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デートにハプニングはつきものです。


 

 

「王都では魔獣騒ぎが収まるどころか広がっていますわ。生徒たちに日曜日に学園から出ないように、外出許可証の発行を取り消しにした方がよろしいですわ」

 

 魔法史のアーデン・マクレインが確固たる意思を表明する。

 

「しかし、生徒たちの唯一の楽しみを教師が取り上げて良いものか!?」

 

 武術科のハンス・シュタルが反論する。

 

「しかし、何か起こってからでは手遅れだからな!」

 

 召喚術科のイザベル・モランテが腕を組む。

 

「どうされますの、校長」

 

 呪文科のタレント・グレンツマルクが言った。

 皆の視線が校長に集まる。

 

「既に許可証を出した生徒のリストを見せてくれ」

 

 術式科のグウェンドリン・ホークスが手に持っていた書類を校長に渡した。

 

 校長はそれを受け取ると、生徒の氏名を目で追っていく。しかしある生徒の名前のところで視線が止まる。

 

「日曜日の外出許可証の発行はそのままでいいでしょう。王都には専門の騎士団も警備に当たっていることですし」

 

「校長! それでは生徒に何かあったら如何なさるおつもりか!」グウェンドリンが食いついた。しかし校長は首を振った。

 

「この話はこれまでです。外出許可証は通常通り、ということでお願いします」

 

 教師たちは釈然としない面持ちで校長室を出ていった。

 校長は椅子を動かすと、窓の外を見た。

 

「さて、コレット・シャルモワ。君はどう対処するかね?」

 

 

 

「コレット! 絶対こっちの服のほうが可愛いって!」

 

 リアちゃんがリボンが付いたワンピースを私の目の前に出してくる。

 

「いいえ、こっちよ。セクシーさで相手を落とすのよ!」

 

 ヴィッキーがレースが沢山ついていて、少し透け感のあるワンピースを私に勧めてくる。

 

 私は両方を見比べて、どちらも却下した。


「なんでぇ!! 男は可愛さでイチコロコロのコロ助なんだよ!?」


「なんでよ! 男はセクシーさで手玉に取るのが定石でしょうが!」


「どっちも捨てがたいけどぉ、そんなに張り切った服装じゃなくてもいいよぉ」


 私はクローゼットから装飾が控えめなワンピースを手に取った。


「これにするねぇ」


「普通すぎる!」リアちゃんが頭を掻きむしる。


「平凡すぎるわ!」ヴィッキーが片足を床にガンガン押し付けてる。


「じゃあ、せめて髪型と化粧だけはさせてよ!」


 二人が私を鏡台へと無理やり座らせる。仕方なく私はされるがままになった。

 こうして出来上がった私は、少しだけドキドキしながら正門前へと向かった。


 遠くからでも分かる。黒髪に同世代の男子生徒よりも高い背丈。ヴァルくんが既に待ってくれていた。


「コレット嬢!」


「待たせてごめんねぇ、ヴァルくん」


 何故かヴァルくんが私を見て固まっている。


「ヴァルくん……?」


 おーい、と目の前で手を振ると、ヴァルくんがはたと我に返った。

 そしてまた顔を真っ赤にさせた。


「き、今日の君は……う、美しい……」


 私は言われてる意味がわからなくて、まじまじとヴァルくんを見返してしまった。


「いつもの君も可愛らしくていいのだが……今日の君は誰よりも美しい!」


 そんな大声で言われると、何だか恥ずかしくなってきた。綺麗に見えるのはリアちゃんとヴィッキーのお陰であって、私本来のものじゃない。


 髪はゆるく三つ編みにしたサイドをハーフアップにして、後ろの髪をサイドの三つ編みの中に緩く巻き込んでいる。

 化粧は目が大きく見えるようにとヴィッキーが念入りに描いてくれたし、チークはリアちゃんが頬にさり気なく血色感を与えるよう塗ってくれて、リップはヴィッキーとリアちゃんが果実みたいにプルンとしてくれた。


「では、行こうか」


 さり気ない所作で、私に腕を差し出すヴァルくんに、最初意味がわからなくてキョトンとしていると、貴族のマナーで紳士の腕を淑女が取ると本に書いてあったのを思い出した。これでも一応この日のために勉強してきたんだよ?


 私はヴァルくんの腕にそっと手を添えると、ヴァルが正門前横の入り口に外出許可証を差し出す。私も同じく外出許可証をバックから取り出して渡した。

 係の人が確認すると、入り口を開けてくれた。


 王都の街は広い。そして沢山の誘惑がある。


「できたてのカローネクレープはいかが? 森から取れた濃厚な蜂蜜がたっぷり入ってるよ〜!」


 私はフラフラと匂いに誘われてクレープ屋さんへと近づいていった。


「こ、コレット?」


「ヴァルくん! このクレープ食べよぉ!」


「あ、あぁ、勿論だ!」


 お金を支払うときにヴァルくんが当たり前のように支払ったので、私は驚いて財布からヴァルくんに自分の分のお金を渡したが、突き返された。


「今日のデートは俺から誘ったんだ、だから俺が払うのが当然だ!」


「でもぉ……」


「俺は君が美味しそうに食べる姿が見たい。気にするな」


 初めて微笑みかけられて、私は何故か心臓が痛くなった。どこか悪いのだろうか?


 カローネクレープは濃厚でとても美味しかった。

 ヴァルくんは私の特性に気付いたのか、食べ物屋さんへと次々に立ち寄っては奢ってくれた。


 ルーナスティックを食べていると、街のあちこちから悲鳴が上がった。

 不思議に思っていると、誰かが「魔獣よ! 魔獣が出たわ!」と叫びながら逃げていく。


 ヴァルくんと私に緊張が走った。


 屋台に突進し、物を破壊しては雄叫びをあげる魔獣は、イノシシ型の魔獣だった。

 

 

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