ラストの勝負服選び。
「これとかどうかなぁ?」
コレットが指差したドレスはプリンセスラインのドレスだった。ビスチェに腕まである手袋。スカート部分はタッキングだ。
「今回はデコルテを見せてもいいかなぁ、って思ったのぉ。他の生徒はもっと派手なの着てきそうだからぁ、これくらいでいいと思うよぉ」
ドレス選びに関してはコレットに全幅の信頼をおいてる私は他のドレスには目もくれず、即それに決めた。
「コレットとヴィッキーはどんなドレス着ていくの?」
コレットはいそいそと箱を取り出すと、中のドレスを見せてくれた。
「私はこんなのぉ」
Aラインでオフショルダーにパフスリーブ、スカート部分はティアードになっている。
「うおー! めっちゃ可愛いじゃんか! うん、コレットにピッタリだよ!」
「えへへぇ」
そこにヴィッキーが部屋に入ってきた。
「あら、ドレス選んでたの? 私はとっくに決まってるわ」
「おう、なら見せてよ見せてよー!」
「もう、仕方ないわね」
ヴィッキーがベッドの下から箱を取り出してベッドに置いて蓋を開ける。
「おぉ、これは!」
ブイネックにマーメードラインのドレス。強気なヴィッキーにピッタリのドレスだった。
「歓迎会で商談があるかもしれないからね。なるべく目立つようにしたわけ」
「コレットもヴィッキーも天才かよ……私なんて未だに自分が似合うドレスわかんねーのに」
ドレスの入った箱の蓋をヴィッキーは閉じると、呆れたように言う。
「あんた、この三人の中で一番の美人なのに、なんでファッションセンスが壊滅的なのかしら」
酷い言われようである。だが否定はできぬ!
「何着ても似合いそうだけどぉ、外見のイメージで選ぶと可愛らしくて清楚な服が似合うんだよねぇ」
コレットもドレスを箱に仕舞って蓋を閉めている。
「しかし歓迎会、マジで憂鬱だわ」
「ここ最近のリアへの嫌がらせは酷いからね。心配だわ」
「何かあったら私がぶっ飛ばしてあげるよぉ?」
フンッ! とコレットが腕まくりをする。
「ありがてぇけど、もう私の運命は決まってんだよね」
「そういえば最近あんた死ぬ死ぬ言わないわよね。まさか歓迎会で何かあるわけ?」
「わっかんね! 多分あると思うけど、私に何が起こっても二人は知らんぷりしといてね。私の友だちだなんて口が裂けても言ったら駄目だかんね!」
ヴィッキーが眉をしかめる。
「嫌よ。友だちが酷い目にあってるのに無視なんてできないわ」
「私もぉ! 全力でリアちゃん守るからねぇ!」
本当は知ってた。私が女子生徒たちに何かされるたびに二人が影で私の無実をティナ様に訴えてたこと。
馬鹿だなぁ、何したってもう世界の強制力は本気出してるのに。だけど心から愛してるよヴィッキー、コレット!
「あんたさ、アルヴィン王子のこと、本当はどう思ってるの?」ヴィッキーが聞いてくる。
「あー……メンドクセーけど悪い人ではないんだろうね。死ぬほどメンドクセーだけで」
そのクソッメンドクセーアルヴィン王子が明日ティナ様や他の生徒の前で婚約破棄を宣言する。そして私を新たな婚約者だと高らかに宣言するはずだ。
たとえそれが私の死への最後通告だとしても。
「人生、中々上手くいかねーなー」
今世はもっと長生きしたかったな。
でもあの人のいない世界で長生きしても、虚しさばかりが降り積もるだけか。
死んだら元の世界に戻れるかな?
輪廻転生があるのなら、私は生まれ変わってまた、あの人に会いたい。
私は強く、そう願った。