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ドレス、それは令嬢の戦闘服である。


 

 

 一旦、整理しよう。

 ゲームで私はヴァレンテイナ様をエルリア(私)が影で陥れて、最後に隣国の王子がそれまでの私の悪行の数々を証拠と共に叩きつけて、ヴァレンテイナ様と結ばれるんだよね。

 んで、アホ王子は古塔に一生幽閉、私は国民の前でギロチン。

 

 ……イヤだ! 死にたくない! でもストーリースキップしてたから、ストーリーほとんど分かんねぇよ! 強制イベント以外は分かんねぇよ!

 どしたらいい? 何したら私はヴァレンテイナ様を陥れることなく、なおかつ世界の強制力に打ち克って生き延びれるの?


「やっぱお茶会に行くしかないのか……」


 イヤだ……心の底よりイヤだ……。


「いや、しかし。今のところ私はヴァレンテイナ様を陥れる様な事なんて一つもしてない。てか、避けまくってるからな。あれ、これお茶会で黙ってヴァレンテイナ様の話しをうんうん聞いてれば何とかなるんじゃね?」


 要するにお茶会は二人きりにはならない。必ず侍女が付いてくる。この魔法学園でも高位の貴族は家から侍女や従者を連れてきてる。

 つまりは二人きりになることはない!

 私がヴァレンテイナ様に何かをしでかす確率はほぼゼロ!

 ただーし! 世界の強制力が働かなければの話だ。


 世界の強制力、今のところアホ王子からのアプローチ以外は何も起こってないはず。ヴァレンテイナ様からも逃げ回ってるし。


 大丈夫だ。私は大丈夫、破滅フラグを回避できる私なら! 何の根拠もないけど!


 そこでハッと私はある事を思い出す。


 やべぇ、私お茶会用のドレスなんて持ってねぇ……。


 見落とし! 落とし穴! 皆は気付いていただろうけど、私は欠片も思いつきすらしなかったぞ!


 ど、どうしよう……私ドレスなんて一着しか持ってきてねぇよ? 歓迎式用のドレスを母に持たされただけだよ?

 そういえば母は何度もドレスをもっと持っていきなさいって言ってた気がする。

 アレか? 母はこの事態を見越して言ってたのか? だとしたら母スゲー!


 いやいや、関心してる場合じゃない。ドレスを用意せねばお茶会に行けない! お茶会ブッチしたら確実に私は悪印象を持たれる。それどころか学園中に悪評が広まる恐れがある。

 そんな事になったら格上の貴族に泥を塗ったとか思われて傷心のヴァレンテイナ様が隣国の王子とお近づきになって、私の悪行にされてしまう!


 ヤベェ……ドレスを今すぐ学園に持ってきてくれるように実家に言わなきゃ。

 私は急いで机の引き出しから封筒と紙を取り出し、ドレスを手配してくれるように何度も何度も書き連ねた。

 最後に封筒の中に手紙を入れて、封蝋をする。これは母から持っていくように言われたやつだ。まさかこんなに早く役に立つ日が来るとは思わなんだ。

 それからまたハッとする。ヴァレンテイナ様へ出席の有無の返信の手紙を送っていないことに。

私は急いで手紙を書く。私の中のキャバ嬢知識と今世の知識を総動員して失礼のないように丁寧に、しかし素早く手紙をしたためた。またもや封蝋が役に立った。家紋入りを持ってけとしつこく言ってた母に感謝しかない。


 席を立って私は急いで部屋を出る。

 私たちの塔を出た所の近くに、手紙を配達してくれるお兄さんたちの待機所がある。

 私は猛ダッシュした。淑女なんてクソ食らえ! な精神で配達員さんたちの待機所へズザーっと滑り込む。


「あっ、あの! ……はぁ、はぁ……この、はぁ、手紙を大至急、届けて、ほしいのですが、ゲエッホ! ゲホッ!」


 震える手で待機所にいた配達員のお兄さんに手渡す。


「できれば、きょ、今日中に……ゲホォッ! 届けてくださると、助かるのですがぁ!」


 息も絶え絶えな私を配達員さんが心配してくれるけど、そんな暇あったら今すぐその手紙を実家とヴァレンテイナ様の所に届けに行ってくれやオラァ!


「お茶でも飲んで落ち着きませんか?」


「茶をしばいてる暇なんて無いって言ってんですよぉ! お願いしますよぉ!」


 私の必死の訴えに配達員さんは急いで待機所から出ていった。


 残された配達員さんがお茶を黙って差し出してくれた。

 私はそれを一気に飲み干した。うめぇ。


「ありがとうございます……」


 私はまた自分の寮に戻るべく踵を返す。

 母よ、ドレスのセンスはあなたにかかってます。変なドレスだったらザマァ死への階段を一歩登る羽目になるので、どうかまともなドレスを送ってくださいませ……。


 

 

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