04
春の音楽祭から一週間、リリアナは王宮の秘密の小部屋に引きこもっていた。東翼の古い塔にある、埃っぽくて誰も寄りつかない場所。幼い頃に偶然見つけた、彼女専用の隠れ家だよ。いや、完璧ちゃんらしい趣味だね、隠れる場所までおしゃれに。
窓から差し込む陽光の中、リリアナはテーブルに広げた紙に何かを書き殴ってた。ドアがそっと開き、アレクサンダーが忍び込んできた。
「見つかりましたよ」彼は小さな本を手にニヤリ。「エヴァリン王女の個人日記です」
「ありがとう、アレクサンダー」リリアナは天使の微笑み。「大変だったでしょうね?」
「いいえ。あなたの読み通り、宝石箱の裏に隠してましたよ」アレクサンダーが本を置く。「でも…本当にこれでいいんですか?」
リリアナ、真剣な顔で一言。「自分を守るだけじゃ足りないって気づいたの。姉ちゃんたちは私を王位から引きずり下ろす気満々。このままじゃ罠の無限ループだよ」
「それは分かりますけど…」
「心配しないで」リリアナ、優しく返す。「姉ちゃんたちを潰す気はないよ。ただ、痛い目見て学んでほしいだけ。行動には代償がつくってね」
アレクサンダー、黙って頷くしかなかった。「あなたを信じます」
二人でエヴァリンの日記をペラペラ。リリアナは姉の弱点を漁るハンター状態。
「ここ見て」リリアナ、あるページを指さす。「エヴァリン姉様、南方の商人ダリウスとコソコソ会ってるね」
アレクサンダー、目を丸く。「噂は聞いてたけど…王族にあるまじきスキャンダルですよ」
「で、この部分」別のページをめくる。「父上の印璽をパクって、ダリウスの商売をバックアップしてるっぽいね」
「これは…反逆罪で首が飛びかねませんね」アレクサンダー、眉をしかめる。
リリアナ、ページをめくりつつ冷静に。「でも、告げ口するだけじゃつまらないよ。姉ちゃんを罠に嵌めるのがゴールじゃない。自分で過ちに気づいて悔い改めるのが大事」
「どうする気です?」
リリアナ、ニコリ。「まず、姉ちゃんの信頼をゲットする。そして…」テーブル上の紙を指す。そこには緻密な策略がびっしり。
「これは…」アレクサンダー、読んで目を見開く。「天才的ですね」
「一週間後の建国記念日がチャンスよ」リリアナ、目を輝かせ。「準備、頑張ってね」
数日後、リリアナはエヴァリンの部屋に突撃。エヴァリン、妹の訪問に警戒心丸出し。
「何の用?」冷たく一言。
「姉様」リリアナ、ふわっと微笑む。「晩餐会のことで謝りたくて」
エヴァリン、ポカン。「謝る?あなたが?」
「ええ。姉様を困らせるつもりじゃなかったの。東方の文化に夢中になって…」リリアナ、目を伏せてしおらしく。「私が悪者にしてしまって、ごめんなさい」
エヴァリン、しばらく妹を値踏み。謝罪が本物っぽく聞こえて、少し気を緩めた。
「まあ、いいわ。次から気をつけなさい」
「ありがとう、姉様!」リリアナ、満面の笑み。「それと、建国記念日で相談があって」
「何かしら?」
「父上が私に使節団への贈り物を任せたの。でも、私じゃ不安で…姉様のセンスを借りたいなって」
エヴァリン、妹の褒め言葉にちょっとビックリ。でもすぐ得意げに。「確かにあなたにはセンスが足りないもの。私が助けてあげるわ」
「本当?嬉しい!」リリアナ、手を叩いて大喜び。「明日、宝物庫で一緒に選ぼうね」
エヴァリン、頷いて満足顔。リリアナの素直さに、過去の確執なんて忘れた気分。
リリアナが去ると、エヴァリンは鏡の前でニンマリ。「やっと私の価値が分かったみたいね」
一方、リリアナは隠れ家に戻り、アレクサンダーに報告。
「計画通りよ。エヴァリン姉様、完全にノーガード」
「あなたの演技、完璧でしたね」アレクサンダー、感心しきり。
「演技じゃないよ」リリアナ、窓の外を見ながら。「姉様を尊敬してるのは本当。だから、正しい道に戻ってほしいの」
彼女の瞳はキラキラ輝いてた。計画は順調に進行中。建国記念日で全てがバレるよ。楽しみだね(ニヤリ)。