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その精霊の名前を決めなくては。


 

 

「んあ……んうー……」

 

 頭が痛い。また黒木さんの夢だ。これ以上見たくないのに、彼の夢を見てしまう。

 異世界に来てしまった私は戻ることすらできないのに、まだ未練がましく彼の幻影を追ってしまう。

 

「ニュッ!」

 

「ぎゃっ!」

 

 目の前につるんっとした羽のある生物が現れ思わず叫んでしまった。

 

「だ、誰だお前!?」

 

「ニュッ! ニュッー!」

 

 混乱の最中に起き上がるとクラっとしたけど起き上がれた。てかここは私の寮のベッドじゃん。

 そこから連鎖的に記憶が蘇ってくる。

 

「あぁ、倒れたのか私は」

 

 繊細なところもあったのかと自分で自分に感心する。

 

 いや、感心してる場合じゃねぇ!

 

「まさかの聖女……だと?」

 

 なんてこった、想定外の場所からパンチを食らった気分だ。

 私が聖女になったらせっかくのティナ様との関係性が変わってしまうのでは。

 アホ王子は置いといて、ティナ様と仲良しになって、あわよくば友だちになれば、ザマァ死から開放されるのに!

 なんで今更聖女になるんだ私よ!!

 

 世界の強制力こえー……。

 

 何がなんでも元のストーリーに戻すという暑苦しい決意すら感じる。

 そもそもこんなクソゲー作った奴が悪いんだ。

 今流行りのざまぁ系に乗っかった結果がこのカオスな世界観を生み出したんだよ!

 

「あぁ、もう起きてるのぉリアちゃん」

 

「あら、もっと寝るかと思ってたわ」

 

 部屋に入ってきたコレットとヴィッキーが何やら手荷物を抱えて入ってきた。

 

「どしたのソレ」

 

 私が聞くと、ヴィッキーが答えた。

 

「図太い神経の持ち主が倒れたって聞いたから、なにか体と精神に良いものでも食べさせてあげようかと思って」

 

「ほらぁ、お菓子も沢山買ってきたよぉ!」

 

 バラバラーっと私のベッドにお菓子を袋から振り落とす豪快なコレットに私の目は今死んでる。

 

「そろそろ夕食の時間だし、今日は部屋で食べれるように、保存容器に夕食詰めてくれたわよ食堂のおば様」

 

 食堂のおばちゃん、性格きついけど良い人だったんだね……。


「夕食の後はお菓子バーティーだよ!」

 

 むしろこっちが本番感あるよねコレットさん。

 

 私はヴィッキーがお皿に装ってくれたシチューを受け取ってありがたく頂くことにした。

 

「ニュッ!」

 

「あ、そういえばあんたもいたんだったわ」

 

「凄いよねぇ、リアちゃんは。聖女様だよぉ? 100年ぶりのぉ!」

 

 コレットが精霊をつんつんしてる。精霊は「ニュッ!」と言って何故か胸を張っている。なんでやねん。

 

「その精霊の名前は何なの?」

 

 シチューを自分の皿によそおいながらヴィッキーが聞いてきた。


「名前っているの?」


「そりゃあいるでしょ。契約まで交わしたのに名無しは流石に精霊に失礼すぎるわ」


「まじか〜。私ネーミングセンスないんだよねー。なんて名前にすっかなぁ……」


 光の精霊、頭にモヤシ、つるんっとしてる、パタパタ飛び回る、ちょいちょい発光する、あと触感がスクイーズ。


「スクイーズだ! この子スクイーズって名前にするわ!」


「ニュッ!」


「ほら! なんか喜んでね? ナイスネーミングって喜んでね?」


 ヴィッキーは肩をすくめた。


「あんたと精霊が納得してんなら何でもいいわよ」


「スクイーズかぁ、可愛い名前だねぇ」


 よしよし、とスクイーズの頭をコレットが撫でる。


「ところで聖女は普段何してりゃあいいわけ?」


 単純な疑問にぶつかった。


「あー……別に普段通りのあんたでいいんじゃない?」


「うんうん。リアちゃんはリアちゃんのままがいいよぉ!」


 二人に言われたらそれでいいのだろう。何か間違ってたら教師が言ってくれるだろうし。


 夕食を食べ終えるとお菓子バーティー開催だ。コレットの目が輝いている。


 スクイーズに試しにチョコを食べさせたらめちゃくちゃ貪り食ってた。体が両手サイズだから顔面チョコまみれになってて笑えたけど。


 はぁ……聖女か。やるしかねーんだろうなぁ。やだなーやだなー……。

 

 

 

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