表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/73

キャバクラのボーイ、異世界転生を果たす。


 

 

 オレの名前はヴァレンテイナ・ノクティス。ノクティス公爵家の長女である。

 双子の兄がいて、二人兄妹だ。

 そして唐突だが言おう。


 オレは転生者だ。


 前世は地球の日本と言う場所にいた。その場所のさらに東京の新宿にいた。

 夜の街で働いていた。眠らない街でキャバクラのボーイの仕事をしていた。

 毎日毎日、オレは先輩やキャストに振り回される人生だった。


 そんな中、オレは禁忌を犯してしまった。

 そう、ボーイが一番やってはいけない行為。


『キャストを好きになること』


 オレは恋心を必死に押し込めた。押し込めてそのキャストと接していた。

 だからオレの恋心はバレていなかったはず。

 現にそのキャストはオレではなく、別の男と懇意にしていた。だが相手が問題だった。よりにもよって、店のケツ持ちの組員だったのだ。

 オレがそれを知ったとき、夜の街で一晩飲み明かした。ベロベロだったが、頭のどこかは冷静だった。

 所詮オレはただのボーイ。恋敵は舎弟頭のヤクザ。しかもめっちゃ強いらしい。返り血に染まった拳で来店しに来た時は、チビリかけた。

 顔立ちだってそこそこ見られる顔立ちだった。イケメンではないけれど、シュッとした顔つきだった。

 なんだよこれ。試合始まる前から試合終了してんじゃん安西先生!

 そんなわけで俺はまたもややけ酒を飲んでくだを巻いていた。


 しかし、突然俺の世界は変わった。

 好きだったキャストの子が殺されたのだ。よりにもよって、ヤクザの組長の息子に。

 俺は絶望した。なぜ彼女が殺されなければいけなかったのか?

 彼女はゲーム好きで店で指名されたりヘルプに入るまでの間に、よく待機部屋でゲームをして遊んでた。とても無邪気に。

 他のキャストとはほどほどの付き合いで、店長にバレないように、よく裏口から出た所にある階段でゲームをしてた。あのヤクザも彼女に会いに来てたけど。

 そんな何も悪いことなどしていない彼女がどうして殺されたのか。

 ヤクザの息子と聞いて、俺は真っ先にあの返り血ヤクザを思い出した。奴が絡んでるんだと思った。

 きっとヤクザの抗争に巻き込まれたのだと。

 俺は花束を買って、彼女が殺された場所に献花した。しばらく呆然とその場に立ちすくんでいた。涙が止まらなかった。

 頭の中では「なぜ?」が支配していた。

 俺があの返り血ヤクザなら、彼女をこんな目に合わせたりはしなかった。

 アイツが憎くて堪らなかった。

 顔中ぐしゃぐしゃになりながら、俺はその場から去った。ずっと泣いてた。あぁ、俺はこんなにも彼女の事が好きだったんだと、泣きながら気付いた。

 まだ何も始まってすらいなかったのに。

 ボーイを辞めて彼女に告白しようと考えてたのに。

 何も……できなかった。

 ボロボロになって歩いていると、誰かの叫び声が聞こえた。疑問に思う余裕もなかった。

 全身に衝撃が走った。

 道路に転がる俺は動けなかった。少しして、車に轢かれたのだと気付いた。

 でも声すら出せない。口からごぽり、と血反吐が出た。

 あぁ、俺は死ぬのか……死ぬのなら、どうか彼女のいる世界に行きたい。極楽浄土か地獄かは分からないけれど、彼女のいる場所なら俺にとって天国になる。

 どうか、彼女に会わせてください神様。

 そんな事を思いながら俺は死んだ。


 +++


 と思ってた。

 目を開けると何故か彫りの深い顔つきの男女が俺を見下ろしていた。


 誰だこいつ。


 それが初めに俺が抱いた感想。

 慌てて立ち上がろうとしたけど立てない。体がグネグネして力が入らなかった。

 辺りを見回すと隣に赤ちゃんがいた。俺は自分の手を見た。どう見ても赤ちゃんの手である。パニクった。

 ここはどこなんだと叫んでも、誰の耳にも届かない。あばあばいう声しか出せなかった。


 とりあえず一旦落ち着こう俺。状況把握からしなければならない。

 俺、赤ちゃん。隣にも赤ちゃん。多分兄弟。顔彫り深族の男女は恐らく両親。

 で、肝心のここはどこ? 見える範囲でも金持ちなのは調度品や壁紙のセンスの良さを見れば分かる。分かるが、情報が少なすぎてそれ以外が分からない。

 だんだんイライラしてきて、俺は大声で叫んだ。すると口から赤ちゃんの泣き声。

 女の人が慌てて俺の体を抱き上げる。立派な胸が俺のほっぺたに当たる。だが俺はあの子以外はノーセンキューだ。こんなんで欲情するもんか。

 女の人は俺を「ヴァレンテイナ」と呼んでいた。俺の名前か? なんて呼びにくい名前なんだ。

 にしても駄目だ。この体じゃあ何もできねぇ!

 泣き声を上げてる内に眠気が襲ってきた。

 もう一人の赤ちゃんが俺に釣られて泣き始めた。煩い。

 何か打開策はないものか……。

 そんな事を色々考えてる内に、俺はいつの間にか眠ってしまった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