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精霊と契約者の密な関係。


 

 

「おはよぉ、リアちゃん!」

 

「うっす、うーっす! はよーコレット! ヴィッキー」

 

「珍しい、いつも朝は死人みたいになってんのに、今日はえらく元気じゃない」

 

「失礼ですわよヴィッキーさん。私だって淑女らしい朝を迎える時がございましてよ」


 ほほほっ、と笑えばヴィッキーに頭を叩かれた。なんで!? 私何も悪いことしてなくね!?


「なんかムカついたから、つい手が出ちゃったわ」


「ムキー! つい、で人の頭を叩くな!」


 プリプリ起こるとヴィッキーは制服の最終チェックを終えて先に部屋を出ていく。

 何だとぉ!? 私の方が先に起きたのに!


「待てコラー! ヴィッキー! あ、コレットも早くー!」


「はぁい」


 バタバタとせわしなく食堂に向かうと既に生徒でごった返していた。


「私席の確保しとくから、二人は食事持ってきて!」


 私が言うと二人は了解、と言って配膳口の列に向かっていった。


 さてさて、どっか空いてる席はー……おっ! 発見!

 私は三人分の席を確保して二人を待った。

 その時、いつもの定位置である胸ポケットに収まってたスクイーズがいつもより元気のない声で「ニュー……」っと鳴いた。

 不思議に思って私はスクイーズを胸ポケットから取り出した。

 何かいつもよりぐったりしてる気がする。

 ムニュムニュとお腹をつついても、いつもの反応が帰ってこない。心なしか発光する光も弱い気がする。


「スクイーズ? どうしたの? どっか辛いの?」


 反応がない。目も半分くらいしか開いてない。


「お待たせー。持ってきたわよ」


 ヴィッキーとコレットが食事の乗ったトレイをテーブルに置く。


「ねぇ! スクイーズが変なの!」


「なにが?」


「なんかぐったりしてるし反応も薄い」


 私が手の中のスクイーズを見せるとヴィッキーとコレットが覗き込む。


「確かにいつもの元気がないわね」


「お目々もあんまり開いてないねぇ」


「ど、どうしよう! 病気かな?」


 ヴィッキーが頬に手を当てる。


「イザベル先生に見てもらったほうがいいと思うわ。召喚術に関してはプロだもの」


「そ、そうだよね! それじゃあ今すぐ職員室に行ってくる!」


 立ち上がって食堂を出ていく私の背にコレットが「ご飯食べてからでも良いと思うよぉ〜」と声をかけられたがその間にスクイーズの調子が悪くなったら目も当てられない。


 私は寮から出て中央塔に向かった。この学園は中央塔をメインに寮や様々な塔が放射線状に配置されている。


 職員室に入った私はイザベル先生を探した。

 特徴的な薄緑の髪をすぐに発見する。


「イザベル先生ー! スクイーズが! スクイーズが!」


 私の大声にイザベル先生が何事かと駆け寄ってきた。


「なんだ! 朝から元気だなフェアウッド!」


「違うんです! スクイーズの様子が変なんです!」


「スクイーズとは君が召喚した精霊だな。どれ、見せてみろ」


 私は握りしめてたスクイーズをイザベル先生に見せた。先生は目を閉じると手のひらをスクイーズの体に当てた。


「ふむ。これは……」


「なにか、なにか変な病気とかですか? 死んじゃうんですか!?」


 イザベル先生は目を開けると腰に手を当てた。


「精霊は死なん。この世界で消滅したら元いた世界に戻るだけだ。それでフェアウッド。君は最近悩みごとでもあるのか?」


 思わずドキリとする。


「あ、あの、その……は、はい」


「原因はそれだな。君の精神が安定してないから魔力に悪影響を与えてしまってる。そのせいで魔力の供給に異常が生じているのだろう」


「精神が安定してないから……」


 手の中でぐったりしてるスクイーズを見て、私は己の未熟さに泣きたくなった。


「ごめんねスクイーズ……私がもっとしっかりしてれば、こんな辛い目に合わなかったはずなのに」


 イザベル先生はふむ、と顔を傾げる。


「君は精神を安定させる訓練をしたほうがよいな。本来なら二年生になってから学ぶのだが、精霊を召喚してしまったからには訓練をするしかないだろう」


「どんな訓練なんですか!?」


 イザベル先生に詰め寄る。


「まぁ焦るな。基本的な訓練方法は初めは静かな場所で己と向き合うことだ。要らぬ雑念を取り去り、ひたすら己と向き合うことだ。それができるようになったら、次は他者が多くいる場所でもそれができるようにする。それら全てができれば魔力のゆらぎも安定するだろう」


「わ、わかりました! やります私!」


 私は深く頭を下げると職員室を後にした。


 食堂に戻るとヴィッキーとコレットが待っていてくれた。


「どうだったの? 原因は分かったの?」


 私は席につくと勢い込んで二人に説明した。


「ということは、あんた何か悩みがあるって事じゃないの?」


 ヴィッキーが鋭く切り込んできた。


「あ……いや、その……大した悩みじゃないしー?」


 ヴィッキーは無言で私を見つめている。


「あーうー……ごめん! 今は言えない!」


 二人に頭を下げる。頭がゴンッとテーブルにぶつかった。


 ヴィッキーは溜息をついた。


「いいわよ、別に。今はスクイーズの為に頑張りな」


「そうだよぉ。私たちは気にしないでねぇ」


 私は泣きそうになりながら、ありがとうとひたすら礼を言った。


 

 

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