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二択しかなかったら己の心の声に従いましょう。


 

 

「コレット? コレットなの!?」

 

 リアちゃんが私に近付く。私は咄嗟に半歩下がる。

 

「まぁ、落ち着きたまえ君たちよ」

 

 校長が穏やかな声でみんなに話しかける。


「彼女は姿形が変わってしまったが、正真正銘コレット・シャルモワだ。彼女の本来の姿はこの姿だ」

 

 そう、醜い醜い姿の私。

 

「彼女は幼い頃に農村部で発見され、学園に来るまでそこで育った。彼女の特性を活かし、魔獣退治と畑仕事を主にしながら育ってきた」

 

 校長は言葉を区切る。

 

「私は魔族という種族に興味を持った。そして魔法学園に入学するなら、人と同じ姿で勉学に励むよう言った。そう、今まで君たちが見ていた彼女の姿だよ」

 

 リアちゃんとヴィッキーが私を見ている気配がするけど、顔を見るのが怖くてずっと俯いていた。

 

「彼女は魔族でありながら人の心を持つ稀有な存在。村の人たちが大切に育ててくれて私は感謝しているよ。そこでシャルモワくん、君に選択肢を与えよう」

 

 私はビクリと体を揺らした。

 

「君が望むなら、前の姿に戻してあげよう。それか、魔族としての力を全てを失くして、人と同じように暮らすか。さぁ、君はどちらを選ぶ?」

 

 元の姿に戻っても、もうリアちゃんとヴィッキーとは友達のままでいられない。それなら……

 

「ちょっと待ってください校長! 魔族の力を失くすって、具体的にどんなことをするんですか?」

 

 リアちゃんが問うと、校長が言った。

 

「まさにそこが肝心だ。エルリア・フェアウッド、君の聖女の力をを使い、魔族の力を浄化するんだ。そうすれば魔族の力は完全に失くなる」

 

 リアちゃんが、私を人と同じにしてくれる? でもこんな私にそんなことリアちゃんにさせたくない……。

 

「ざっけんな! コレットの力を失くす? それで人間のフリして一生を過ごす? マジでふざけんじゃねーよ!」

 

 私は驚いてリアちゃんを見てしまった。

 彼女は凛とそこに立って校長を非難していた。

 

「コレットが魔族? だから何よ! コレットが魔族だろうが肌の色が違うだろうが、私には関係ない! コレットはコレットなの!」

 

「そうよ。見かけが変わったからって何よ。そんなんで私たちの友情が壊れるとでも思ってんの? 笑わせんな!」

 

 校長が低く笑うのを聞いた。

 

 ずっと手を握ってくれていたヴァルくんも声を上げた。

 

「俺も彼女がどんな姿でも構わない。もし、本当に彼女が人と同じになりたいなら反対はしない。だが、くだらない劣等感で魔族としての力を失うなら、それは間違っている」

 

 ヴァルくんが私の顔を覗き込んできた。

 

「コレット……俺は君がどんな姿でも君のことが好きだ。初めて合同授業で手合わせしたときから、俺はずっと君のことが好きでたまらなかった。たとえ君が魔族だろうと構わない。どうか、俺のそばに一生いてほしい」

 

「こらー! そこ! 何どさくさに紛れてコレット口説いてんだこの野郎! まずはコレットの意思を確認すんのが筋ってなもんだろうが!」

 

 リアちゃんがヴァルくんに説教している。ヴァルくんは動じない。

 

「俺は生涯彼女を愛しぬくと決めている。それに何の問題があると言うんだ」

 

「問題しかねーわ! コレット! 嫌なら嫌って言っていいんだからね?」

 

 リアちゃんがヴァルくんに対して息巻いてる。

 この中の誰も、私の姿や魔族であることを気にする素振りをしていない。

 なんで、こんな私に……。

 

「さぁ、喧嘩はやめて、シャルモワくん、選んでほしい」

 

「私は聖女の力絶対使わないからね!」

 

「ま、それが当然よね」

 

 リアちゃんとヴィッキーが当たり前のように私を受け入れてくれる。

 嬉しくて、辛くて、私は涙がこぼれ落ちるのを感じた。

 

「わ、私は……私のままでいたいです……!」

 

 そして我慢しきれず、声を上げて泣いてしまった。

 

「おーよしよしコレット。辛かったね。でも大丈夫、私達が付いてるからね?」

 

「そうよ、私達はずっとコレットの味方だからね?」

 

「リアちゃん……ヴィッキー……」

 

 わんわん泣く私を二人が慰めてくれる。こんな私を二人は大切にしてくれている。

 そして──

 

「ヴァルなんとか! あんたいい加減にコレットの手を離しなさいよ! 粘着質か!」

 

 リアちゃんが呻る。

 

「離さない。俺はまだ彼女から答えを聞いていないからな」

 

「しつけー! しつこい男は嫌われんだからな! ね、コレット?」


 私は涙を拭ってヴァルくんを見つめた。


「ヴァルくん、私普通じゃないけど、それでもいいの?」


「さっきも言ったが俺は“君に”惚れたんだ。これ以上何を気にすると言うんだ」


「私、魔族だよ?」


「それで?」


「人間の姿の時は太ってて不細工だよ?」


「コレット! あんたそんな馬鹿なこと考えてんの!? あんたは不細工なんかじゃないわよ! そんなこと考えるやつは脳みそがイカれてんのよ!」


 ヴィッキーが怒り狂ってる。


「人間の姿の君も素敵だ。ふくよかな女性は豊穣の証だ。とても縁起がいい。我が一族の女性は皆ふくよかだ」


「コイツ、ただのぽっちゃり女子が好きなだけじゃねーか! やめとけコレット! 新たなぽっちゃり女子が現れたら浮気確定だぞ!」


 リアちゃんがヴァルくんを指差して怒鳴ってる。


「失礼な。我が一族の男は生涯一人の女しか愛さない。浮気など愚の骨頂」


「この……魔族の姿は太ってないけどいいの……?」


「だから何度も言っているが、俺はコレットの中身を好きになったんだ。何が不安だと言うんだ?」


 私はリアちゃんとヴィッキーを振り返る。二人はジェスチャーで「やめとけ」と言ってるけど、私の心は決まっていた。


「不束者ですが、よろしくお願いいたします」


「なんでだーーー!!!」リアちゃんが崩れ落ちる。


「あんた、もしコレットを不幸にしたら、ありとあらゆる手を使ってあんたをこの世界から抹殺するから肝に銘じなさい」


 低い声音が怖いヴィッキー。


「そんなことには絶対にならん」


 私の手を強く握るヴァルくんは頼もしい。


「よし。話は決まったようだね。それでは、シャルモワくん。魔族の力を全て失って人間の姿になりたいかい? それとも、枷はかかるが人の姿にまたなりたいかい?」


 今度は迷わなかった。


「枷がついててもいいので、人の姿に戻してください。私はまだこの学園でたくさん学びたい事があるので」


 パンッ、と校長が手を叩く。


「分かった。それではこちらに来なさい」


 校長が目を閉じて呪文を唱える。難しすぎて、何を言ってるのか分からない。学園に来たときも同じだった。


「コレット・シャルモワに人の姿を与え給え」


 すると私の体が縮んできて、それと同時に見えてはいけない部分が見えてしまいそうになり、リアちゃんとヴィッキーが慌てて自分の上着を私に被せてきた。


「よし、コレで今までの君の姿に戻った。これからも沢山この学園で学びなさい。よき友人と恋人を持って君は幸せ者だね」


 校長の言葉に私は元気いっぱいに答えた。


「はい!」


 

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