンが反応する。


「それは本当か?」


「間違いない! ねぇ、あなたも転生者でしょ? お願い、本当のこと言って?」


 エルリアが縋るように俺に言う。まさか、そんなことが……


「クラブの名前は?」


 俺が尋ねるとエルリアが即答する。


「クラブルージュ!」


「店長の名前は?」


「佐々木健二!」


「よく先輩にこき使われてたボーイの名前は?」


「え!? ……あー、うーん」


「いや、そこは即答しろよ! 田中だよ! 田中二郎だよ!」


「ジロくん!? 長男なのに二郎って名前付けられたジロくんなの!?」


 アルヴィンが割って入ってきた。


「誰だコイツは?」


「私達と同じ転生者だよ! しかも前世で働いてたキャバクラのボーイ君だよ!」


「知らねぇなぁ」


 俺は目を瞠った。


「まさか王太子まで転生者……?」


「おう、その通りだ」


 懐からタバコを取り出して吹かし始めたよこの人!?


「ちょっとまってくれ。みんな一度冷静になろう。ヴァレンテイナ、君まで転生者なのか?」


「転生者を知ってるってことはエリックも転生者なのか?」


「僕は違うよ。リア嬢とアルだけが転生者だよ」


 俺はドキドキしながらエルリアに尋ねた。


「エルリア嬢、君の前世の名前は?」


 エルリアが一瞬苦しそうな顔をする。


「杏奈……近藤杏奈だよ」


 全身に衝撃が走る。杏奈さん? まさか、本当に……?


「杏奈さん……杏奈さんなんですか?」


 ボタボタと涙が溢れて零れていく。もう前世で涙を空っぽにしたつもりだったのに。


「うん……杏奈だよジロくん」


「杏奈さん! なんで死んだんですか! あのヤクザのせいですよね!?」


 そこで何故かアルヴィンが反応する。


「オレは関係ねぇ。いや、あるのか? 杏奈をヤったクソ野郎を殺したのはオレだからな」


「へ……? あの加害者を殺した?」


「そうだ。オレはてめぇが働いてた店のケツ持ちしてた組のモンだ」


「嘘だ……まさか、あの目つきの悪い、いつも杏奈さんに会いに来てたヤクザ?」


「アル様、目つきの悪さは生まれつきだから気にしないで!」


 エルリアこと杏奈さんがアルヴィンに慰めにならない慰めを言ってる。


「ちょっとみんな落ち着こう。話を整理しないか? 僕の妹ヴァレンテイナは転生者で、前世でリア嬢の関係者だった。そしてリア嬢はアルと恋仲だった。これで間違ってないね?」


