03
晩餐会での一件から数日、サフィア王女は自室の窓辺でハープを爪弾きながら不機嫌に浸っていた。リリアナが晩餐会で喝采を浴びた姿が頭から離れず、苛立ちが弦を震わせてる。いや、ハープが気の毒だよ、本当に。
「どうして彼女はいつも完璧なの?」サフィアは弦を乱暴に弾きながら毒づいた。「このままじゃ王位まで持ってかれちゃうじゃない」
そこへドアがノックされ、侍従ベラが顔を出した。
「お呼びでしょうか、王女様」
「ええ、ベラ」サフィアはハープを放り出し、作り笑顔を浮かべた。「春の音楽祭の準備はどう?」
「はい、順調です。王女様の演奏が目玉になりますよ」
サフィアは窓の外を眺めながら思案顔。春の音楽祭は王国の一大イベント。王族から庶民までが集まるお祭りで、今年はリリアナがピアノで初参加。ふーん、完璧ちゃんの新たな舞台ね、と内心で舌打ち。
すると、サフィアの頭に悪巧みがポンと浮かんだ。
「ベラ、リリアナの曲目って何だっけ?」
「東方の『月光の調べ』です」
「そう」とサフィア、ニヤリ。「ベラ、ちょっとお願いがあるの」
サフィアの計画は陰険そのもの。リリアナの楽譜をこっそり偽物にすり替え、不協和音だらけにして本番で恥をかかせるって寸法。いやぁ、音楽への愛が感じられる素敵なアイデアだね(棒読み)。
「でも、リリアナ様ならすぐ気づきませんか?」ベラがビビりながら言うと、
「大丈夫よ。微妙に変えるから、練習じゃ分からないけど本番でズレるの」サフィアはドヤ顔。「音楽はあの子のお得意分野じゃないし」
数日後、リリアナは音楽室で「月光の調べ」を練習中。ピアノの前で優雅に指を滑らせ、美しい旋律を響かせる。でも、何度か弾くうちに眉をひそめた。
「何か変ね…」楽譜を睨みながら呟く。
そこへアレクサンダーが登場。「素晴らしい演奏ですよ、リリアナ殿下」
「ありがとう、アレクサンダー」と笑顔返すも、すぐ真顔に。「でも、この楽譜、前に見たのと違う気がするの」
アレクサンダーも楽譜をチェック。音楽わかるイケメンだから、すぐに違和感を察知。「確かに変です。この部分、原曲とズレてますね」
「誰かが改ざんしたのね」とリリアナ、冷静に一言。「でも、なんで?」
二人で頭を捻ると、リリアナがピンときた。音楽祭の責任者はサフィアだ。
「サフィア姉様が…」鍵盤を撫でながら呟く。「証拠はないけどね」
「どうします?」アレクサンダーが聞くと、
リリアナはニッコリ。「本物の楽譜を探して、少し仕返しを企むわ」
音楽祭当日、大広間は観客でギッシリ。サフィアが先にハープで登場し、観衆をうっとりさせる。拍手喝采の中、席に戻りながら内心ほくそ笑む。もうすぐリリアナが大失敗するんだから。
「次はリリアナ王女の演奏です」と司会者。
サフィア、ワクワクが止まらないね。
リリアナはピアノに優雅に腰掛け、観客に一礼。サフィアをチラ見したその目に、妙な自信が光ってて、サフィアは一瞬ドキッとした。
演奏が始まると、「月光の調べ」が美しく響き渡る。不協和音なんてゼロ、むしろ原曲を超える感動的な仕上がり。
サフィア、目ん玉飛び出そう。どういうこと?楽譜は絶対に変えたはずなのに!
演奏終了、会場は大盛り上がり。国王夫妻までスタンディングオベーションだよ。リリアナは一礼し、トドメの一言。
「今日は少しアレンジを加えました。サフィア姉様の助言で」
サフィア、完全にフリーズ。
「姉様が『もっと感情を込めて』って言うから、私なりに解釈してみたの。単調になるのを心配してくれたんだよね、きっと」リリアナの笑顔が眩しいね。
観衆が拍手と共にサフィアに注目。彼女は引きつった笑顔で頷くしかなかった。いやぁ、見事にやられたね、お姉ちゃん。
祭りの後、アレクサンダーが近づく。「さすがです。本物の楽譜、見つけたんですね」
「ええ、図書室の奥からね」とリリアナ。「でも、これでもまだ序盤よ」
彼女の瞳はキラリと光ってる。二度も罠を跳ね除け、今度は反撃モード全開。姉ちゃんたち、次はお手柔らかにね(ニヤリ)。