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ラブと本気の拳


 

 

 リアちゃんとヴィッキーには恋人がいる。

「アル様、目の下にクマができてる。また政務増やされたの?」

 

「あのクソ親父、オレができると分かると、どんどんレベルを上げてきやがるんだよ」

 

「可哀想なアル様。ほら、目を閉じて」

 

 リアちゃんが両手でアルヴィン様の目元を覆う。魔力のうねりを感じたから、何かの魔法をかけてあげたのだと気付いた。

 

「はい、これで目の下のクマさん取れたよ。あとは終わるまで触ってて上げるね」

 

 リアちゃんが優しい顔でアルヴィン様の腕に触れている。また魔力を感じた。多分、聖女としての魔法を使ってるのだろう。呪文も術式もなく発動してるから、無意識にやれてるんだろうな。普通の人にはできないこと。


「また実家に手紙を書いてるのかい?」


 ニールスくんがヴィッキーの長い髪をかき上げてあげながら尋ねてる。ヴィッキーはその手を当然の様に受け入れてる。


「馬鹿兄貴があれ以上、バカをしないように、事業計画書を作ってるのよ。あのバカが下手に関われないようにね」


「そうやって頑張るヴィッキーは偉いね。それに美しいよ」


 手紙を書きながら無言を貫くヴィッキーだけど、その頬は赤く染まっている。素直じゃないなぁヴィッキーってば。


 私は四人の微笑ましいやり取りを見るだけで胸が温かくなった。




「武術の授業マジでしんどいわー」


 リアちゃんが修練着に着替えながら文句を言っている。ヴィッキーもあまり乗り気じゃないみたい。

 私は武術の授業は好き。

 魔力を使ってする授業は繊細さを要求されるから、苦手。


 着替え終わった私たちは修練場へと向かう。今日はまたリオン寮との合同授業だから生徒が多い。


 整列してリオン寮の生徒と向き合うと、あら、と思った。

 前回、私から一本を取った男子生徒がまた相手だった。

 男子生徒は私と目が合うと顔を真っ赤にして視線を反らした。

 私何かしたかな?

 不思議に思いつつ一礼する。


「今日は近接戦闘の訓練だ! 武器を持たず己の肉体だけで相手を負かしてみろ!」


 先生の言葉に生徒たちが溜息をつく。魔法使いに武術が必須なことを、私を含め他の生徒のほとんどが知らなかったはずだ。


 私は男子生徒に向かい合い、拳を構える。相手の男子生徒も同じく。


 先生の合図とともに皆が一斉に動き出す。

 男子生徒が拳を叩き込んでくる。それを避けずに受け止め、逆に拳を叩き込む。

 すんでのところで回避される。だけど冷静に相手の隙を伺う。右足で隙のできた脇腹を狙う。避けきれずに膝が脇腹に食い込む。それでも男子生徒は痛みを感じていないかのように、脇腹に当たっている足を掴んで私の体を放り投げた。

 凄い。私は自分で言うのも何だけれど、結構重たいはずなのに、男子生徒は軽々と私を放ったのだ。滞空している私と距離を詰める男子生徒は腹に拳を突き出した。

 けど私は体を捻って右足で男子生徒の頭に蹴りを入れる。今度は男子生徒が吹き飛ぶ。

 この前もだけど、この男子生徒は本当に強い。()がある状態でも、十分強い私と渡り合える人。

 こんな人と私は出会ったことがない。

 何だか楽しくなってきた。

 男子生徒はすぐに態勢を整えると構えを変えた。まだ手数を持ってるのかとワクワクする。

 私は地面に着地すると助走無しで男子生徒に低い姿勢のままタックルする。肩に衝撃が走る。勢いのまま押し込むけど、男子生徒は倒れずに途中で私を押し返した。

 凄い凄い! パワーもある。私は背中に肘打ちをくらう。痛みで肺が収縮する。いったん離れて態勢を整え直す。


「そこまで! お前らは殺し合いでもする気が!」


 先生の怒号が飛ぶ。気づけば他の生徒たちが呆然と私たちを見ている。あら、私やっちゃった?


 男子生徒が元の位置に戻る。私も真似して彼の前に戻った。


 結局、私と男子生徒は本気の近接戦闘ではなく、組み手をして残りの時間を潰した。


「あの……!」


 私が去ろうとしたとき、男子生徒が話しかけてきた。


「なんですかぁ?」


 男子生徒はなぜか口ごもって言いづらそうにしている。


「君の……名前を教えてもらえないだろうか!」


 なんだ、そんなことか。


「私はコレット。コレット・シャルモワ」


「コレットか……美しい響きだ。その、コレットと呼んでも?」


 伺うように聞いてくる男子生徒に私は笑顔を見せる。


「気兼ねなんかしなくていいよ。みんな私のことコレットって呼んでるし」


「そ、そうか。ではコレット、今日は有意義な時間をありがとう。君の強さに俺は感動した」


「私の方こそありがとう。とっても楽しかったよ。えっと……」


「ヴァルター・クライゼル。俺のことはヴァルと呼んでくれ」


「ヴァルくん、また手合わせするときがあったら、よろしくね!」


「あぁ。その時を楽しみに待っている」


 では、と言って去っていくヴァルくんを見て、律儀な人だなーと私は思った。



 

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