「恋仲じゃねーよ」


 アルヴィンがふんぞり返ってタバコを吸いながら否定する。


「恋仲だもん! ラブラブだったもん!」


 エルリアこと杏奈さんが否定する。


「ナチュラルに嘘つくんじゃねぇ。話がややこしくなるだろうが」


 俺は我慢できずに立ち上がった。そしてずっとずーっと抱え込んできた想いを吐き出した。


「俺……俺は! ずっと杏奈さんのことが好きでした!! 今でも杏奈さんが好きです!!」


 その時、俺の周りに突然無数の火球が出現した。


「アル! やめてくれ! 僕の妹を焼き殺すつもりか!?」


「ちっ」


 エリックの一声で火球が瞬時に消えた。なにこれ怖い。


「あの、杏奈さん……俺、本当に大好きで……なのに突然死んで、俺どうしたらいいのか分からなくて……気付けば俺も死んでました」


 杏奈さんは優しく微笑んだ。


「ありがとう、ジロ君。気持ちは嬉しいけど、私は前世も今も、ずっと黒木さん……ううん、アル様が大好きなの。だから、その気持ちには答えられないんだ。ごめんなさい」


 頭を下げる杏奈さんに、立っていた俺はズルズルと椅子にへたり込んだ。


「しかし転生者が……しかも関係のある人間が三人も同時期に集まるなんて、凄い偶然だね」


 エリックは思ってもいないことを言っている。


「そんなこと思ってないのに言うな」


「ははっ、我が妹君の本当の姿が見れて僕は嬉しいよ」


 こいつはまだ何かを隠していると俺の本能が言っている。


「エリック……お前、何かの能力を持っているだろう」


 エリックの顔には嘘くさい笑みが張り付いている。だが俺が睨みつけると根負けしたように溜息をついた。


「我が妹は中々に鋭いようだ。あぁ、そうだよ。僕は触れた人の思考や過去を覗くことができる」


「やっぱり! あの時変だと思ったんだ!」


「あの時?」


 杏奈さんが聞いてくる。


「エリックが昔俺に触れてきた事があるんです。その時に強烈な違和感を覚えて……」


「あぁ、あの時か。そうだった。君の思考が覗けなかった時だね」


 杏奈さんは片眉を上げた。


「もしかしてだけど、ジロ君も何か能力持ってたりしない?」


 俺以外の三人がジッと見つめてくる。俺は観念した。


「俺は……触れた人の記憶を消して改ざんすることができます」


 エリックが腕を組んで頷いている。


「通りで君が入学式前日に屋敷の警備を掻い潜って出奔できたはずだ! だがどうして僕の能力が効かなかったんだろうか」


 アルヴィンことヤクザが言い放つ。


「単にお前の能力の方が下だったって事だろ」


「アル、君は中々に辛辣だね」


「事実だろうが」


 ヤクザがタバコの煙をエリックに吹きかけている。


「杏奈さんは何か能力を持ってるんですか?」


 俺が尋ねると、とてもいい笑顔で返された。


「私? なーんも能力なんて持ってないよ!」


「そ、そうですか」


「おい、オレには聞かねーのかよ」


 ガンッとテーブルの支柱を蹴るヤクザに、生まれ変わって王太子になろうとも、人の根幹は変わらないのだと痛感した。


「あなたは何か能力があるんですか?」


「ねーよ」


 だったら何故聞けと脅してきた! クソヤクザめ!


「でもエリックも無事に入学できて良かったね。ジロ君……じゃない、ヴァレンテイナ様も五体満足で帰ってきたし、良かった良かった!」


 杏奈さんのほんわか雰囲気に流されそうになって、はたと我に返る。


「いやいやいや! 杏奈さん! この世界はゲームの世界なんですよ! 俺達みんなゲームの中のキャラクターなんですよ!? 杏奈さんがどハマりしてたゲームの!」


「んー? 知ってるよ」


 杏奈さんが髪の毛を人差し指に巻きつけながら答える。


「え、知ってる?」


「そだよー。“悪役令嬢の恋〜勘違い聖女をザマァしよう!〜”でしょ?」


「はい……あってますけど、聖女の杏奈さんがざまぁされるんですよ!? この俺に!」


「大丈夫だよ。エリックとアル様がざまぁで死なないように頑張ってくれたから、私はざまぁ回避できたよー」


 髪をくるくる回しながら、なんてことはないみたいに言う杏奈さんに唖然とする。


「いや……そんな、俺がいなくてどうやって回避したんですか?」


「そこはほら、ジロ君のお兄ちゃんがヴァレンテイナ様に扮してくれてね、あれやこれやで解決できたの」


「……他のキャラクターに接触は?」


「したよー。みんな面白い人ばっかだよ!」


 ……何だろうか、この虚しさは。

 俺が探りを入れたり、あれこれ裏で動いてたのは何だったのか。


「あ! そうだ! ジロ君、私のこと杏奈じゃなくてリアって呼んでね! でないとみんな変に思っちゃうから」


「オレのことはアルヴィン様と言え」


 それだけは言いたくない。けど言わなければ周りに疑われるんだろうな……。


「あー……リア様にアルヴィン様?」


 杏奈さんが苦笑する。


「リアでいいよ! 様なんて柄じゃないしー」


「いや、さすがにそれは……じゃあリア嬢で……」


「仕方ないなー。じゃあ、それでオッケー!」


 ピースサインをする杏奈さんことリア嬢は自由人だった。前世でも割と自由人な所があったしな……。


「ではヴァレンテイナのことを打ち明けるべき人物は、あと二人だね」


「え、二人?」


 ニールスとヴァルターに言うのか!? 攻略キャラクターだぞ!?


「私の友達のヴィッキーとコレットだよ。この二人には私達が地球人でこの世界がゲームの世界だって知ってるから」


「はぁ……」


 ゲームの中には出てこなかったキャラクターだ。いわゆるモブというやつだろう。


「じゃあ、話は決まったね。夕食後の自由時間にヴァレンテイナをそちらの寮の部屋に向かわせるよ。ヴァレンテイナもいいね?」


 俺は無言で頷いたのだった

 

 

 

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