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その手紙はあの世への片道切符です。

ヴァレンテイナの手紙で「学園の庭園」になっていたとこほを「我が家の庭園」に修正しました。やらかしてスミマセン!_|\○_


 


「あぁ……久しぶりに嫌な夢を見た……」


 ベッドの上で私は差し込む朝陽から逃れるように体を丸めた。


 そう、あれは前世の記憶だった。


 キャバクラで生計を立てるキャバ嬢の私。

 大したプライドもなく、ゲームばっかりしてた。

 むしろゲームをするためにキャバ嬢してたって感じか。

 そう考えると中々クレイジーだな私。


 体を丸めたまま、ふふっと笑いが溢れる。


 この世界はいい。貧しさでひもじい思いをすることもない。修道院に行けば施しを貰えるし。

 運が良ければ里親に引き取られる。

 私は運が良かったのだろう。


 けど、このままでは運も尽きてザマァ死へ直行便だ。


「リア、あなた宛に手紙が届いてるわよ。机に置いておくわね」


 ヴィッキーの言葉にビクリと反応する。

 ガバッと起き上がって机を覗き込む。

 白い封筒がそこにあった。

 またヤツからの手紙が来たかと、震える手で手紙を手に取り差出人の名前を見て――私は発狂した。


「は……はあああああああああああ!?」


 何これ!? ヴァレンテイナ・ノクティスって書いてあんだけどぉ! どゆこと!?


 もしかしてアホ王子について我慢出来なくなって呪いの手紙を寄越してきたとか!?魔法が使えんだから、そんなのホイホイできんでしょ! 知らんけど!


 私は震える手で手紙の封を開けた。やだ、家紋の封蝋してあるなにこれ怖い。


 慎重に慎重を重ねて私は手紙の中身を取り出し内容を確認する。




『拝啓 涼風の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。


 さて、先日ご令嬢のことを、ブレイズ殿下より伺いました折、私もぜひ一度お話をしたいと思い、筆を執らせていただきました。


 来る四月二十日、我が家の庭園にてささやかなお茶会を催すこととなりました。

 お忙しいところ誠に恐縮ではございますが、もしお差し支えなければ、ご令嬢にもお越しいただけますと嬉しゅうございます。


 ご日程が合えば、午後三時より庭園のティールームにて、お紅茶とともにご歓談のひとときをご一緒できればと存じます。


 ご多忙の折とは存じますが、ご都合のほどお聞かせいただければ幸いです。


 末筆ながら、ご令嬢のご健勝とご家族皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。


 敬具


 ノクティス家 令嬢 ヴァレンテイナ』




「はああああああっ!? なんっでだよチキショー! わけわからんすぎるわ! 何でラスボスとサシ飲みしなきゃならんのよ! ぜってー何か裏があるに決まっとるわ! 紅茶に毒でも入れてやがんぞ絶対になぁ!」


 一人で大騒ぎする私をヴィッキーとコレットがガン見してくる。

 私は二人を見やった。


「あのさ、聞いてくれる?」


 ヴィッキーとコレットの声がハモる。


「なに?」


「ヴァレンテイナ様からお茶会のお誘いの手紙が来た」


「へー、良かったじゃないの。人脈作りに最適じゃない」


 商人の娘ヴィッキーはいつもチャンスを逃さない頭の切れる女の子だ。


「良かったねぇ。美味しいお茶菓子がたくさん出てくるのかしらぁ」


 人より食欲旺盛な農家の娘コレットが我が事の様に喜んでる。


 

「二人とも本気で言ってる!? ねぇ、私彼女といると死ぬんだよ? 本気で死ぬんだよ!?」

 

 ヴィッキーは読んでいた本を閉じると鬱陶しそうな顔をした。

 

「あのさ、いつもヴァレンテイナ様に会う度に死ぬ死ぬ連呼するけど、何かあったわけ?」

 

「何かは今から起こるんだよ! 事件は会議室で起きてるんじゃない! 私に起こるんだよ!」

 

 私の必死の訴えに、しかしながらヴィッキーは冷めた反応だった。

 

「じゃあ起こってから言って」

 

「ヴィッキィィィィ!!」

 

 本を開いてシャットダウンモードに入ったヴィッキーは話しかけても反応してくれないのだ。

 

「ヴァレンテイナ様って凄い綺麗なお人よねぇ。私なんかとは大違いだよねぇ」

 

 ベッドに寝転がりながら菓子を頬張るコレットは呑気に頷いている。

 あんたそんなことばっかしてるとまた太るわよ!?

 

「コレットには分からんのよ……貴族のややこしいあれやこれやがさ。参加する貴族も別の意味で命懸けなんだぜ?」

 

「私は農家の娘だから、その辺の事はよく分からないなぁ」

 

「コレットはコレットのままでいてくれ! 穢れ無きコレットのままでぇ!」

 

 私はゴンゴン机に頭を叩きつけた。

 お茶会なんぞ家にいた頃ですら一、二回しか行ったことねーよ! 何すりゃいいんだよ!


 セイセイセイ、冷静になれ私。思い出せお茶会でのマナーを……マナー……

 

 って思い出せねぇぇぇ!!

 

 茶を飲んで他愛もない会話すりゃいいんだっけ? ヤバイほど記憶力に自信がなくなってます、今の私!

 

「……何かやらかしたらザマァ死まっしぐら猫まっしぐらじゃないか……」

 

 手の中の手紙があの世への片道切符にしか見えなくなった私は、床に転がって悶絶するしかなかった。



 

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